ビッケブランカ、1年越しの全国ツアー『Devil Tour “Promised”』最終公演オフィシャルレポート

2021/04/01
ビッケブランカ

ビッケブランカが3月28日に中野サンプラザで開催した全国ツアー『Devil Tour “Promised”』ファイナル公演のオフィシャルレポートが到着した。


3月28日、中野サンプラザにて、ビッケブランカのツアー『Devil Tour “Promised”』が最終日を迎えた。本ツアーは、およそ1年前に開催予定だった『Tour de Devil 2020』の振り替え公演でもあり、2020年3月に発売されたアルバム『Devil』の収録曲をはじめとする昨年からの新曲がようやく生でお披露目される機会でもある、ファン待望の一日だ。

ステージの中央には一段高い「DEVIL」という電飾の光るDJブースが据えられており、オープニングを飾る「キロン」が始まると、そのDJブースの奥に立つビッケブランカのシルエットが浮かび上がった。続く「Shekebon!」は、思わず縦ノリしたくなるダンスチューンで、カラフルに明滅する照明の中、会場のテンションが一気に上がった。もともとライブ向けの曲だと思っていたけれど、爆音のバンド演奏によって会場を呑み込むような迫力を発揮する。DJブースから降りてステージセンターに飛び出したビッケが軽やかにステップを踏む姿が、さらに場内を盛り上げる
「こんばんは!」と手を振って、そのまま「Golden」、「Slave of Love」へ。色鮮やかなピアノの音色とファルセットが効いたオールディーズな雰囲気の楽曲は、音源で聴く時は口ずさみたくなる心地よさだが、ライブではパワフルさが際立つ仕上がりに。途中の〈no no no〉という部分では何度も煽りを入れ、ステージの端から端まで歩き回りながら拍手を求める仕草をしては会場を沸かせた。飛沫感染防止のため、声援が禁止となっていたこの日のライブだが、ビッケの巧みな煽りによって、コールアンドレスポンスが見事に成立していたのが印象的だった。

改めて挨拶をしたビッケブランカは、「だいぶ待ちましたね」と切り出した。
「1年前にやっていたはずのライブが、ちょうど1年後ろ倒しになりました。やれただけでも嬉しいけど、 1部も2部もソールドアウト。本当に嬉しいです。会場で直接皆さんに会えて、拍手をこうしてもらえる事がどんなに幸せなことか心から伝えたい。本当に今日を楽しみにしていました。」とまじめに感謝を述べた後、いたずらっぽい口調に切り替える。

「みんな大事なことを忘れてると思う。ビッケブランカは愛嬌があるけど、本来はかっこいいミュージシャンだったはずなんです。それを思い出してもらうためにかっこいいパートに入ろうと思います」

そう言って、ライトが赤く明滅するなか勢いよく始まったのは、「Black Rover」。ビッケブランカの楽曲の中でもバンドサウンドの際立つ、疾走感のあるハードロックだ。続いてオクタパッドを軽快に操りながら始まるのは、ビート感が特徴的な「Stray Cat」。ピアノだけでなく、ギター、DJもこなし、MVではダンスを披露するなど、常に意欲的で器用な印象のあるビッケブランカだが、改めてその多才さを感じた。
 


圧巻だったのは「ミラージュ」だ。〈人は弱いんだって言う/人は脆いんだって言う〉や、〈だからダメなんだって思う〉など、人間の本質を突きつけるようなヒリヒリするフレーズが反復されるところが印象的な曲だ。安定感のある歌唱をするビッケブランカだが、これらサビのフレーズでは声を引き絞るような歌声によって、より一層胸に迫った。

2部の夜公演があることを忘れて帰宅する夢を見た、という話題や、「Slave of Love」でお立ち台に立ってギターソロを披露した井手上誠に「あんまり目立たないで」と突っ込んだりと茶目っ気あるトークで会場を笑わせたビッケ。
「次はちゃんと聴いてもらおうかなのゾーン」と言って、ピアノで短いフレーズを弾いて、会場に「なんの曲かわかる?」と問いかける。冬が好きな僕が雪を思って書いた曲です、と紹介するのは、「君」を見守る「僕」を描いたメロディのかわいらしい「白熊」。続いて、3拍子が特徴的な「Lucky Ending」。そして、旋律の美しさ際立つバラード「TARA」。過去の恋心に別れを告げる切ないメロディを、ステージのギリギリに立って情緒たっぷりに歌い上げた。

「(ライブが延期になった間に)取材をされる機会があって、“ライブができなくてどんな気持ちですか?”って何度も聞かれたんです。自分はもともと引きこもってる人間だし、ライブも嫌いだったから、「別に変わらないですね」ってうそぶいてたんですけど、ツアーが始まって、直接こっちを見られながら拍手を送ってもらった時に、できなくてつらいから目を向けないようにしてたんだなと思った。こんなことを言うようになるなんて思ってなかったけど、ライブがないと生きていけないと思いました」

しみじみと語った後、一転して「バラードに集中したから緊張の糸が切れてる」とぶっちゃけて、会場を笑わせた。でもこの後の曲は緊張から解放されてこそ爆発する曲だから、最後ついてきてくださいね、とライブはいよいよクライマックスへ。イントロの2ヴァイオリンが華やかな「Winter Beat」では、勢いよく中央DJブースの方へ駆けあがったかと思うと、「DEVIL」の台の上に飛び乗った。冬の曲というと暗く重たいイメージだが、冬が好きだというビッケブランカの冬ソングは「白熊」しかり、ポップなものが多い。冬の冷たさではなく、一面の雪に光が当たって一層まばゆく輝くところに焦点を当てたような、ワクワクする明るさがある。

続けて、芝居がかったフランス詞で始まる「Ca Va?」に突入すると、観客全体が自然と手を挙げ、飛び跳ねていた。会場を一気にダンスフロアに変えるようなパワーのある曲だ。ビッケが向けて「Ca Va?」と問いかけるたびに、会場が大きく腕を振ってそれに応える。声が出せるライブだったなら、ホールはビッケと観客のご機嫌な声で渦巻いていただろう。そこから「Avalanche」、そしてピンクの照明に照らされた「ウララ」で春満開の幸福な雰囲気に包まれる。最後はビッケがステージ中央で大ジャンプしてみせ、本編が終了となった。

アンコールの拍手に応え、「本編じゃ足りないとおっしゃる!?」とおちゃめに言いながら登場。これまでは本編がメインでアンコールはおまけと思っていたが、今回は自分からやっていきたいと語り、今日この時間をビッケ自身が楽しんでいることを感じさせた。

服装も衣装からオリジナルTシャツに着替え、リラックスした様子のビッケは「DEVIL」の台の上に、今度はごろごろ転がるように乗りあがり、あぐらをかく自由さを発揮。そこから歌いだすのは、3月17日にリリースされたばかりの新曲「ポニーテイル」。冬から春へと季節が移り変わる瞬間を切り取った、爽やかなミドルバラードだ。

「声が出せないとかひと席空いてるとか、嫌なことみたいに言うけど全然そんなことない。みんながこっちを見て拍手をくれるだけで充分幸せ」ともう一度語ったビッケ。最後はバラードの代表作となった「まっしろ」を感情豊かに歌い上げて、この夜を締めくくった。

この日、MCで何度もライブができる喜び、リスナーに直接対面できる喜びを繰り返し口にしていたビッケ。「DEVIL」の上に寝転んだり、会場に絡みにいっては笑い声を起こしたりと、存分に楽しんでいる姿が印象的だった。
本人も語っていたように、現在の情勢下で開催されるライブは、どうしても観客側が声が出せないなどの制限がある。だが、遊び心あるトークや仕草で常に会場へのボールの投げかけを続けるビッケブランカのライブは、客席とステージとのコミュニケーションを見事に成立させていて、息苦しい制限があることなど感じさせなかった。「充分幸せ」と言えるライブになったのは、観客たちを引っぱり上げるようなビッケブランカ自身の細やかなエスコートがあったからだろう。「ウララ」に入る時にビッケブランカが告げた「またすぐに会える」という言葉を楽しみに、また彼に直接拍手を送るその日を待ちたい。

文責=満島エリオ 撮影=Taku Fujii

 

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