武道館に帰ってきた青の光 藍井エイル1年9ヶ月ぶりのライブレポート

2018/08/30

藍井エイル Special Live 2018 ~RE BLUE~ at 日本武道館 2018.8.16(Thu)

藍井エイルが、日本武道館に帰ってきた。
 
2011年のデビューからアニメ音楽界を席巻するように駆け抜けた5年間。全力で駆け抜けた藍井エイルが最後休養直前に藍の炎を燃やしたその場所が復活の舞台だ。
 
会場は開演前から立錐の余地もない満席。興奮と言うよりは期待で満ち溢れている客席の眼前には、青く鼓動を続ける光がスクリーンに映し出され続けている。

明滅が強まり、一気に照明がオフになる、ステージの中央にせりあがってきたのはあの時と同じ、藍井エイルだった。

白いドレスを纏った彼女は一曲目「約束」を披露する。久々のその歌声を噛みしめる余裕もなく矢継ぎ早に青いドレスに衣装を変え「ただいまー!」と絶叫、そのまま「IGNITE」「AURORA」と歌い上げる。

正直、久しぶりの生歌唱で、声は戻っているのだろうか?と心配したが、そんな不安を吹き飛ばすくらいの圧倒的な声量とハイトーンボイス。そこに確実に藍井エイルはいた。

「みんなもう最高の声を聞かせてくれてるけど、今日は最後まで一つになっていきましょう!」

聞きたかった言葉を受けた客席は爆発せんばかりのレスポンスを返す。1 st アルバム収録の「アヴァロン・ブルー」からデビュー曲「MEMORIA」という彼女の始まりの楽曲群から「アカツキ」では情熱的に座り込んでの熱唱を見せる。

「楽しんでますか?」とMCで語りかけると「この感覚が久しぶりすぎてドキドキですよ」と緊張を隠さずに語る。「お休みを頂いている間、念願だった一人旅をしたりして、ゆっくりした時間を過ごせました」とファンが気になっていたこの1年9ヶ月の事を話してくれた。

やはり、ファンは心配していたのだ。それでもファンは藍井エイルを信じて、応援して、待ち続けていた。

「音楽で成長できたらいいな、と休みにチャレンジしていたことをお見せします!」

そういうと彼女が手にとったのはエレキギター、青一色の会場で映えるでしょ?と嬉しげに構える黒いボディをかき鳴らして「KASUMI」を披露する。こういっては失礼だが、かなり堂に入った演奏だった事をちゃんと記しておく。ライブの企画だから、とかではない、本気で練習した時間が経験となっているのがわかる。

そこからフラッグを持ったダンサーを引き連れた「アクセンティア」では武道館の屋根が飛ぶんじゃないかと思うほどの大合唱。エイル自身もダンスを披露するなど今までになかったパフォーマンスを展開する。

「今まで挑戦してこなかった、色々なエイルを感じてもらいたいんです」という彼女の言葉からは、新たなステージへの挑戦と歌い続けることへの意気込みが感じられた。

「自分の弱さを認めて、噛み締めて、その後に何が出来るだろうって感じると思うんです」そういう彼女は少しだけ遠くを見つめるように言葉を紡いでいた。何があったかはわからないし、それを聞くのは野暮というものだ。歌い、走り続け、休んで、ちゃんと藍井エイルは帰ってきた。それが全てで、それこそがリアルなんだと思う。

アニメソング、というジャンルで言うと、少なくとも声優も含めて業界を引退する、というアーティストが増えてきたのは事実だ。ジャンルが世間的に認知され、認められていく中で、光が強くなれば影が出来るのも自明の理なのだろうが、それでも業界に身を置く身としては少し物悲しい気分になる。

藍井エイルの休養もそういう中で発表されたものだった。だから僕たちは不安だったのだ。もうあの歌声を聞くことはできないんじゃないか、もうあの笑顔に出会えないのではないか、そう思った人は少なくないはずだ。

だが、藍井エイルの凄さは、とにかくファンが信じていたということだと思う。この武道館でも出来る限りの声を出し、また会えた喜びを全面に隠すこともなく、満員の客席は藍井エイルに伝えていた。ステージに戻ってきたエイルの目が、その歓声を受けるたびに輝きを取り戻すのをスクリーンは捉えていた。お互いがお互いの力になっていく、そんな永久機関のような想いの連鎖が武道館にはあった。

「流星」「ラピスラズリ」「翼」「シンシアの光」とヒット曲を連続に披露していく、彼女の代表曲の一つである「INNOCENCE」では今までどのライブでも聞いたことがないくらいの大音量での合唱。エイル自身が「人がつながる喜び」を書き出した8枚目のシングル「ツナガルオモイ」でファンとの相互感情は爆発する。

「おかえり、もう離さないよ」そう言わんがばかりに全身で藍井エイルを感じるファン。そして「ただいま」の気持ちを伝えきろうと全てを歌に乗せるエイル。それは素晴らしい空間だった。エネルギーが満ち溢れるような瞬間。

1年9ヶ月前、僕は藍井エイルに向けたコラムを書いた。そこで僕は彼女を彗星だと言った。

夜空を舞い飛ぶように現れ、美しい軌跡を描き、人を魅了して消え去っていく。その原動力はファンの思いだと、そしてきっとまた全天に弧を描く藍井エイルは舞い戻ると書いた。

願いを込めた言葉が現実に眼の前にあるのを見て、思わず身を乗り出して涙を拭う。きっと彼女を呼び戻したのはファンの思いと力だ、そう断言できるライブが眼の前にある。

「今日という日も、こうやってみんなが待っていてくれたからです、本当にありがとうございます、私には感謝を伝えたい人がたくさんいます」そうMCする藍井エイルの目に涙はない。しっかりと前を向き、伝えるべきことを伝えるためにステージに立っている。

本編ラストでは「虹の音」を、そしてアンコールでは「久しぶりに会ったんだけど、いい意味で全然心配しないんです」とバンドメンバーと、新たな表現をともに作ったダンサーを紹介。そして歌われる「シリウス」では再度の大爆発的盛り上がりを見せる。ステージを左右楽しげに走る彼女はとてもとても嬉しそうだ。最後はしっとり……ということもなく、最新シングルから「ヒトカケラの勇気」を歌い上げ、全20曲の復活ステージは幕を下ろした。

久々に武道館に響き渡る恒例の合言葉「エイ!エイ!ルー!」の大合唱と、おかえりなさいを込めた万雷の拍手が、藍井エイルの未来を示していた、彼女の旅がまた始まる。

レポート・文:加東岳史

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