広大な場内で探し当てた私たちの座席はＳ席（18,000円）であるにもかかわらず、なんとＧＣ席（80,000円）との境界近く。素晴らしき幸運に思わず打ち震えました。 地鳴りのような歓声の中で始まった１曲目、イントロで"Start Me Up"だと判って驚きました。なぜなら2月26日と同様に"Get Off Of My Cloud"でのオープニングを予想していたから。"You Got Me Rocking"、"Angie"と嬉しいサプライズが続き、ファン投票で選ばれた"Silver Train"ではゲストである元メンバー、ミック・テイラーのスライド・ギターをくらってもうメロメロ。もちろんオープニングからエンディングまで、終始座らせてなんてもらえませんよ。 まあ音について細かい事を言えば難もありました。ドームの音響は相変わらずズレが出るし、演奏もよろけた音が少なからず。"Honky Tonk Women"なんて、キースが先走って演奏を始めちゃったしね。だけどこれらをひっくるめてすべてを魅力に昇華させてしまうのがストーンズ。比類無く圧倒的な存在感をゴリゴリと最前に押し出してくるパフォーマンス。チャーリーがクールに刻んでいくリズムに絡む、うねるギターとねっとりしたミックのヴォーカル。弾かれたそんな音すべてがグサグサと心に突き刺さる。最上級の設備や小難しい演奏が多くの人々を熱狂させるわけじゃないんだよなあ、やっぱり。 初めてストーンズの曲を聴いた幼少の頃はその良さというものをまったく理解できず、色々な音楽を年月をかけて聴いた末にようやくそれを好むようになった完全なる「後追い」の私ですが、こうして実際に彼らのライブで心酔できていることを思うと、少しづつ好きなことを増やしながら齢を重ねられていて案外幸せ者かもしれません。願わくば、古希を過ぎてなお躍動する彼らのようにありたいですね。