第35回
コンサートは生き物だ! と〈細坪基佳 Live of Nocturne 2016〉を見て感じた!
2016/09/07
なぜそう思ったのかと言うと、細坪基佳(ex-ふきのとう〈1974-1992〉)の〈Live of Nocturne 2016〉(渋谷区文化総合センター大和田さくらホール、9月3日)というコンサートを見たからだ。
正直に言って、私は細坪のコンサートはふきのとう時代を含めて数え切れないほど見ているが、今回のコンサートはこれまでに見たものとはまったく違っていてとても新鮮に感じられた。
まず何がいいかというと、細坪の歌の表情が豊かだったこと。歌唱力には定評のある細坪だが、今回は何と形容したらいいのか?歌が立っているというか、歌が自然と伝わってきた。
今回のコンサートの謳い文句に〈「夜想曲」「夜想曲Ⅱ」の世界観をお届けするソロ・ツアーとは一線を画すスペシャル・コンサート〉とあるが、確かにそうだと思う。
まず編成が特別だった。
シンプルなアコースティック編成になれば、なるほど問われるものは、個人のスキルとコラボレーション、もっと言えば、リスペクトと愛と言ったらいいだろうか?
たとえば居酒屋で友だちと飲んでいるとしよう。居酒屋は騒音がうるさいので、きちんと話をしようと思えばつい大声になってしまう。伝えたいという想いが強ければ強いほど叫びに近くなってしまうのだ。確かに大声で叫べば伝わるが、細かいニュアンスまでは伝えることはできない。「ビール2本にチューハイ3杯!」あたりが関の山だろうか。
やはり自分の想いを伝えようと思えば、静かな所でゆっくりと丁寧に話すしかない。それと同じことがステージにおいても言えるのだ。
もちろん、そのためにはアーティストとメンバー間の信頼関係がなければならない。つまり、一朝一夕にして成るものではないのだ。いろいろな場数を踏んで酸いも甘いも経験して、やっとの思いでたどり着くことができる〈オンリーワンの世界〉なのである。
「白い冬」でふきのとうとしてデビューしたのが1974年9月21日のこと、あれからもう42年が経とうとしている。42年間をかけたからこそたどり着いた細坪基佳だけの〈オンリーワンの世界〉こそが〈Live of Nocturne〉なのである。
(文/富澤一誠)
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