第55回
〈スリーハンサムズ〉は〈ふきのとう〉〈NSP〉のバーチャル・アーティストである!
2017/07/13
7月8日(土)、東京六本木のEX THEATER ROPPONGIで〈スリーハンサムズ コンサート2017~俺たちの放課後~〉と題されたコンサートを見た。
スリーハンサムズは2011年に元ふきのとうの細坪基佳と元NSPの中村貴之、平賀和人の3人で結成されたユニッットだ。
細坪基佳は山木康世と組んだフォーク・デュオ“ふきのとう”で「白い冬」「南風の頃」「初夏」「風来坊」「春雷」などのヒットを飛ばし“叙情派フォーク”として一世を風びした。
片やNSPは天野滋、中村貴之、平賀和人からなる3人組フォーク・グループで「さようなら」「夕暮れ時はさびしそう」「雨は似合わない」「赤い糸の伝説」「八十八夜」などのヒットを連発して、これまた“叙情派フォーク”として活躍した。
1973年秋にかぐや姫が「神田川」のミリオンセラーを飛ばしたことがきっかけとなり、翌74年はしっとりと叙情的に、なおかつ哀愁を帯びたボーカルを聴かせる“叙情派フォーク”がブームとなった。グレープの「精霊流し」、山本コウタローとウィークエンドの「岬めぐり」、NSPの「夕暮れ時はさびしそう」、ふきのとうの「白い冬」、マイペースの「東京」などが相ついでヒットした。
そんな中で、ふきのとうとNSPはコンサートを中心に活動して根強い人気があった。1975年に荒井由実がブレイクしたことがきっかけとなり、フォークはビジネス化してニューミュージックへと変わっていくが、そんなミュージック・シーンの中で、ふきのとう、NSPは“清涼剤”ともいうべき独特の世界を確立していた。その意味では、フォークの良心と言っていい。
しかしながら、フォークからニューミュージックへ、さらにニューミュージックからポップス&ロックへ、とミュージック・シーンの変貌と共に“叙情派フォーク”は衰退して、ふきのとうは解散、NSPは活動休止となった。
以来、ふきのとうはオフコースと共に“再結成”が強く望まれているが、その確率が最も低いとされている。一方、NSPは再結成というか復活は不可能と言っていい。なぜならばメンバーの天野滋は亡くなってしまっているからだ。ということは、はっきり言って、ふきのとう、NSPはリアルな世界ではもう見ることはできないということだ。
「見ることのできないはずの〈ふきのとう〉〈NSP〉が現実に見ることができるのはなぜ?」
しかし、そうではないのだ。私たちは現実には不可能であるはずの、ふきのとう、NSPのライブを見ることができるのだ。「そんなバカな?」と思う人も多いと思うが、スリーハンサムズのライブを見てもらうとそのことがよくわかってもらえるはずだ。
スリーハンサムズは天野が亡くなって7年目に天野をトリビュートということもあり、細坪基佳、中村貴之、平賀和人の3人で結成したユニットだ。ふきのとう、NSP時代に共にライバルであり友人であった3人は、スリーハンサムズを結成して、ふきのとうのナンバー、NSPのナンバーを3人で演奏しようと決めた。こうすれば、天野がいなくても天野の代わりは平賀、細坪ができるし、逆に山本康世の代わりも平賀、中村ができるということだ。
こうして本来ならばリアルに見ることができないはずのふきのとう、NSPが、スリーハンサムズというユニットではできる、ということになったのだ。
NSPの代表曲「夕暮れ時はさびしそう」はメインボーカルが天野なので、ふつうは天野がメインでなければ成り立たないが、細坪がコーラスに付くことで、メインを平賀が取ることができて、これがまた新鮮でいいのだ。また逆にふきのとうの名曲「初夏」のメインボーカルを中村が取ることによって、この曲はふきのとうの新曲のように聴こえてくるのだ。
現実にはありえないはずのふきのとうとNSPのジョイント・コンサートが目の前で繰り広げられているこの不思議さ。これぞ良質な〈大人の音楽〉の楽しみ方ではないだろうか?
「〈GARO青春の旅路〉でGAROが再結成・復活!」
そういえば、「学生街の喫茶店」で知られるガロももうライブで見ることは不可能だ。トミー、マークは既に亡くなっているからだ。しかし、バーチャルではライブを見ることができるのだ。ボーカルこと大野真澄が〈GARO青春の旅路〉というユニットを結成したからだ。〈GARO青春の旅路〉とは、ライブでガロの曲だけを歌うこと。そのきっかけとは?ボーカルは言う。
「マークが亡くなったときに、鈴木雄大君(シンガー・ソングライター)と太田美知彦君(作曲家、ミュージシャン)とユニットを組んで、ガロの曲をライブで歌ったんです。そうしたら、やっぱりガロの曲ってやってて気持ちいいのね」で、やろうと思ったんです」
ガロならではの3声のハーモニーに限りなく近い〈GARO青春の旅路〉、聴く価値は十分にある。
〈スリーハンサムズ〉〈GARO青春の旅路〉のような〈バーチャル・ユニット〉こそ〈Age Free Music〉のあらまほしきアーティストである、と私は確信している。
(文/富澤一誠)
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