第37回
カバーブームに新しい風穴をあけた<スナックJUJU>に期待したい!
2016/10/12
このライブの告知は<JUJU HALL TOUR-WHAT YOU WANT->の東京公演のアンコールで突然行なわれた。
<一夜限りの世界最大のスナック開店!JUJUの愛した歌謡の世界を余すことなくお届けする目眩く魅惑の一夜。10月10日(祝・月)(=JUJUの日)「―ジュジュ苑スペシャル―スナックJUJU」in国立代々木競技場第1体育館>
という文字がステージにかかった紗幕に映し出されたのだ。
このときから、どんなライブになるのだろうか?とイメージをふくらませた人は多いと思うが、実は私もそうだった。
JUJUが昭和の歌謡曲が好きだと聞いてまずはどんな選曲でくるのかと考えた。
そんなふうに思っているときに、10月26日にリリースされるという歌謡曲カバー・アルバム「スナックJUJU~夜のリクエスト~」のリリース情報が入ってきた。
収録曲を見てびっくりしてしまった。「六本木心中」「ロンリー・チャップリン」「夏をあきらめて」「まちぶせ」「桃色吐息」「駅」「二人でお酒を」「DESIRE-情熱-」「恋におちて」「夢の途中」「シルエット・ロマンス」「つぐない」「ラヴ・イズ・オーヴァー」「恋人よ」「GOODBYE DAY」などがセレクトされていたからだ。私の基準では私の考える昭和歌謡は「二人でお酒を」「つぐない」「ラヴ・イズ・オーヴァー」ぐらいしかなかった。他の曲は私の感覚ではJポップである。
この違和感は何だろうか?JUJUに会う機会があったので直接尋ねてみることにした。そうしたら意外な答えが返ってきた。
「スナックは全国に10万軒ぐらいあるんですが、そんなママさんたちに、JUJUに店で歌って欲しい曲のリクエストを取らせていただいたんです。リクエストから選んだのが今回の選曲なんです」
つまり、スナックのママさんたちがJUJUに歌って欲しいとイメージしている曲が今回のカバー・アルバムには収録されているということである。
私たち60代以上のスナックのイメージは、ママさんが60代以上なのに対して、現在のスナックのママさんたちはアラフォー世代か?だとしたら、私たちの考えている昭和歌謡はちょっと古いかもしれない。今のアラフォー世代にとっては、昭和に流行ったJポップ・ナンバーが<昭和歌謡>ということなのだろう。
カバー・アルバム「スナックJUJU~夜のRequest~」を聴いて思ったことは、これは従来のカバー・アルバムとは概念が違うということだ。
これまでのカバー・アルバムの作り方は、アレンジを変えること、つまり、たとえばジャズ・テイストにしてしまうことで雰囲気をまず変えて、オリジナル曲とは違う魅力を出すという手法を取っていたが、JUJUの場合はアレンジで独自性を出すというよりも、歌そのものの解釈を自分独自のものとすることで意外性を出し、しいてはそれが新しい魅力を作り出しているようだ。
そのことは今回のライブでよくわかることがあった。ユーミンの「あの日にかえりたい」を歌うときに、ワンコーラス目はあえてユーミンに似せたコピーで歌い、2コーラス目は自分のスタイルで歌ったが、まったく別の曲に聴こえてきたあたりにJUJUのボーカリストとしてのすごさを感じてしまう。
今回のライブは「DESIRE-情熱-」「六本木心中」から「ロンリー・チャップリン」「喝采」まで15曲を歌ったが、完璧に<JUJUの世界>が確立されていた。
いい曲、イコール、いい歌ではない。いい曲はそれにふさわしい歌い手に歌われてこそ初めて“いい歌”となってたくさんの人たちに伝わるのだ、というのが私の考え方だが、今回JUJUが取り上げた曲は“いい歌”ばかりだ。ということは、原曲には他の歌手が入りこむ隙がないということだ。
だとしたらどうしたらいいのか?原曲を超えることができないのであれば、曲の解釈を変えて、私だったらこう歌うのに?私だったらこんなふうに歌いたい、と思うことを実践しなければならない。もっとも原曲に対するリスペクトがあっての話だが……。それがJUJUにはある、ということが今回のライブを聴いていてよくわかった。
ユーミンがビデオ・レターで寄せたJUJUへの期待感、そしてスペシャル・ゲストとして登場して「ロンリー・チャップリン」をJUJUとデュエットした鈴木雅之のコラボレーションの素晴らしさを見ると、JUJUは愛されるべきボーカリストなのだということがわかる。
<スナックJUJU>はJUJUが開拓したスペシャル・エンタテインメントと言っていい。オリジナル・ライブとは違うスペシャル・ライブ<スナックJUJU>を生み出したJUJU。<スナックJUJU>は来年から全国展開するということなのでさらに楽しみである。
カバー・ブームに新しい風穴をあけた<スナックJUJU>に期待したい。
(文/富澤一誠)
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