SOIL&"PIMP"SESSIONSと椎名林檎、TK from 凛として時雨、RHYMESTER、中島美嘉、ブルエンら『THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2018』DAY1【大隅ステージ】レポート

2018/10/10
SOIL&"PIMP"SESSIONS 客演:椎名林檎

THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2018
2018年10月7日(日)鹿児島市・桜島多目的広場&溶岩グラウンド【大隅ステージ】

■なみだ藍

なみだ藍

なみだ藍

オープニングアクトは鹿児島に音楽の道を切り拓いた地元フェス『WALK INN FES』の推薦枠で出演した女性シンガーソングライターのなみだ藍。台風一過となった快晴の青空の下に登場すると、アコースティックギター1本を掻き鳴らしながら、優しいファルセットを聴かせた「透明な傘」を皮切りに、イノセンスな歌声を大隅ステージに優しく響かせていった。

なみだ藍

なみだ藍

昨年までは高校生として地元・鹿児島で活動をしていたが、今年は本格的に音楽活動をするために上京したという彼女は、朝イチから大勢のお客さんが詰めかけたステージに立ち、「こんなにたくさんの人の前で演奏するのは初めてなので、緊張してたんですけど、帰ってくることができて嬉しいです!」と初々しい言葉で喜びを伝えた。そして、「夏の終わりに」と紹介して、cinema staffの三島想平がプロデュースを手がけた「蛍光日和」のあと、渾身のバラード「アオイ残像」まで、少し緊張気味に歌い切ったなみだ藍。ふわりとした佇まいの奥に凛としたシンガーとしての強さを覗かせる清々しいステージだった。


■ベリーグッドマン

ベリーグッドマン

ベリーグッドマン

サウンドチェックからオーディエンスを巻き込みまくっていたベリーグッドマン、本編は「ライトスタンド」でキックオフ。MOCA、Rover、HiDEXの放つ真摯なリリックに、サウンドチェック時は笑いに包まれていたフィールドの空気が熱く変わっていく。10月8日配信スタートの新曲「プレイヤー」でもその空気は濃くなっていく一方。「You & Me -Remix-」では「鹿児島みんなで手を挙げろ!」という煽りに、大きく手を振る。

ベリーグッドマン

ベリーグッドマン

「今日、開場6時半! 6時半から来ましたって人、いらっしゃいますか? (あちこちで手が挙がる)すごい! 桜島もまだ6時半は休んでますよ!」とRover。お母さんが鹿児島県鹿屋市高須町の出身だそうです。そして、キラー・チューン「ライオン(2018 New ver.)」「Good Time」を二連打で投下、振り上げられる拳でフィールドが埋まる。次はMOCAが、人の曲をふんだんに使ったコール&レスポンスで爆笑を取ってから「頭の上で手を叩け!」と「ベリーグッド」に突入。ラストは「ハイライト」でオーディエンスに一本指を掲げさせ、感動的に終了……と思ったら「まだ時間あります? 持ち時間はきっちり守るベリーグッドマン!」と記念撮影で締めた。


■ペトロールズ

ペトロールズ

ペトロールズ

ちょうど10月7日が長岡亮介(Vo/Gt)の誕生日ということで、サウンドチェック中にお客さんから「お誕生日おめでとう!」の声があがり、即興で「ハッピーバースデートゥーユー」のワンフレーズをギターで弾いて、喝采を呼んだペトロールズ。「このあと、音楽(ジングル)が鳴ったら始まります」と言うと、そのままステージ袖に捌けることなく、「Not In Service」から本番が始まった。極限まで削ぎ落としたスリーピースのサウンドにハイセンスな技を散りばめた「表現」から「闖入者」へとノンストップでつなぎながら、長岡を筆頭に、三浦淳悟(Ba)、河村俊秀(Dr)という手練のメンバーが生み出す極上のグルーヴと美しいメロディが穏やかにフィールドを踊らせていく。

ペトロールズ

ペトロールズ

言葉で煽るのではなく、その研ぎ澄まされた集中力と演奏力によって、“ロックバンドのかっこよさとはこういうことだ”と語り尽くす、そんなステージ。圧巻のギタープレイで湧かせた「FUEL」を終えて、去り際に「素敵なフェスに呼んでもらってありがとうございました!」と言ったあと、最後もまた「ハッピーバースデートゥーユー」でオチをつけるという締め方まで粋だった。


■SPECIAL OTHERS

SPECIAL OTHERS

SPECIAL OTHERS

圧倒的に“歌もの”支持が根強い日本の音楽シーンのなかで唯一無二の“インストバンド”を貫き続け、昨年デビュー10年を迎えたSPECIAL OTHERSは、太陽が最も高い位置へと達する時間帯に登場すると、「BEN」からライブをスタートした。音が鳴り出した瞬間に自然と踊り出さずにはいられない心地好い四重奏。宮原“TOYIN”良太が叩き出す軽やかなビートにのせて、芹澤“REMI”優真(Key)が鍵盤を叩くように弾く激情のソロプレイを見せると、会場からは大きな喝采が湧き起こる。

SPECIAL OTHERS

SPECIAL OTHERS

宮原“TOYIN”良太の躍動感のあるフレーズと柳下“DAYO”武史(Gt)のメロディアスなギターが絡み合い、フィールドがハッピーな空間に包まれた「Good Luck」のあと、MCでは「フェスティバルだと思ったら、“へ”なんだってね」と、お客さんに問いかけた芹澤。宮原も「(鹿児島の有名なラーメン店)のり一をひとりで食べられたら一人前なんだよ、九州男児は(笑)」と、地元ネタを交えたトークでも笑いを誘うと、最後の締めくくりは「Laurentech」。スペアザが音楽に託した言葉のいらないコミュニケーションには、いつも“楽しむ”以外のルールはいらない。


■BLUE ENCOUNT

BLUE ENCOUNT

BLUE ENCOUNT

リハから4人は飛ばしていた。明らかに気持ちが入っていた。「Survivor」を演奏したあと、興奮で辛抱たまらなくなったのか、田辺駿一(Vo/Gt)が「ヤバい、もう、そっち行こう」とステージ最前ギリギリまで身を乗り出す。熊本で結成されたブルエンだが、江口雄也(Gt)が鹿児島生まれだったり、田辺の祖母が南九州市出身だったり、鹿児島との縁は深いようだ。

「音楽が好きな奴が集まってるってことでいいんですよねぇ!?」と観客を煽った後、田辺は皆にタオルを振り回させ、「LIVER」へ突入。タオル回しの後は一斉に拳が突き上げられる。容赦なく照りつける太陽に呼応するかのように、4人は次々に曲を畳み掛けた。この時間帯にはちょいと厳しめなダンスタイムだが、ステージに詰めかけた観客のテンションもかなり高い。

BLUE ENCOUNT

BLUE ENCOUNT

「今日、川辺の親戚が観に来てんだって! 恥かかせるなよ!」とローカルな煽りで笑いを誘った後は、「鹿児島イケるか!」とここぞのキラーチューン「もっと光を」をカマす。ここまで25分間、全力で駆け抜けた。しかし、田辺は言う。「演奏時間、短けぇ! もっと歌いたいです!」その気持ちはよくわかるが最後の1曲だ。ここで選んだのは「はじまり」。演奏前、「自分の中に鹿児島の血が流れていることを誇りに思います」と田辺は言った。鹿児島という土地に対する想いを噛みしめるようにじっくり演奏する姿が印象的だった。


■中島美嘉

中島美嘉

中島美嘉

ゆっくりと中島美嘉がステージ中央に歩みを進めると、その姿に吸い寄せられるように人々がステージ前へと一斉に詰め寄る。そして、オープニングナンバー「花束」の冒頭をハイトーンで歌い上げる彼女の姿に自然と拍手が沸き起こった。その後は皆、微動だにしない。体も揺らさない。この時点で既に聴衆は中島美嘉という存在に釘付けになっていたのだ。

ウッドベースと鍵盤というシンプルな編成で臨んだライブは、大名曲「ORION」へとバトンが渡された。しかし、誰もシンガロングなんてしないし、余計な声も上げない。ただ彼女の歌に耳を傾け、ワンコーラスが終わるたびに盛大な拍手を送るのだった。

中島美嘉

中島美嘉

そんな緊張感のある歌唱から打って変わって、MCでは「ただいま、鹿児島!」と笑顔が弾ける。そして、「ごめんね、冬の歌なんて歌っちゃって(笑)。ここからは楽しい感じでいきましょうか!」とアメリカ南部のフィーリングに溢れる「ALL HANDS TOGETHER」を披露。「よかった、(鹿児島に)帰ってきて」と満足気に微笑む中島が最後に披露したのは「雪の華」。間違いなく平成を代表するこの名曲に、芝生を埋め尽くした観客が酔いしれた。最後に故郷へ向けて深々と頭を下げた中島の心中を思うだけで、グッとこみ上げてくるものがあった。


■RHYMESTER

RHYMESTER

RHYMESTER

少しずつ太陽が傾きはじたころ、「西日最高潮タイムですねえ」と眩しそうに目を細めながらステージに現れたRHYMESTERは、自分たちのルーツにあるクラシックなヒップホップのスタイルとは何たるかを証明するステージだった。

RHYMESTER

RHYMESTER

DJ JINによる泥臭いビートにのせて、宇多丸とMummy-Dが怒涛のマイクパフォーマンスを繰り出す「ONCE AGAIN」にはじまり、初っ端から会場を全力で盛り上げていく。MCでは「タブさんがイベントをやるって言ったとき、ミュージシャン一同が心配してた。もっと小さい規模になるかと思ったら、最大規模フェスティバル!」(宇多丸)、「今日、桜島が噴火したら、日本の音楽シーンは終わりだよ」(Mummy-D)、「最高のメンツだよね」(宇多丸)と、ふたりらしい掛け合いでヘス開催を喜ぶと、親子連れには気まずいエロティックなナンバー「肉体関係 Part2 逆 Featuring クレイジーケンバンド」で、宇多丸が「鹿児島のみなさん、愛し合ってますかー!?」と絶叫。そして、「俺たちが得意なヒップホップは人力で盛り上げること。だからこそ俺たちはロックフェスにいちばん呼ばれるラップグループなわけです」と伝えると、最後はそんなRHYMESTERの矜持が詰まった「Back & Forth」と「The Choice Is Yours」を投下。現在進行形を更新し続けるレジェンドとして常にシーンの最前線を走り続けるRHYMESTER、貫禄のアクトだった。


■TK from 凛として時雨

すっかり陽が暮れた大隅ステージ。バイオリンに佐藤帆乃佳、ピアノ大古晴菜、ドラムBOBO、ベースは吉田一郎という布陣を携えたTK from 凛として時雨が美しき轟音を巻き起こした。アコースティックギターのカッティングとパーカッシヴなビートにのるTKのハイトーンボーカルが刹那的な音像を描き出す「flower」からライブはスタート。予測不能に表情を変える楽曲の展開に呼応して目まぐるしく明滅を繰り返す照明の効果も相まって、まるで異世界に吸い込まれるような錯覚にすら陥ってしまう。

激しく緩急を行き来しながら混沌を作り上げる「Abnormal trick」、切実なメロディが壮大なスケールで広がる「contrast」、TKの絶唱が眩暈のするようなカタルシスを生む「unravel」。ラスト1曲に辿り着くまで手短なあいさつ以外にMCはなし。狂気すら滲むライブパフォーマンスとは一転して、最後に「見た感じは怖いかもしれないですけど、僕らも楽しみたい気持ちは一緒なので」と親しみを込めて語りかけると、ラストソングはダンサブルなビートが炸裂した「Fantastic Magic」で終幕。己の美学を貫くTKの孤高の存在感を見せつける圧巻のアクトだった。


■SOIL&"PIMP"SESSIONS 客演:椎名林檎

SOIL&"PIMP"SESSIONS

SOIL&"PIMP"SESSIONS

まず丈晴がひとりで登場、彼のピアノが響く中、他の5人もオンステージ。社長が「ぶちあがるぞー!」と宣言、そのとおり「ハロー張りネズミのテーマ」「Explorer」とどんどんフィールドの温度を上げていく。「POP KORN」では「鹿児島!」「かごんま!」「西郷どん!」「桜島、どーん!」とコール&レスポンス。しかしここでタブゾンビ、「あれ? 今気づいたけど、みんな、林檎ちゃん待ち?」。爆笑。「SUMMER GODDESS」では競うようにソロを聴かせ、社長もトラメガで応戦。

そして、いよいよ椎名林檎の登場。彼女の姿にフィールドがドッと湧き、最初の曲が何かわかったところでもう一度湧く。最初に彼女とソイルがコラボした「カリソメ乙女」だ。続く「MY FOOLISH HEART」では、社長が椎名林檎のボーカルに声を添えたり、指揮者よろしく演奏の緩急を司ったりしていく。

SOIL&"PIMP"SESSIONS 客演:椎名林檎

SOIL&"PIMP"SESSIONS 客演:椎名林檎

SOIL&"PIMP"SESSIONS 客演:椎名林檎

SOIL&"PIMP"SESSIONS 客演:椎名林檎

「すごいですよね、タブくん、まさかこんなことを実現してしまうとは」という椎名林檎の称賛に、拍手が広がる。「来年はなさるんですか?」「来年もやります!」「あ、じゃあぜひフルセットでおじゃまさせてください」という彼女の一言に、場内「おおおっ!」といろめきたつ。「みんな! 今の聞いた?」と、タブゾンビ、もっといろめきたつ。

ラストは2013 年に両者がコラボした「殺し屋危機一髪」、そして「Moanin'」と、狂騒の中で締められるのとはまた違う、なんとも不思議で心地よい空気が大隅ステージを満たした。タブゾンビ、「また来年、いや、明日!」。

SOIL&"PIMP"SESSIONS 客演:椎名林檎

SOIL&"PIMP"SESSIONS 客演:椎名林檎


取材・文=阿刀“DA”大志(BLUE ENCOUNT、中島美嘉)/秦理絵(なみだ藍、ペトロールズ、SPECIAL OTHERS、RHYMESTER、TK from 凛として時雨)/兵庫慎司(ベリーグッドマン、SOIL&"PIMP"SESSIONS 客演:椎名林檎)

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