Awesome City Club、新章の訪れを告げた2マンツアー・ファイナルを振り返る

2020/01/29
Awesome City Club PHOTO by KAZUMICHI KOKEI

Awesome talks -Nice Buddy Tour 2019-  2019.12.24  渋谷WWW X

8月14日のライブをもってベースのマツザカタクミが脱退。その際のコメントに「メンバー未満友達以上の関係が新しく始まります」とあったように、お互いを尊重したリスタートを切った新生Awesome City Club。加えてレーベルの移籍や、PORINが小沢健二のアルバムに参加したり、モリシーが須田景凪やDAOKOのサポートを行うなど、メンバー各々の活動も注目される1年となった。ことさら焦るムードでもなく、しかしサポート・ベーシストを迎えて、本来なら『RISING SUN ROCK FESTIVAL』で新体制初披露の予定だったが、ご存知の通り彼らが出演する初日は残念ながら中止に。しかしその後のフェスで精力的なスタンスを見せ、さらに新しいACCを見せる機会が今回の『Awesome talks-Nice Buddy Tour 2019』の意義だったと思う。11月から全国5カ所6公演の今回のツアーは、それぞれ盟友や敬愛するアーティストを迎えたバンド史上初の2マン・ライブで、各々、雨のパレード、iri、Creepy Nuts、ヤングオオハラ、SARM、bonobosと、ACCの意欲が垣間見えるラインナップ。ツアー・ファイナルとなったクリスマス・イヴにはこの日が初対面だという大先輩・bonobosを迎えた。

黒地に白文字で“Awesome Talks”の文字と男女のイラストを描いたバックドロップがシックなステージ。登場したbonobosのメンバーに、彼らのライブを待望していたと思しきオーディエンスの歓声が上がる。1曲目から容赦なく民話的でありつつ、分厚いアンサンブルに突入していく「三月のプリズム」でフロアを圧倒したかと思えば、暖かさと洒脱を兼ね備えた「Gospel In Terminal」、近年の代表曲「Hello Innocence」、そして思わずサビをシンガロングしクラップしたくなる大らかな「THANK YOU FOR THE MUSIC(Nui!)」など、あとでatagiが「歌に呼ばれる音というか、神聖な感覚さえ覚えて感動した」と言っていた通り、ゆったり横ノリできる洗練された音楽でありつつ、そこに土着の感覚も兼ね備えた演奏はbonobosならでは。深く音楽とともに生を祝うような45分はあっという間に終わった。

転換でステージにお馴染み「ACC」を象った電飾が置かれると、満員のフロアのムードがさらに盛り上がる。ピアノがムーディなSEに乗り、メンバーが登場すると冒頭からatagiとPORINのツインボーカル。リラックスムードの「青春の胸騒ぎ」だが、atagiが「渋谷!元気ですか!?」と煽り、曲の温度が上がるのがわかる。PORINがメインボーカルの「4月のマーチ」では、曲間の彼女の振りも歌詞を表現するような明確なものになって、フロントマンとしてさらに見応えのあるものに。存在しているだけでアイコニックなPORINだが、もっと意思的にパフォームしているのが頼もしい。次の曲が始まるたびにステップを踏み、身体を揺らしたいムードがどんどん大きくなってくるのだが、モリシーの切れ味鋭いカッティングが気持ちいい「アウトサイダー」は、彼のギターももちろん、ユキエのデッド気味なスネアが作り上げるモダンかつ往年のソウルから続く無駄のないビート感に唸る。姿はなかなか見えないユキエだが、ACCの心臓部は間違いなく彼女だ。

Awesome City Club PHOTO by KAZUMICHI KOKEI

Awesome City Club PHOTO by KAZUMICHI KOKEI

ツアーを経てきて、今日この日に集まったファンに今のACCを見せたくて、体感してほしくてたまらないムードがメンバー全員から迸っている。飾らず、でも音楽的にはグッとタフになったバンドの姿が、WWW Xという親密でいられるキャパシティの隅々に届いている印象だ。冒頭から感謝の言葉を何度も発していたatagiだが、MCらしいMCでは「今日は決めてきたことがあって、クリスマスに関するワードを禁止にしようと」と笑わせる。そこからはこのツアーの本気度を証明するような新曲を3連発した。1つ目は現行のR&BテイストをACC流に昇華した感じの曲、そしてモリシーのカッティングが映え、ユキエのドラムにどこかジャズマナーを感じるとともにリズムの進化が明確に伺える2曲目。だが、新曲ということを意識しないぐらい、今ここで鳴っている音とビートにみんな身を任せているようだ。

atagiがファンに「どうですか?」と問いかけると拍手と歓声が自然と返ってくる。ライブで新曲のリアクションを聞くのはバンドにとっても久しぶりで新鮮な体験なのだろう。続いてラテン・テイストのあるイントロだなと思っていたら、地メロは裏打ちでダンサブルなトロピカル・ハウス以降のポップスをバンドサウンドの生音で体現したような、この3曲の中でも最もチャレンジングなナンバーを投下。だが、サビで自然と手が上がってしまう構成の巧みさを持った曲だ。「アンビバレンス」とタイトルされたこのナンバーは同日、ティーザーが公開され、1月15日にデジタルリリースされる。曲そのものの新鮮さももちろんだが、本編11曲のセットリストの中に新曲を3曲入れてくる気概、バンドが前進を止めない気持ちが何よりも雄弁に伝わったブロックだった。

自ずとシンガロングが生まれた「Don’t Think,Feel」で、いよいよフロアが全員参加状態になり、「SUNNY GIRL」で裏打ちのクラップが大きく響き、バンドにエネルギーが注がれていくのがわかるほど一体感が生み出されたフロア。atagiが「最後の曲です!」と発した言葉に重なるように煌くギターリフが鳴り響き、お馴染みの切ない「ラララ」のマイナーメロディが重なると、今日一番の歓声が起こる。「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」だ。クリスマス・イヴにお似合い?それとも……と、ニヤつく選曲でもあるのだが、男女のデュエットとしても、メロディと構成も全てがキャッチーで、PORINの「つまんない」と「うそつき」のセリフにも歓声が上がる。エンディングに向かう「ラララ~ララララララララ~」のリフレインをずっと歌っていたかった。この曲の強さ、そしてACCが止まることはないという安堵がないまぜになった歓喜がフロアを満たす。

アンコールでatagiが、1月から3ヶ月連続デジタルシングルのリリース、そして春頃にはニュー・アルバムのリリースも控えていることを発表。そして今回の2マン・ツアーでたくさんの刺激と影響を受けたと話し、「素晴らしい出会いを曲に乗せて届けたいと思っています」と宣言。自らが選んだチャレンジを栄養にしていくのだな、と心強く思った。「CATCH THE ONE」がラストに演奏されたのも、もうすでに始まっているACCの新章にぴったりだった。


取材・文=石角友香 撮影=KAZUMICHI KOKEI

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