さらに「原宿キッス」「チャールストンにはまだ早い」などを披露したのち、会場内の換気も兼ねた長めのMCコーナーへ。ここまでの激しい歌とダンスに思わず「ゼーゼー」と声に出して息を切らす田原だったが、おもむろに「起立! 礼!」と号令をかけて観客を立たせる。続いて「疲れたので解散!」と言って楽屋に戻ろうとするところをダンサーに止められる田原だったが、おそらくこれは座った状態で観ていた観客をリフレッシュさせるための彼なりの優しさだったのだろう。また、「こういう(座った)状態でも、いいことがあるんですよ。僕のステージの最大の見せ場は膝から下(笑)。視界が開けてるからよく見えるでしょ?」という田原の言葉には、制約があるなかでも見方を変えれば新しい楽しさがあること、それを自身のステージで証明しようとする意気込みを感じた。

「ここからが楽しいです。懐かしいこの歌から聴いてください」という言葉で始まったライブ終盤は「悲しみ2(TOO)ヤング」や「抱きしめてTONIGHT」「ひとりぼっちにしないから」など往年のヒットソングを惜しみなく披露していく。もちろん、自他共に認める“膝から下”のステップも健在。その体力もさることながら、田原が20代の頃にリリースされたこれらの楽曲を50代となった彼が歌うと、年を重ねたぶんだけ深みを増して聴こえるのが印象的だ。そんな彼が今改めて自分を支えてくれているファンに向けた想いを歌う「ラストソングは歌わない」、そして最後は「顔に書いた恋愛小説」を大人の魅力たっぷりに歌い上げ、本編を締めくくった。

アンコールを求める手拍子に応え、赤いシャツに身を包んだ田原がミニセグウェイに乗って登場。「ラブ・シュプール」や「Kissしちゃおう」を熱唱したのち、Wアンコールでは再び最新曲「愛は愛で愛だ」を披露。新旧織り交ぜたバラエティ豊かな楽曲で最後まで“トシちゃん”ワールドを貫き、2時間以上に及ぶ公演は幕を閉じた。









なお、この日の公演は11月14日(土)20:00よりオンライン配信されることが決定(見逃し配信は翌15日(日)00:00〜21日(土)23:59まで)。見どころは何と言ってもエンターテインメントショーとして確立されたステージそのものであることはもちろんだが、随所で披露される華麗なステップや激しいダンスのなかでも決して乱れることのない美しい指先、さらに「Bonita」でジャケットを脱いだときに見せる筋肉美など、会場の距離ではなかなか観ることのできない細かい部分にぜひ注目してほしい。また、今回のオンライン配信は当日来場した方や残念ながら足を運ぶことができなかったファンの方たちのみならず、これまで田原のライブを観たことがない人にこそおすすめしたいところ。アイドルとしてデビューしてから40年超――今でも輝きを失わない彼のスター性に改めて気付くと同時に、その裏に隠されたエンターテインメントを追求し続けるストイックな姿勢に必ずや感銘を受けるはずだ。

取材・文=片貝久美子、撮影=西村彩子 (SELF:PSY’S)

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