Interview石崎ひゅーい、“人生には音楽が足りてない”
怒涛の2017年後半のライブ展開への思いを聞く

昨年、12月にリリースした3枚目のアルバム『アタラズモトオカラズ』は問題作だった。

いや、“石崎ひゅーい”らしさの本質が浮き彫りになった1枚というべきか。名曲「ピノとアメリ」のようなファンタジー性あるドラマティックかつメロディアスな“らしい”サウンドが感じられながらも、1曲目「溺れかけた魚」では70’s的フォーキーな楽曲からスタート。カントリー風な軽快なビートが心地よい「牧場で僕は迷子になって」、「ダメ人間」のポップセンスの高さはいわゆるJ-POPフィールドの“それ”とは異質を放っていた。タイトル・チューン「アタラズモトオカラズ」でのエディットされたアンビエントなトラックに即興で想いを込めたポエトリーディング作品の衝撃。さらに、10分を越える大作となった「謝肉祭」で告白する日常のリアルな息遣い……。圧巻の68分だ。

本作のリリースを経て、“ひゅーい”は2017年年末に自身最大規模の東名阪ツアー『鬼退治』を行う。さらに、8月からスタートした全国を巡る弾き語りワンマンツアー『きびだんご』では、鬼を退治するために仲間を全国15箇所で探すかのような修行ライブで最終決戦へと備える。“ひゅーい”曰く「犬は従順、猿は手を使う器用さ、そしてキジは俯瞰的に全体を見る冷静さ。そうか、桃太郎の家来はそういう基準の選択なのかと気づく」と呟く。社会が揺れる2017年の秋冬。何が正しく何が悪いのか? 判断基準が曖昧で心がむず痒い昨今。そんな混乱の源=鬼とは? “ひゅーい”は自問自答する。

弾き語りワンマンツアー『きびだんご』がスタートしなさなか、ライブに賭ける気持ちの高鳴りを確認したくてラジオ番組『LiveFans』の収録中に祐天寺のスタジオへ向かった。扉を開けると、シンガー・ソングライター仲間である盟友小山田壮平とアコースティックギターを抱えながらセッションをしていた。“ひゅーい”の周りはいつだって音楽でいっぱいだ。

取材&テキスト:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

シンガー・ソングライターの横のつながり

小山田(壮平)さんとは、もう長いのですか?

そうですね。7、8年は知ってるって感じです。実は1回対バンしてるんですよ。僕がastrcoastというバンドをやっていた頃に。名古屋かどっかで対バンをしていて……、andymoriが1stアルバムを出した頃かな。仲良くなったのは、それから2年くらいして。『風とロック』のイベントで一緒になる時があって、あとシンガー・ソングライターの長澤知之君づてで仲良くなって。遊ぶときも、一緒に曲を作ったりするんですよ。

面白いですよね。それをリリースするわけでもなく?


音楽で本気で遊ぶ人たちなんですよ。僕、もともとあんまりそういうタイプじゃなかったんです。だから、けっこう新鮮で。みんなと集まると音楽にずっと浸っていられるというか。刺激をうけました。そういう風に遊ぶんだって。

アウトプットは考えずにどんどん作っちゃう感じなんですね。

そんな感じです。みんなレベル高いので。シンガーとしてもライターとしても曲を生み出す力もすごいので刺激になりますね。

個であるはずのシンガー・ソングライターの横のつながりって面白いですね。

そうですね。少しずつ広がっていったり。

鬼退治に向けて仲間を集めるっていうイメージ

8月4日から渋谷TSUTAYA O-WESTからスタートした弾き語りワンマン『きびだんご』ツアーもスタートしました。これまで回って無さそうな会場を巡るなど、年末の東名阪ツアーへ向けての特殊なライブだと思うんですけど。

これは“鬼退治”っていうコンセプトありきの構想ではじまりました。東名阪だけやるっていう考えもあったと思うんですけど。もうちょっと足を運んで、鬼退治に向けて仲間を集めるっていうイメージです。仲間をもっと増やしたいんです。

いつだったか、全国各地めちゃめちゃライブで回っていた経験がありますよね?

ありました。あれはデビュー直後ですね。

Ustreamなど、生配信もされていて。

そうなんですよ。毎日配信してました。

なんとなく、あの時のチャレンジを思い出しました。

そうですね。あれをもうちょっとライトにした感じですね。でも、修行感はだいぶあります。あの時は、バンドで30分くらいのセットが多かったんですけど、今回は弾き語りでひとりで1時間半くらいっていうステージなんです。そういった意味では感覚が全く違っていて。だから、修行なんですよ。本当に。そんなことやったことなかったし。

どんなセットリストになっているんですか?

会場が不思議なところが多いんです。洋館みたいなところとか、ドイツのグッゲンハイムさんが100年前に建てた建物だったり。会場の雰囲気が、すでに出来上がっているようなところに行くんですよ。僕の世界をつくるというより、その会場に合わせるというか。そういう風にセットリストを考えてやって行こうと思っています。上手くできてるかどうかは全然わからないですけど。

あ、京都は台風だったんでしたっけ?

9月17日が京都だったんですけど台風直撃の予定で。でも、台風が京都だけそれてくれまして。いや、ほんと天候に恵まれてますね。今年の初めに、高円寺にある気象神社に行ったんですよ。てるてる坊主の神様がいて、お願いしたら威力がすごいんですよ。僕は本当に雨男だったので、大げさじゃなくてライブの60%くらいが雨で。ツアーになると80%くらい雨で。神様はいるなと思いました(苦笑)。

ははは、バンドマンは重宝しますね。弾き語りワンマン『きびだんご』ツアーの選曲コンセプトはあったんですか?

今回は、これまでの活動を総括する総合的なライブなんです。何かアルバムがあってライブするみたいなコンセプトでは無いんですね。なので、いままで石崎ひゅーいが出してきたものの総集編をどういう風に聴かせたら感動してもらえるか、そんなイメージですね。

1時間半でワンマンだと弾き語りのあり方も変わってきたんじゃないですか?

そうですね。だいぶ変わってきてると思います。曲のアレンジが逆に自由になって。変な話、音源と少し違う雰囲気を感じる人もいるかもしれないってくらい自分としては楽曲の捉え方は大きくしています。

日々、どのくらいセットリストは変わっていくんですか?

基本的な流れみたいなのはあって、それは気に入っていて。最後のほうに「花瓶の花」があって、そこに向かっていくセットリストを組んでます。あとは2,3曲くらい変えて作り込んでいく感じです。

あらためて弾き語りをしてみて、自分の楽曲で気づいたことなどありましたか?

ありますね。バンドセットで、盛り上がるような勢いのある曲ってあるじゃないですか? それを弾き語りで、そのまんまのイメージでやっても届かないし、再現できないような気がすると前までは思ってたんです。でも、お客さんとのコミュニケーションや、僕のライブでの歌い方、伝え方でお客さんに楽しんでもらうことは努力次第でできるかもなって思ったんです。

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