「私はアンドロイドにしか恋をしないの」や、「私はアメリカに住んでいるクイア（=セクシュアル･マイノリティ）の一人で男性と女性の両方と関係を持ってきた人なの」との発言。さらには女性や黒人、LGBTコミュニティへの連帯など。その確固たる姿勢を強烈な個性で武装して世界に発信し続けるジャネール･モネイ。間違いなく「今一番観たいアーティスト」である彼女の初来日公演へ足を運んできました。 近年は女優としても活躍する彼女ですが、アーティスト活動の支柱は魅力的な作品を発表し続けている音楽家としてであり、現代の最先端とも言える彼女の楽曲はブラック･ミュージックのあらゆるエッセンスを取り込んで昇華させた素晴らしいものばかり。今夜はどの曲をセレクトしてくれるのか、私の期待は尋常ではありませんでした。 生前のプリンスに助言を受けて制作した『Dirty Computer』からの選曲が最も多く、ファンク色の強いステージ･パフォーマンスとなりました。クールなギターのカッティングや絶妙に鳴らされるホーン等々、体が疼くとでも申しましょうか、思わず全身がリズムを刻まずにはいられない極上のグルーヴを絶え間なく浴びせられて、まぁ気持ちヨカッタね。 この時ばかりは2階指定席を選んだことを少し後悔しました。終演後、スタンディング･エリアでライブを楽しんだ知人の恍惚とした表情を見て、更にその思いは強くなった次第です。 奇抜な衣装を何度も着替え、絶え間なく披露されるダンスからも視線を外せない。唯一無二のパフォーマンスは音楽以外にも及び、メッセージ色の強いMCは凄まじい熱量の籠った魂の叫びの如し。彼女の魅力全てを余すことなく堪能できた2時間は、数あるライブ体験の中でも大変貴重なものとなりました。