遊んでいるけどどこまでも真剣、Yogee New Wavesのインディーズ・ラストライブを見た

2017/12/07
Yogee New Waves 2017.12.1 恵比寿リキッドルーム 撮影=古溪一道

Yogee New Waves「DREAMIN' NIGHT TOUR 2017」
2017.12.1 LIQUIDROOM


遅ればせながらYogee New Wavesのワンマンライブを初体験することができた。

新しい世代の都市型ポップミュージックのバンドたちの中でも突出したセンスの良さと、特に日本のポップスのヒストリーへの深く広い目配りに大きな特徴を持つバンドで、今年(2017年)出たアルバム『WAVES』も素晴らしい出来映えだった。

俗な言い方をすれば“いま最もキてるバンド”の一つで、いま見ておくとあとで自慢できるバンドであることに間違いはないが、そんなことよりもただライブが見てみたい。きっと同じ気持ちなのだろう、フロアは満員だ。開演前から期待と興奮をはらんだリキッドルームの空気は、外の寒さを忘れるほどに上昇している。

1曲目は「Hello Ethiopia」。緩やかな波の音にかぶせて、マレットでシンバルを叩く音とエレクトリックギターの柔らかい爪弾きに導かれ、ゆったりとしたリズムがループしてゆくスローナンバーだ。90年代を代表する名バンド、フィッシュマンズを彷彿とさせる深遠なサウンド。

シンプルなフレーズのさざ波がやがて大河の如く大きなうねりを生む、ドラマチックな展開でまずはバンドの世界観を提示すると、続けてはレゲエのビートにトリッキーなテンポチェンジを組み込んだダンスチューン「Megumi no Amen」へ。<楽しいことないかな、なあ兄弟?>と歌う角舘健悟(Vo&G)の歌に応え、フロアのあちこちから歓声が飛び手が上がる。

ここにいるオーディエンスは、いわゆるフェスに集うロックキッズたちとは異なる客層に見える。揃いの手振りもないし決まったステップも踏まない、思い思いのスタイルで音の波に身を任せて揺れる光景が目の前に広がる。ついでに言えば、ファッショナブルで可愛い女子が多い。とてもいいムードだ。

Yogee New Waves 2017.12.1 恵比寿リキッドルーム 撮影=古溪一道

Yogee New Waves 2017.12.1 恵比寿リキッドルーム 撮影=古溪一道

「Ride on Wave」と「Fantasic Show」は『WAVES』の中でもとりわけポップな曲で、フロアの盛り上がりがすごい。何も言わずとも<音の鳴る方へ、音の鳴る方へ>と、みんながリリックを口ずさんでいる。派手なセットもドレスアップもないシンプルなステージだが、竹村郁哉(G)がご機嫌なワウギターを奏で、上野恒星(B)が強力なスラップベースでリズムに活気をもたらす、それだけで十分だ。曲中にスローテンポのブレイクダウンをはさみ、オーディエンスを飽きさせずに踊らせる工夫もうまい。

お次は未発表新曲で、どこかモータウンのヒット曲っぽいファンキーなギターリフとラテン調のベースライン、明るく爽やかなメロディが最高に気持ちいい1曲。来年の夏、サマーチューンとしてリリースしたらヒットは確実だろう。Yogee New Wavesの音楽は、マニアックなこだわりとポップな吸引力のバランスが絶妙だ。

「東京、ただいま。『DREAMIN’NIGHT TOUR』から帰ってきました。一皮剥けた俺らを見てほしい」

角舘の短いMCから間髪入れず、ここから5曲は『WAVES』の曲をたっぷりと聴かせてくれる。最初のワンコーラスをギターと歌だけでしっとり聴かせ、ミドルテンポの心地よいグルーヴへと引きずり込む「C.A.M.P」はまさに彼らの真骨頂。音楽という名の列車にオーディエンスを乗せ、細かいテンポチェンジやコール&レスポンスを織り込み、車窓から様々に変わる景色を楽しませてくれるような楽しい曲。

続く「Understand」はグッとテンポを上げて明るくソウルフルに、「World is Mine」ではご機嫌にスウィングするシャッフルビートに乗って思い切りポップに。極めつけはヒットチューンの「Like Sixteen Candles」で、ロックステディっぽく弾むビートがテンポアップしてサビに至る展開も、メランコリックなメロディの良さも、甘く柔らかい中にロックな芯のある角舘の歌も、すべてパーフェクトなポップチューン。

さらに粕谷哲司(Dr)の叩くニューオリンズファンク風ビートを中心に、ラテンとフォーキーな要素とポップスが合体したみたいな「SAYONARAMATA」の、才気走った演奏も素晴らしい。フロアからはよく手が上がり、声が飛び、クラップが響く。なんて自由な空間だろう。

Yogee New Waves 2017.12.1 恵比寿リキッドルーム 撮影=古溪一道

Yogee New Waves 2017.12.1 恵比寿リキッドルーム 撮影=古溪一道

「言葉がなくてもきっと伝わってるでしょう。曲の中に伝えたいことは隠してあるから、家に帰って聴いて」

ぶっきらぼうな中にはにかみと愛がある角舘の言葉に対して贈られる暖かい拍手。残りはあと3曲だ。心地よく流れるミドルテンポに美しいメロディを持つ「Climax Night」では、「一緒に歌ってくれるかい?」という角舘の呼びかけに応えて全員参加の幸せなコーラスが聴けた。

続いてこの日2曲目の未発表新曲では、深いリヴァーヴに沈むギターとダブっぽいベースが中毒性のあるリフを延々と繰り返す、魔術的なグルーヴの心地よさを堪能できた。

そしてラストを飾ったのは、アルバム『WAVES』からの「HOW DO YOU FEEL?」だ。深くゆるやかな16ビートの波が寄せては返し、時にサイケに時にエクスペリメンタルに展開し、次第に高まるディストーションと強烈なバックライトの光に飲み込まれるようにしてクライマックスを迎える、幸福感溢れるシーン。Yogee New Wavesが生み出す音楽は、シティポップや踊れるロックの枠にとらわれない、極めて自由でフレキシブルなものだ。

「いろいろあったけど、このメンバーで1年。Yogee New Waves、メジャーに行くことが決まりました」

 アンコールに入る前、一世一代の晴れがましい発表を、はにかみながら、つっかえながら伝えるのが角舘らしい。さらに「何も変わらないから。何かあったらぶっとばしてくれよな」と付け加えるのも彼らしい。会場いっぱいの祝福ムードの中、この日3曲目となる未発表新曲、どことなくシュガーベイブを彷彿させるハッピーなロックンソウルで一気に盛り上げ、テンションをキープしたまま溌剌としたダンスチューン「Good Bye」へ。職人の如く堅実なプレイに徹してきたギター竹村が、ここぞとばかりステージ前に飛び出してリードギターを弾きまくる。「ありがとう。今日という日を忘れません」と角舘が叫ぶ。

ヒストリカルなライブを締めくくるのはこの曲、バンドのアンセムと言っていい豪快なロックチューン「Dreamin’Boy」だ。<夢の続きを僕らは/未だに追い求め/I’m a dreaming boy>印象的なリリックを思い切り歌い叫ぶ角館の姿と、それに呼応するオーディエンスの振りかざす手には、見る者の心を大きく揺さぶる衝動があった。

新世代シティポップにくくられるいくつかのバンドの中でもYogee New Wavesが持つ突出した武器、それはこの曲に代表されるシンプルなメッセージの力だ。青臭くて理想的で、ぶっきらぼうでシャイで、遊んでいるけどどこまでも真剣。その姿勢がある限りYogee New Wavesはメジャーだろうがどこだろうが快進撃を続けるだろう。

「ありがとう。忘れんなよ!」

最後に手を振って言った角舘の言葉は、誰に対して、何に対してだったのか。いずれにせよ、Yogee New Wavesのインディーズ・ラストライブは終わった。来年は新しいステージが待っている。忘れないシーンをしっかり持って、挑戦し続けるバンドがここにいる。2018年、Yogee New Wavesがどこまで高く飛べるか、今から楽しみでワクワクしている。


取材・文=宮本英夫 写真=古溪一道

Yogee New Waves 2017.12.1 恵比寿リキッドルーム 撮影=古溪一道

Yogee New Waves 2017.12.1 恵比寿リキッドルーム 撮影=古溪一道

 
セットリスト
Yogee New Waves「DREAMIN' NIGHT TOUR 2017」
2017.12.1 LIQUIDROOM

01. Hello Ethiopia
02. Megumi no Amen
03. Ride on Wave
04. Fantasic Show
05. 新曲
06. C.A.M.P.
07. Understand
08. World is Mine
09. Like Sixteen Candles
10. SAYONARAMATA
11. Climax Night
12. 新曲
13. How do you Feel?
<ENCORE>
14. 新曲
15. Good Bye
16. Dreamin’Boy

 

ライブ情報
COUNTDOWN JAPAN 17/18
12月30日(土)幕張メッセ 国際展示場1~11ホール、イベントホール
 

ORIGINAL LOVE presents 「Love Jam vol.3」
2018年1月21日(日)Zepp DiverCity
open 16:00 / start 17:00

 

 

リリース情報
アルバム『WAVES』
2017年5月17日発売
初回盤】CD+LIVE DVD(2DISC) 紙ジャケ/三方背スリーブケース ROMAN-012 \3,300
【通常盤】1CD デジパック ROMAN-013 \2,300
<収録曲>
01. Ride on Wave
02. Fantasic Show (album ver.)
03. World is Mine
04. Dive Into the Honeytime
05. Understand
06. Intro (horo)
07. C.A.M.P.
08. Like Sixteen Candles
09. HOW DO YOU FEEL?
10. SAYONARAMATA
11. Boys & Girls I (Lovely Telephone Remix)

<配信情報>

  

 

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