第26回
“志”を持った永井龍雲、華のあるニューカマー・川島ケイジに注目!
2016/04/28
“志”を持ったアーティストが少なくなってしまったようだが、そんななかにあって永井龍雲は高い“志”を持ち続けて活動を続けている。
龍雲は1978年3月にシングル「想い」、5月にアルバム「龍雲ファースト」でデビューしたキャリア39年目を迎えるベテラン・アーティストだ。
プロになったからにはヒット曲を出してナンバーワンになることを夢見るのは当然のことだが、ただ売れればいいというわけではない。やはりアーティストであるからには自分だけの独創性を持ったオリジナリティーがないと本物とは言えない。その意味では、龍雲はナンバーワン志向というよりもオンリーワン志向かもしれない。そのことは、龍雲のコンサートを見るとよくわかる。
そんな〈永井龍雲LIVE 2016~好きこそ歌の力なれ~〉が4月17日(日)に渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールで行われた。
ピアノとベースを従えて自身のギターの弾き語りというアコースティック編成だったが、この日のライブは特に龍雲のボーカルが冴えていた。ボーカルが冴えているということは、龍雲の“心”が充実しているということでもある。来年、デビュー40周年、還暦を迎えるので期するものがあるのかもしれない。〈心〉の充実が〈歌〉に反映されるのがシンガー・ソングライターの〈宿命〉とはいえ、龍雲が現在アーティストとして充実していることは確かなようだ。
「笹舟」「屋台」とソロで始まり、「つまさき坂」「道標ない旅」などお馴染の曲を入れながら淡々と進んでいき、五木ひろしに提供したヒット曲「暖簾」から「砂漠の道」「蒼穹」「激流」「ルリカケス」と続く終盤は特に良かった。声高にメッセージを叫ぶタイプの龍雲ではないが、熱い想いがボーカルを通して確実に伝わってきた。こんなに熱い歌は久しぶりに聴いたと感動した。そして、そのままラスト曲「スライド・ショウ」になだれ込んだ。
アンコールの拍手は熱く激しかった。そのことは本編の内容が良かったということを意味している。アンコールは「待ちぼうけ」「激しい雨に打たれて」、そして「祈りの詩」だったが、いつもは静かに歌う龍雲が、この日ばかりは違っていた。あたかもロック・シンガーのような激しい歌唱、この歌唱にも龍雲の〈意志〉が見てとれた。何かが龍雲の中ではじけようとしている。心の中にたまった“マグマ”が火を吹こうとしている。どんな歌が生まれるか? 楽しみな永井龍雲である。
「これはとんだ掘り出し物かもしれない」という有望な新人アーティストを見つけたときほど音楽評論家冥利につきることはない。そんな評論家冥利につきそうなのが川島ケイジだ。
知り合いから紹介されてCDを聴いたとき〈骨太な声〉をしているな、と思った。とにかく声が独特で鋼鉄のような強さを感じたのだ。
メジャー・デビュー前なのでまだデモ・テープだったが、13曲全曲聴いてみての感想は「いける」だった。「Woman」(オリジナル:薬師丸ひろ子)などのカバーを自分のものにしてしまう歌唱力もさることながら、オリジナルの「今人」(イマジン)を聴くとメッセージがあって、シンガー・ソングライターとしても非凡な才能であることがすぐにわかった。
「これだったら……」そんな想いが強くなった。と同時に、会ってみたい、と思ったので、私がパーソナリティーを担当しているFM NACK5の〈Age Free Music!〉にゲスト出演してもらうことにした。会って話をしてみて、自分なりのビジョンを持ったアーティストだなと思い好感を持った。かつてはバンドやユニットをやっていてロックだったが、やがて伝えるためには歌が必要だということを悟り、今の自分のスタイルにたどり着いたという彼の話を聞いて、クレバーなアーティストだと思った。
CDを聴き、本人に会ったら、後は本物かどうか確かめたいと思い、ライブに行くことにした。〈川島ケイジ Special One Man Live vol.2〉が4月25日(月)に目黒のブルース・アレー・ジャパンで行われた。
前の仕事が押して30分程遅れて会場に着いてびっくりしたことは超満員だったということ。そして、さらに驚いたことはお客さんの〈熱気〉が高かったということだ。これは付き合いで来ているのではなく〈本当のファンが来ているのだ、ということが実感としてわかった。
とにかく、川島ケイジというアーティストには人を惹きつける魅力があるのだ。華があると言ってもいい。歌の魅力もさることながら、しゃべりを通してのキャラクター、またパフォーマンスを通してのパーソナリティーなど、そういうもの全体が見事に備わっている。つまりは〈スター性〉があるということだ。
1部が終わりブレイク・タイム。2部のオープニングはいきなり私が注目していた「今人」だ。正直に言って、「え、ここでもうこの曲やっちゃうの?」と思ったが、他に続く曲も負けてはいないレベル……ということでなかなか内容の濃いライブだった。
夏過ぎにはメジャー・デビューするということだが、将来有望なニューカマーである。この目で見、この耳で聴き、そしてこの心で感じたのだから間違いはないと思う。川島ケイジに注目してほしいものだ。
(文/富澤一誠)
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