小松未可子 30曲の道のりを描いたライブストーリー 『ハピこし!ライブ2018 ~30 years, 30 songs~』ライブレポート

2018/12/04

2018.11.25(SUN)『ハピこし!ライブ2018 ~30 years, 30 songs~』 恵比寿ザ・ガーデンホール

今回のライブ『ハピこし!ライブ2018 ~30 years, 30 songs~』は、彼女の節目を祝うライブだ。事前にアナウンスがあったように、彼女がこれまで歌唱してきた曲のみで構成されるということで、ファンも大きな期待を寄せていたであろう。

まず書き留めておきたいのは、今回のライブで披露されたのは、小松未可子のオールタイムベストな選曲であったこと。

そして、「30歳までの道のりを、30曲の音楽で描くライブストーリー」というコンセプトがバックボーンとなり、彼女が発するメッセージを強くさせたのも忘れてはいけない部分だと思う。アニバーサリーイベントとなったこのライブをレポートする。


赤ちゃんの頃の写真、約15分のメドレー演奏、映像「小松大陸」……つぎつぎと発せられる、一夜限りのマジック

開演時間まで10分をすぎたころ、小松のナレーションで公演時の注意事項が読まれる。写真撮影や動画撮影は禁止、危険行為はしない、そして「一人ひとりが楽しくなれるよう、周りに気を配ってほしい」という彼女の言葉も添えられる。

筆者は今年9月の渋谷でのライブ公演を見たときにも感じたが、オールスタンディングライブにありがちな「開演直後に最前エリア付近が圧縮する」ような、いわゆるモッシュ状態を、小松のライブではほとんど見かけない。彼女の考え、いかにファンに伝わっているかがよく分かるシーンだと思う。

会場は暗転、オルゴール調にリアレンジされた「Restart signal」が流れ始め、ステージに飾られた大画面に、可愛らしい赤ん坊の姿が映し出された。その瞬間、会場内は大きな笑いと拍手に包まれ、「かわいい!」との声が飛び交う。お察しの通り、この日の主役である小松未可子の 0歳のころの写真が映し出されたのだ。

予想だにしない先制打を食らったまま、1曲目「Sky message」がスタートした。身を飾る赤いワンピースにはスパンコールがほどこされ、この日のヒロインをキラキラと輝かせる。

この日最初の目玉だったのは、3曲目「Re:ing」から10曲目「純真エチュード」までの流れを、メドレー形式で届けたことだろう。イントロから1番の歌詞を歌い終わるまで、あるいはサビのみを歌った曲もあり、時間にしては約15分ほど、もちろんノンストップで届けられた。歌いきる体力はもちろんのこと、バンド陣の演奏力と集中力が高くなければ、この流れを作るのも難しいだろう。名うてのバンドメンバーが揃う彼女のライブだからこそ、出来得た構成だ。

この流れに応えるファンも素晴らしかった。自分が好きな曲がかかった瞬間に盛り上がるだけではなく、久々に披露された「波乗りグライダー」では小松に合わせてタオルを振り回し、「MAGIC RADIO」での合いの手もバッチリと合わせる。メンバーから余計な煽りが発せられなくとも、自然なリアクションとして応える、この日足を運んできたファンがいかに彼女とともに歩んできたかを感じさせる一幕であった。

11曲目「HEARTRAIL」を熱っぽく演奏し終えると、小松とメンバーは一旦ステージを降り、会場は暗転した。ステージに飾られた大画面に、公演を散歩する小松の姿が流れる。

「久しぶりに来ましたね!」とカメラマンにむけて話しはじめる小松。BGMに葉加瀬太郎の曲が流れ始め、映し出されたのはTBSの名番組「情熱大陸」にオマージュを表した「小松大陸」のロゴ。映像効果バッチリで、会場は笑いに包まれた。

映像の中で彼女は、幼少期から11歳ごろに至るまでの自分を語りだした。この詳細はカットさせて頂きたい、この日足を運んだ人たちだけの思い出として秘めておきたいという筆者の思いだ。

撮影:森 久

撮影:森 久

アコースティックなリアレンジで届けられるひととき、特別ゲストの登場!

薄いピンクと紫のライトが差し、ステージ上の椅子に座った小松へピンスポットが当たる。12曲目に奏でられたのは「Maybe the next waltz」、バンドメンバーはアップライトベース・ハンドシェイク・アコースティックギターなどにそれぞれ楽器を持ち替えて、アコースティックでのリアレンジバージョンで届けられた。シンプルなサウンドになったことで、ワルツのグルーヴと小松の歌声が軽やかに交わっていくのが堪能できる。次に届けられたのは「エメラルドの丘を越えて」、小松の歌声、ギタリスト新井弘毅のアコースティックギターでのカッディング、そしてお客さんの手拍子、この3つだけで奏でられたひとときに、思わずうっとりとしてしまう。

「ここからは懐かしい曲をメドレーで」と軽く口にし、13曲目「おすしのうた」から18曲目「Romantic noise」を歌った。歌い出しやピアノの弾き初めで「おおっ!」と会場がどよめくシーンもいくつか起きるなど、この日の選曲とアレンジは古株のファンをも驚かせる。

近年ではライブハウスでの公演が多く、出音がどうしても「ロック」らしくなってしまうのは、サポートメンバーの出自や来歴を踏まえても当然の流れだろう。だがこの日のライブでは、不思議とそのような印象はなかった。2000人近くを収容できるライブホールの大きさや音響システムの違いを鑑みて、ロックなサウンドだけではなく、こうしたアコースティックなサウンドも演奏することも念頭に入れられていたからであろう。

また、個々の楽器の音が非常に明瞭でバランス良く響いていたことで、まさしく原曲通りに、それでいて「いまここで音楽が奏でられている」ことを生々しく伝える不思議なサウンドスケープだった。このアコースティック形式でのパートは、その印象をより強くさせたと思う。

特に18曲目「Romantic noise」は、先日終了したアルバムリリースツアーではパワフルに弾くことで楽曲の良さを引き出していたが、ここでは適度に力を抜き軽やかに奏でることで、まるで違った楽曲のように響いた。演奏後に、ここまでで一番に温かい拍手がもたらされたのが、その証拠だったと言えるであろう。

ここで再びメンバーは退場、会場は暗転し、ドキュメンタリー「小松大陸」は中学生から大学入学ごろまでの彼女を追いかける。15歳で芸能活動を始めるが、19歳のときに一時活動をストップし、「どうしようか悩んだ」と彼女は語る。「大学卒業までに、なにか見つけなきゃ」と思い立った彼女は、様々な事務所の面接を受け始めたと語った。

ここでステージから、20曲目が届けられる。「冷たい部屋、一人」、まさに20歳のときの彼女を象るような選曲。続けて21曲目は「群青サバイバル」、彼女が自身の生き方を探っていた21歳のころに合わせるように、彼女のディスコグラフィのなかでも随一に泥臭さのある曲がチョイスされた。

この日のライブのキモはここにある。ところどころではあるが、この日の曲順・曲数は、彼女の年齢に合わせ楽曲がチョイスされ、「30 歳を30 曲の音楽で描くライブストーリー」であったのだ。序盤に目くるめくように終えたメドレーであったことも、このコンセプトでいうなら「あっという間に過ぎていった」ということを表現していたのであろう。

ここで突然生ナレーションが入り、登場したのは特別ゲストの三上枝織だ。2 人は、2010 年から2015 年まで文化放送にて放送されていた『A&G NEXT GENERATION LadyGo!!』でパーソナリティを務めていた間柄だ。もちろん、そのことを知っているファンも多く、2人が壇上に並ぶと大きな声援が飛ぶ。

先程までの「小松大陸」でのナレーションも三上が務めていたこともあり、小松も「みかしー(三上の愛称)、ナレーションありがとう!」と感謝を伝えるが、「でもところどころ、若干変な方向にいってたけど」と苦言を呈すると、「そりゃ私も盛り上がっちゃうよ、だって、私もお客さんとおなじ、みかこしのファンだからね!」と大声で伝え、大歓声がステージに飛んでいく。

その流れで披露された22曲目は、ファン代表と自称した三上とのコラボで「Open Tuning」だ。これは『A&G NEXT GENERATION Lady Go!!』でパーソナリティを務めた5人による楽曲で、当時22歳だった小松未可子が同番組に起用されたからこその選曲なのだ。

撮影:森 久

撮影:森 久

「30歳を30曲の音楽で描くライブストーリー」は、いよいよ終盤へ。アンコールに登場したゲストは?

一気にバラエティーな空気になった会場だが、三上が退場するとともにピアノのイントロが差し込まれる。続いて鳴らされた 23曲目は「また、はじまりの地図」。彼女が声優としてリスタートしだした2011年ごろとリンクし、「芸能活動をもう一度をスタートした」彼女を描く。24曲目の「だから返事はいらない」を終えると、「小松大陸」が再び映し出された。

このパートで、番組は小松未可子へ向けて、非常に重い問いかけをぶつけている。

「小さい頃に描いていた自分になれているか?」と。

言葉を丁寧に選びながら、彼女はこのように答えた。

「活動をしている上で、指針としていることがあるんです。これは演技の先生に教えてもらったんですけれど、<愛・運・縁>を大事にしなさい、と。わたしはそれに加えて<恩>を加えて、<愛・運・縁・恩>の4つを大事にしているんです。この4つがなければ、今の自分にはなれていなかった。周りの方々に、生かされているなと思います」

この言葉を聞き、彼女のディスコグラフィを振り返ると、気づく人も多いとおもう。彼女が歌う音楽には出会いや別れを歌ったものが多く、この日のセットリストでいえば、「Maybe the next waltz」や「Restart signal」に、「また、はじまりの地図」がそれにあたるだろう。彼女は、自分の指針となるような信念や想いを、時として音楽を通じて届けてきたシンガーなのだ。

「小松大陸」が終わり、ライブ終盤の25曲目が始まると、ひときわ大きな歓声と合いの手があがる。当時25歳にさしかかっていた小松未可子がヒロインを務めた『モーレツ宇宙海賊』のイメージソングであり、彼女のデビューシングルである「Black Holy」だ。バンド編成に戻って、ギアを一段あげての熱い演奏と歌声で届けられた。

最後の30曲目に披露されたのは、途中に「Happy Birthday!」とコーラスが入る文字通りのバースデーソング、「エンジェルナンバー」だ。待ってましたと言わんばかりに、集まった観客は今日一番の大きな声をあげていく。このとき、筆者はPA卓近くで観覧していたのだが、バンドの音がまったく聞き取れないくらいの大合唱には驚かされた。ス
テージのメンバーも、小松未可子も驚いただろうし、嬉しかっただろう。

アンコールに入ると、MCタイムが始まった。この日のセットリストを振り返っていると、三上枝織が再び登場。同時にバンドが「Happy Birthday To You」を演奏し始め、バースデーケーキが運ばれてくる。小松が火を吹き消すと、彼女の誕生日を会場にいる人間すべてが祝福する。記念写真として小松、三上、バンドメンバーらがステージ中央に集まり、会場のファンを背にしてパシャリと1枚、皆でこの瞬間を祝う一幕もあった。その後、来年のライブ公演が発表され、大いに沸く観客。来年以降も、彼女の音楽活動はつづいていくのだ。

撮影:森 久

撮影:森 久

アンコール1曲目は、このライブ翌日に配信限定シングルとしてリリースされた「友情ZABOOOON!! 」。そして最後に披露されたのは「Imagine day, Imagine life! 」、小松を全編プロデュースしているチーム・Q-MHz のメンバーでもある田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)がゲストベーシストとして登場すると、会場のテンションはより一層盛り上がる。

ステージ所狭しと演奏する田淵、新井、黒須に負けじと、小松もステージをくまなく歩き、歌い、観客に手を振りつづけ、この日のライブは大団円を迎えた。小松未可子のオールタイムベストなセットリスト、バンドメンバーの力量や会場スケールなどを鑑みて披露された楽曲は、ここ近年では感じられないような新鮮さとなってファンに届けることができたといえるのではないだろうか。

ステージでの挨拶を終え、小松がステージを降りたと同時に、エンドロールが流れ始める。ステージを作り上げた方々の名前が流れるなかで、子供のころのアルバムを開きながらも笑いかけてくる小松、そして最後のページを開くと、先程撮影した記念写真が映し出される。

撮影:森 久

撮影:森 久

小松未可子の人生の1ページに、この日のライブが加わったのだ。
改めまして、誕生日おめでとうございます。

取材・文:草野虹

 

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