『中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2018』参加記 前日から翌日まで楽しみきったら見えた、中津川ソーラーの不変と進化

2018/10/12
中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2018より 撮影=風間大洋

中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2018 2018.9.22-23 中津川公園内特設ステージ

『中津川 THE SOLAR BUDOKAN』を一ロックファンとしてただただ満喫し、それを振り返って文章を書くという、あまりにも役得なお仕事をいただくようになって3年目。記事掲載にあたっては一応レポートという体裁をとっているものの、これはライブレポなのか?といえば答えはNO。旅行記やエッセイの類だと思って読み進めていただければ幸いだ。

3年目、3回目ということで、アルバムでいえば3rdアルバム。そうなってくると、それまでの方向性を踏襲するのか、何かドラスティックな変革をもたらすのか?という岐路に立つタイミングともいえるわけだが、果たして筆者はレディオヘッドでいう所の『OKコンピューター』、プライマル・スクリームでいえば『スクリーマデリカ』的な、そういう会心の一撃を放つことができるのか、正直不安しかない。ちなみに、個人的には意外と2ndアルバムに名盤が多いと思っています。

ソーラーパネルと子供たち、このフェスを象徴する一コマ

ソーラーパネルと子供たち、このフェスを象徴する一コマ

9月21日12:00少し前、1年ぶりに降り立った中津川は霧雨模様。雨の中津川を見るのは初めてだ。それもそのはず、僕が中津川を訪れるのは年に一度、この中津川ソーラーのタイミングであり、中津川ソーラーといえば、僕が呼んでもらうようになったここ3年はおろか、6年前の初開催から開催期間中にまともに雨が降っていないという奇跡的なイベントだからだ。

本番を翌日に控えた金曜日の街並みは、天候のせいもあってか人はまばら。街中に散見されるレトロな建物や看板もあいまってとても落ち着いた雰囲気で、これはこれでとてもいい風情だ。でも雨のフェスは嫌だよなぁなんて思いながら、出迎えてくれたスタッフ達と話していると、誰ひとり天候の心配をしていない。というか、「晴れますよ!」みたいな感じ。いやいや、天気予報だと土曜日は怪しかったような……と思っていたら、僕が電車に乗っている間に予報が変わったらしい。オーガナイザーにして、太陽神的な何かと契約したと噂される男・佐藤タイジ、恐るべし。

その佐藤タイジと、彼とインディーズ電力を構成するiCasと高野哲、うじきつよし、パーカッションの辻コースケと集合して、まずは中津川市立東小学校へと向かう。今日はここで地元の小学生を対象とした音楽体験のワークショップが行われるのだ。前日から訪れたのは、これを見るためだ。

「かしこくじょうぶで仲よし」のロッカーたち

「かしこくじょうぶで仲よし」のロッカーたち

中津川ソーラーを生み、これまで動かしてきたマインドの中においても、“子ども達”という要素は大きなウェイトを占めていて、会場にも家族連れの割合が多いし、「こどもソーラーブドウカン」というコーナーをはじめとした各種子ども向けアトラクションがたくさんあったりもする。地元の子供達を対象としたワークショップも、中津川ソーラーの開催地である中津川の子ども達に音楽と出会い、触れてほしいとの想いから始まっており、今年は過去最大・総勢160人ほどの小学生がワークショップに参加するのだとか。
開催期間中、タクシーに乗ってもホテルに泊まっても、単にイベントの開催地であるという以上に、このフェスが地元民にとって大きな存在になっているという空気を感じる瞬間が多々あったが、それは単に人が大勢集まるからとか、それによって経済効果が生まれるからとかいうだけではなく、こういう地域に根ざした活動を続けていることも一因なのだろう。

小学校に到着後、まず校長先生たちと挨拶をしたあと、体育館でのリハーサルへ。その間に生徒たちともすれ違ったが、みんなとてもよく挨拶する子達だ。「東京だとこうはいかないかもですね」と別のカメラマンと話しながら感心していたが、一説によると「怪しい」人を見かけたら先手を打って挨拶しろ、という教えもあるそうで、もしかするとそっちのパターンであった可能性も否定できない。我々は揃ってヒゲ面だし、今日の“先生”にいたってはアフロヘアとかキンパツもいるしな。

穴の空いたダンボールを使ってカホン作り

穴の空いたダンボールを使ってカホン作り

箱があったら入りたいお年頃

箱があったら入りたいお年頃

そっちからは無理だ

そっちからは無理だ

ワークショップではまず、みんなで段ボールを使ったカホンを作ったあとに、ふた手に分かれて一方はギター体験を、もう一方はさっき作ったカホンを使ってパーカッションを楽しむという流れ。当然といえば当然だが、ギターには本数に限りがある上、付きっきりで教える必要が出てくるため、インディーズ電力の面々+うじきが選ばれし20名の小学生にギターを教え、残る100名以上を辻が一人で受け持つということになり、教える側としてはなかなかハード。が、参加者の小学生軍団は、始まるやいなやギターの穴にピックを落とす子がいたり、カホンの穴に頭を突っ込む子がいたりと、無邪気に音と楽器と触れ合い、思い思いに楽しんでいたようだ。

ライブハウス音楽室へようこそ

ライブハウス音楽室へようこそ

やはりギターには少年少女を夢中にさせる何かがある

やはりギターには少年少女を夢中にさせる何かがある

いや、少年少女に限った話ではないか

いや、少年少女に限った話ではないか

最後はギター組が、教わったCとGのコードを駆使してビートルズ「Love Me Do」を披露。講師陣によるミニライブやお返しとして披露された小学生による「ソーラン節」の演舞などを経て、無事ワークショップが終了し、外に出たらもう雨が止んでいた。これはやっぱり何かと契約している。「今年はやたらとアフロのボリュームがすごい」とうじきに突っ込まれていたが、それはひょっとするとその代償なのかもしれない。そして小学生は、下手すると生まれて初めて間近で見るアフロに興味津々であった。

ワークショップの後はライブ披露

ワークショップの後はライブ披露

間近で観る生演奏。こういうのって後々まで残る貴重な経験です。

間近で観る生演奏。こういうのって後々まで残る貴重な経験です。

隙あらば触れていくスタイル

隙あらば触れていくスタイル

会場に到着すると翌朝の開催を目前に控え、会場設営のラストスパート中。本部内はインカムで連絡を取り合いながら動き回る人で溢れている。ああ、これは気まずいぞ。ということで邪魔になっても悪いので、まだ来場者のいない会場をひとしきり歩き回ってみたのだが、基本的にはこれまでの開催を踏襲した会場の作りになっているため、今年もやっぱり“帰ってきた”感がすごい。元々の運動公園の施設を活かし、来場者の動線と関係者の動線を両立させながらコンパクトな規模(人がいない状態で歩き回ると10分もあれば全体を見て回れる)にまとめ、しかも音の干渉を最低限に抑えた中津川の会場設計には、あらためて恐れ入る。

そうこうしているうちに、今年から始まった『前夜祭』の時間になった。『前夜祭』に参加できるのはキャンプ券を購入し、前日夕方以降からキャンプサイトに入場している人。毎年最初に売り切れるキャンプエリアだけにプレミア感があるのだが、まだ前日であるということと今年は直前まで天候が悪かったことから、そこまで人出は多くなく、とてものんびりした雰囲気の中ではじまった。

司会を務めたのは、ラジオDJのデイブ・フロムとジョー横溝というほろ酔い加減の2人。ステージといってもテントなので、どこからがステージでどこからが観覧スペースなのか分からない、とても近い距離でスタートしたライブでは、最初に佐藤タイジとAfro Begueのジェンベ奏者オマール・ゲンデファル、辻コースケがまずセッションを披露。アフロビートとアコギ(エフェクトを駆使してソロも弾く例のやつ)、即興の歌は、野外という環境に絶妙にあっている。これはビールが飲みたくなるヤツだなぁと思っていたら、キャンプエリア併設のフードコーナーがもう空いていたので、生ビールと「栗旨豚」という地元のブランド豚らしき串を購入。脂がしっかりあるのにクドくなく、“栗”というだけあって甘みもある。美味い。そう、これも断じて仕事である。

栗旨豚の写真を撮り忘れたので、場内にある栗きんとん屋さんの休憩スペースを貼っておきます

栗旨豚の写真を撮り忘れたので、場内にある栗きんとん屋さんの休憩スペースを貼っておきます

オマールがステージに残ってそのまま津田悠佑(Afro Begue)と演奏したあとは、ステージ転換を経て、Omoinotakeが80’sポップスやソウルの色濃いバンドサウンドで爽やかに魅せる。このころになると観客もじわじわと増えてきていて、司会の2人も普通にお客さんと絡んだりしているから、「あれ、デイブじゃね?」「すごくね?」と嬉しいサプライズを味わっている、ラジオリスナーらしきお客さんも。この至近距離でリラックスした雰囲気のもと楽しめる環境、フジロックの苗場食堂みたいな感じだなぁ。……という話をスタッフさんにしたら、目指しているのはどっちかといえばピラミッド・ガーデンの方だったらしい。失礼しました。どっちにしろ居心地の良さは文句なしなのだけれど。

じっくりと弾き語りを披露したのは、ドミコのさかしたひかる。バンドのときよりも、よりブルースとかフォークのエッセンスを感じる歌唱ですごく好み。ここで一旦霧雨が降ってきてしまったが、そんな状況を物ともせず、この日一番の盛り上がりを作り出したのは、ジュンスカの宮田和弥とうじきつよしによるこども SKY WALKER(S)だった。「歩いていこう」などキラーチューンを続け、散々盛り上がっているうちに再び雨が止み、そこでトドメのRCサクセション「雨上がりの夜空に」を投下。大合唱で前夜祭を締めくくった。これには明日からの本編に向けた期待が膨らむばかり、バッテリーはビンビンだ。

しっかり晴れ。お客さんもいっぱいです

しっかり晴れ。お客さんもいっぱいです

翌日・9月22日の中津川ソーラー1日目。開場時に雨が降っていたが、開演時刻に合わせたかのようにすっかり晴れ空に。開幕からいきなりシアターブルックとドミコがばっちり被っているという、よく言えば豪華、悪く言えばロックファン泣かせなタイムテーブルに悶絶しかかったが、そこは会場がコンパクトな中津川。移動時間は2~3分でいけるので半々で観ることも可能なのである。

シアターブルック 撮影=平野大輔

シアターブルック 撮影=平野大輔

で、ここからが問題。最初にも書いた通り、この文章の趣旨は「中津川ソーラーを一ロックファンとしてただただ満喫し、それを振り返って文章を書く」だ。我々音楽ライターは普段、メモを取りながらライブを観ていて、印象に残ったアクションや照明の具合、シーンごとに頭に浮かんだキーワードの走り書きなどなどを逐一記しており、MCなんかも基本的に速記しながら観ているので心を動かされる余裕があまりないし、しゃべる情報量が多いバンドなんてもうその時点で大変なことになる。だから、普段のライブを「ただただ満喫」できているかといえば、決してそういうワケではない。けれど唯一、この年に一度の中津川では、僕はメモとペンの代わりにビールを持って、ふらふら歩き回って音に身を委ねながら、瞬間ごとの光景を脳みそにバッチリ焼き付けて楽しむことで、そうすることでしか感じられないフェスの魅力を体感することにしている。
何が言いたいかというと、ライブの様子を克明に知りたい方は、一組ごとのレポートを某別メディアさんがチームを組んでその日のうちにしっかり上げているので、そちらでお願いします。

フードエリアにゆとりがあるのも高ポイント

フードエリアにゆとりがあるのも高ポイント

来場者が歌えるカラオケブースも。かなり盛況でした

来場者が歌えるカラオケブースも。かなり盛況でした

ひとまず、僕は1日目、こう回りました。

ドミコ→シアターブルック→CHAI→the band apart→サンボマスター→フラワーカンパニーズ→一青窈(人が多すぎてステージまで辿り着けず音のみ)→座・カンレキーズ→SA→Nothing’s Carved In Stone→ACIDMAN

大道芸の体験ができたり、

大道芸の体験ができたり、

ハムスターの気持ちになれたり、

ハムスターの気持ちになれたり、

ダイナミックに滑降できたり、

ダイナミックに滑降できたり、

子供・ファミリー向けのトークや演奏が設けられたりもする、中津川ソーラー

子供・ファミリー向けのトークや演奏が設けられたりもする、中津川ソーラー

太陽光で発電され蓄電池から流れる電気による音の良さは、中津川ソーラーを語る上で欠かせない要素だが、そんな環境で聴くCHAIやバンアパのグルーヴはひたすら心地よかったし、昨年は身損ねたフラカンもしっかり目撃できた。BO GUMBOS×うじきつよしな座・カンレキーズはやっぱりいい具合に渋かったし、SAの獣のように荒々しい弾丸ロックンロールにもしっかり撃ち抜かれた。あとはなんといってもトリのACIDMAN。中津川ソーラーの意志に賛同して毎年出演を重ね、ついにはヘッドライナーを任された3人は、特にそこに言及することこそなかったものの、セットリストにもうその気合が滲んでいた。<太陽が紡いだ何億もの物語>と歌い出す「ミレニアム」から始まり、普段のフェスではそこまで聴く機会の多くない「アルケミスト」「ALMA」なども含む、太陽や星にまつわる楽曲たちを連打していく。……まぁ、彼らの楽曲はほとんど何かしらそういう要素を含んではいるんだけど、それは置いておいて。すっかり暗くなった会場を照らす月や星の下で聴くACIDMANは、やはり格別だった。

CHAI 撮影=柴田恵理

CHAI 撮影=柴田恵理

the band apart 撮影=古川喜隆

the band apart 撮影=古川喜隆

一青窈 撮影=古川喜隆

一青窈 撮影=古川喜隆

Nothing’s Carved In Stone 撮影=柴田恵理

Nothing’s Carved In Stone 撮影=柴田恵理

ACIDMAN 撮影=木村泰之

ACIDMAN 撮影=木村泰之

その余韻に浸りながらホテルに帰ってお風呂に入って、翌朝に「さあ2日目も頑張るぞ」と、通常ならそうなる流れだが、こと中津川においてはそれじゃあもったいない。21:00からオープンする「Village Of Illusion」という夜限定のステージ及び、その脇に存在する怪しげなエリア、そこまで押さえておかなきゃもったいない。
そのことを知っているオトナたちがワラワラと群がる場内を抜け、奥へ奥へと足を踏みれるとそこには……あった。何の意味もなさないチープなドア、そこに記された「スナックよしこ」の文字。思い返せば昨年、別フェスとの日にちかぶりのため泣く泣く2日目からの参加となり、僕が到着したときにはこのエリアはもうその役目を終え、もぬけの殻だったわけだが、この日は大盛況で外から伺うともう満席に近い状況。同じように中を伺っていた隣の男性客に、ホステスから「あらー!」とドスの効いた声が飛ぶ。怖え。

今思えば勢いで入ってしまえばよかったのだが、隣の男も怖気づいたのかスーッとその場を離れたし、よくよく考えてみたら僕も一人だからこれは少々勇気がいる状況ではある。ノリでウェイウェイ入っていくわけにはいかないし、取材然として入るのも無粋ってやつだ。ちょっと間をおいて機を待とう、ということで周囲を見て回っていると、なんか増えているのだ。いかがわしい店が。
「乳」「乳」と張り紙のされた謎のラーメン屋、「ボッタくりBAR」と堂々と謳った飲み屋。「Hot Cats」という看板の店もあり、後から聞くところによるとこれはSM的な店らしい。オトナのアトラクションの充実にもほどがあるぞ、中津川ソーラー。「Hot Cats」の入り口で豪気にも万札を渡して悠然と店内に消えていった男子もいたし、これはこれですごい経済効果を生んでそうな気がする。

オトナ時間帯の写真は刺激が強すぎるので、ステキな夕景を置いておきますね

オトナ時間帯の写真は刺激が強すぎるので、ステキな夕景を置いておきますね

いろいろ見て回ってから再び「よしこ」を覗いてみたら、先ほど以上に人が集まっていて、もはや入店不可能な状況になっていた。昨年あれだけ「よしこ、よしこ」と書いておいて今年も体験できないとあっては音楽ライターの名折れ……いや音楽は関係ないんだけど、男のコケンってやつに関わるぞ。と、しばらく待っていたものの席が空く気配はなくそのままタイムリミット。全然いかがわしくない店で購入した豚汁うどんをすすって帰った。豚汁がしょっぱかったのは、味噌のせいだけじゃない、かもしれない。
来年こそは突入してみたいし、なんなら来年はそこのみに焦点を当ててもいいくらい、今でも気になっていますので、僕と一緒に「よしこ」体験したい方、待ってます。

ヤバイTシャツ屋さん 撮影=上山陽介

ヤバイTシャツ屋さん 撮影=上山陽介

さあ、一夜明けて2日目。個人的には3日目なのでもうすっかりホーム感が出てきて、タクシーの運転手さんに行き先と道順を伝えるのも実にスムーズである。まずは開幕からメインステージにものすごい人だかりを生んだヤバTから、以下のように観て回ることにした。

ヤバイTシャツ屋さん→武藤昭平 with ウエノコウジ→佐藤タイジ&華純連→The Birthday→GRAPEVINE→ストレイテナー→土岐麻子×Rei→go!go!vanillas→藤巻亮太→HEY-SMITH→小坂忠 with シアターブルック→Dragon Ash

佐藤タイジ&華純連 撮影=平野大輔

佐藤タイジ&華純連 撮影=平野大輔

The Birthday 撮影=上山陽介

The Birthday 撮影=上山陽介

個人的に胸がいっぱいだったのは、武藤昭平 with ウエノコウジ。がんの治療を続けていた武藤昭平がまさかのサプライズ復帰を果たし、大きな喝采を浴びたのだ。ウエノコウジの生誕祭や勝手にしやがれのライブなど、武藤不在の間に何本か関連するライブのレポートを書いていたこともあって、こんなのグッとこないわけがない。また、復帰といえば小坂忠もそう。昨年の中津川ソーラーに出演予定も病気療養のためキャンセルとなったレジェンドが改めて初登場を果たし、本物のソウルとしか形容しようのない迫力の歌声を響かせていた。「最高」と何度も口にしていた小坂だが、それはこちらのセリフでもある。

GRAPEVINE 撮影=柴田恵理

GRAPEVINE 撮影=柴田恵理

ストレイテナー 撮影=上山陽介

ストレイテナー 撮影=上山陽介

フジロックで観損ねた佐藤タイジ&華純連は、阿波踊りという日本古来のダンスミュージックに、えげつなく歪ませたギターとぶっとい重低音を組み合わせたサウンドで、思っていた以上にトランシー。“踊る阿呆に見る阿呆”とは時の権力者を揶揄するフレーズであり、阿波踊りとはいわばレベルミュージックなんだ——と佐藤タイジは語っていたが、なるほど。こりゃあ間違いなく刺激的なロックだ。10月13日に初開催の『阿波国 THE SOLAR BUDOKAN』にも出演が決まっているので、行かれる方はぜひ、阿波踊りの本場で体感してみてほしい。また、The Birthday、GRAPEVINE、テナー、バニラズなど、普段から観ているバンドもそれぞれの持ち味をナチュラルに出しつつ躍動。そんな雰囲気を感じてか、初登場のHEY-SMITHの猪狩は、彼にしては珍しいほどストレートな語り口で「初めて来たけど、最高」と評していた。

HEY-SMITH 撮影=上山陽介

HEY-SMITH 撮影=上山陽介

今年の大トリを飾ったのはDragon Ash。少なくともフェスの場で観た中では、いや、ひょっとしたら過去観た彼らのライブをひっくるめてもベストに近いライブだったと思う。「陽はまたのぼりくりかえす」に始まり、「ROCKET DIVE」のカバーや、「百合の咲く場所で」「Fantasista」といったモッシュ&ダイブ必至な楽曲が並んだセトリ然り、Kjの放つ熱のこもった言葉一つ一つ然り、完全無欠のライブバンドの姿がそこにあった。環境面や精神性なども引っくるめ、「中津川ソーラーとは何か」をしっかりと理解し、そこに自らの意思もしっかり乗せることのできる彼らだからこそ、2日間の締めくくりのライブという大役を、オーガナイザー率いるシアターブルックや名だたるレジェンド達から引き継げたのだろうし、実際にどこからどうみてもそれに相応しいライブをやってのけたのだった。

Dragon Ash 撮影=上山陽介

Dragon Ash 撮影=上山陽介

こうして2日間ライブを観続け、しっかり楽しみきった男は、ちゃっかり打ち上げにも参加して、翌日に中津川名物栗きんとん(おせちでよく見るやつとはベクトルが違っていてビックリ。美味い。)を土産に購入して、帰路についた。本当は打ち上げレポ的なこともしようか?と思っていたんだけれど、まぁよくよく考えてみたら、基本的に書けないことばかりが起きるのが打ち上げというものなわけで。

ただ、一つだけ書き残しておきたいのは、太陽光の自然エネルギーでもってフェスをやるという中津川ソーラーの理念も含めて、個々のミュージシャンがそれぞれにメッセージを掲げ、声を上げたり行動を始めるだけでは、それは針の穴のようなものにすぎず、風穴をあけるには至らない。でも、これからの自分たちはそこに風穴をあけられるように考えて動いていかなきゃいけない——という、「この先」を見据えた話が出ていたこと。声を上げ、意思を示すというだけでなく、そこから何をどう変えていけるのか、どうすればそのうねりを広範囲に波及していけるのか。いまや一大イベントとなった中津川ソーラーだからこそ、ネクスト・フェーズと向き合うための岐路に立っているのかもしれない。

撮影=上山陽介

撮影=上山陽介

きっと、我々メディアに関わる人間や、会場を訪れる一人ひとりにとっても無関係なことじゃない。もちろん思想信条や理想はそれぞれの自由でいいけれど、僕はやっぱりロックが、音楽が時代にドカンと風穴を空け、世界が変わっていくところを見てみたい。中津川ソーラーは今年も、そんな思いを新たにさせてくれる場所だった。

そうそう。結局、開催翌日の午後に帰京して家に着くまで雨は降らず、ちょっと昼寝して夕方に起きたら路面が濡れていた。家に帰るまでがロックフェスなのだから、やっぱり太陽と契約した男の神通力は怖いくらいに完璧であった。


取材・文・撮影(クレジット記載なし)=風間“太陽”   撮影=各写真のクレジット参照

今年もありがとう、中津川ソーラー!

今年もありがとう、中津川ソーラー!

関連ライブ

新着情報

レポート一覧に戻る

バナー