ASH DA HERO、全公演ソールドアウトのツアーファイナルを地元名古屋で「来年も、誰も見たことない景色見に行こうな」
2019/11/2516時半ごろに開場すると一気にお客さんがステージ前に詰め掛け、彼の登場を今か今かと待ちわびる。定刻の17時を過ぎ、フロアには歓声と熱気が渦巻いた。バンドメンバーの演奏が高揚感をかきたてる中、いよいよASH DA HEROの登場だ。「いこうぜ名古屋ー!」と威勢良く煽り、「からっぽの街」で口火を切った。ここから新曲「Starting Now」を含み、6曲目の「WAKE UP ROCK AND ROLL BAND」までアッパーに駆け抜け、フロアのボルテージを急上昇させたASH。お客さんとの息の合いっぷりが半端じゃなく、全員で作りあげる一体感が凄まじい。フロアにコールを求めるシーンでは、その声の大きさに満足げな表情だ。少し色が変わったのは「Everything」。壮大なスケール感のナンバーを、オーケストラの真ん中に立つ指揮者のような身振り手振りで、一人ひとりに届けようとする姿が印象的だった。
地元の仲間と会った途端、故郷の言葉になって話が止まらなくなるような空気感で、ElectricLadyLandでのツアーファイナルについて語り始めた。
「このライブハウスはミュージシャンの夢を踏み出した場所なんです。上の階にある、ell.FITSALLが最初に出たライブハウスで、キャパはここの半分くらい。初めは前4列目ぐらいまでしかお客さんがいなくて、下の階(この日の会場)のライブもモニターで見れるから、“あっちはパンパンに入ってるなぁ…”ってすごく悔しかった。ElectricLadyLandでライブをするのは敷居が高かったから、すごく感慨深い」。
この日の彼は、沸き上がる想いをこらえきれず、言葉や感情がそのままこぼれ落ちるようだった。「未完成ストーリー」ではそんな気持ちが歌に乗って直接届けられるような感覚があり、セットリストが進むにつれ、歌声はよりエモーショナルに、伸びやかになっていく。
「いつかの街へ」を歌う前にはこう述べた。
「死にたい時もあるし、いつまで続けれるのかなって思うこともあるけど、ツアー回って、その街の景色や来てくれる人の笑顔を見て、ファイナルのステージに立つと、やっぱりライブ続けるのいいなぁって、言葉に詰まることがあります。言葉を超えた、得体の知れない感情が血管を巡っている感じ。これは多分、緊張…スリルなんだなって。それを楽しめるようになってきたの。俺は口が達者な所もあるけど、伝わりきらんことがあるから、歌ってきたんだなぁと思います。この街の歌です」。
夕日色の照明にステージが染まり、泥臭いナンバーをまっすぐ響かせる。激しく尖ったイメージのあるASH DA HEROだが、彼の楽曲はこんなやるせない感情やモヤモヤした気持ちに起点していているからこそ、リスナーの心を掴んでいるのだ──そう感じさせるパフォーマンスだった。
今回のツアーでは各会場限定でシングルがリリースされ、名古屋では「Gatekeeper」がそれに当たる。1フレーズずつ噛みしめるようにゆっくり歌い始めたと思ったら、エッジの効いたサウンドで再びギアを加速。ポッケに手を入れて仁王立ちという挑発的なアクションでも、オーディエンスと目線を交わしながら歌う彼の表情は晴れやかだ。ライブも佳境に差し掛かり、こんな言葉をファンに投げかけた。
今回のツアーでは各会場限定でシングルがリリースされ、名古屋では「Gatekeeper」がそれに当たる。1フレーズずつ噛みしめるようにゆっくり歌い始めたと思ったら、エッジの効いたサウンドで再びギアを加速。ポッケに手を入れて仁王立ちという挑発的なアクションでも、オーディエンスと目線を交わしながら歌う彼の表情は晴れやかだ。ライブも佳境に差し掛かり、こんな言葉をファンに投げかけた。
「このツアーを発表したころ、三大都市を制覇するって言って、自信も確信ももちろんあったけど、言葉って魂が乗ると、自分の運命を変える魔法になる。それを今すごく実感してる。運命を変えてくれる仲間との出会いもあったりするから、みんながそんな風に突き進んでもいいなって思える夜になればと思います」。
最高潮のライブもいよいよ終わりに近づくと「ALIVE」でオーディエンスの大合唱がこだまし、その歌声に、バンドメンバーと目を合わせて嬉しそうにはにかみ、天を仰いで感極まった様子のASH。
「世界一美しい歌声をありがとう。来年も、誰も見たことない景色見に行こうな」と語り、本編を渾身の力でやりきった。演奏を終えるとフロアに背を向けてへたりこみ、バックドロップを見つめながら「いいツアーだったな〜…」とポツリ。
温かな拍手の中、「みんなに大切なお知らせがあります」とASH。ドキッとする切り出しだが、「海の向こうからラブコールをいただきまして…」の言葉に場内が一気に色めき立ち、「アジア進出します!」と続けると大歓声。更に、来年ツアーも予定していることを発表。オーディエンスの興奮も冷めやらぬ中、急遽ドロップした「HELLO NO FUTURE」は歌い間違えてしまったが、それもご愛嬌。言いたいことをやっと言えてはしゃぐような無邪気さに、こちらまで笑顔になってしまった。
「ライブをたくさん重ねてきた結果が、アジア進出のきっかけになったと思います。自分の力なんてほんのちょっとで、一人ひとりの愛のおかげです。チケット完売って本当に当たり前じゃなくて。それを当たり前にしていけるような素敵な音楽で、びっくりするような未来を君と一緒に積み上げていきたいので、よろしくお願いします!一緒にアジアに行こうぜ!」と話し終えると、赤いフラッグを突き立ててステージを去ったASH。弱さや迷いと戦いながら、蒔いてきた種が確かに芽を出し始めている──それを体現するASH DA HEROの背中に、この先も期待したくなる夜だった。
取材・文:青木美穂
撮影:aki takeyama
<Information>
rockin’on presents「COUNTDOWN JAPAN 19/20」出演
ASH DA HERO 12/29(日) 12:15〜 ASTRO ARENA
【近日、2020年ツアー発表‼】
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