2026/02/28 (土) 19:30 開演

@渋谷Body & Soul (東京都)

[ゲスト] 中川喜弘 / 本田雅人

中川就登(Keyboards)
納浩一(Bass)
高橋信之介(Drums)

Guests
中川喜弘(Trumpet)
本田雅人(Saxophone)

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ライブレビュー (1件)

5.0

中川就登さんの初ソロ・ライブに行ってきました。ピアノは中川就登さん、ベース納浩一さん、ドラム高橋信之介さんから成るトリオ編成。 静かな期待が満ちるなか、一曲目の美しい和音と繊細な響き(「Passing on」)から幕が開きました。軽やかでリズミカルでありながら、どこか淋しくも走り出すような、勇気ある感情を呼び起こす音色。ふと足元に目を向ければ、就登くんの左足が踊るように自在にリズムを刻んでいました。個々の音が重なり、三つのパートはやがて溶け合い、ひとつの大きな「波」へと変わっていくようでした。 続く二曲目、「Just a flower」。流れるような、春の訪れを予感させる優しく美しい旋律。 自然に口ずさむような軽快さで、指先から繰り出されるメロディには心が震えました。聴いていると、光あふれる陽だまりのような温かなイメージが広がります。演者たちのアイコンタクトもしっかりと、ベースの音がピアノとドラムの間に寄り添い、音程とリズムの「影」となって両者を繋いでいく。その調和が美しかったです。 三曲目の「Lucky Boy」は、軽やかな足取りを思い起こすような曲調。ベースの音が街の地図を描くように先導し、その上をピアノが心模様を細やかに描写していくかのよう。音楽が進むにつれ、心象風景の空が伸びやかに広がっていくのを感じました。 そして、ミステリアスなベースの響きに誘われ始まったのは、あの名曲「RYDEEN」。 繊細な和音と細やかな震えを纏い、ゆったりとした時間のなかで旋律が舞います。「こう来るか」と思わせる遊び心たっぷりの余白。そこにゲストの本田雅人さんのサックスが登場しました。冴えわたるメロディを、ピアノが喜びをもって迎え入れ、つややかに包み込む。それはまるで、私のなかに浮かぶ思考の軌跡を、音が優しくなぞってくれるかのようでした。 「You move」では一変して、ラテン的な熱を帯びたアップテンポ。本田さんがサックスをフルートに持ち替えると、情熱的な深紅のバラが咲き誇るような、鮮やかなイメージが浮かびます。駆け上がるようなピアノの和音に、胸が高鳴りました。 次は、ピアノ・ソロによる「Empty」。 やさしく、どこか懐かしい響き。揺れるさざ波のような旋律が、クレッシェンドと共に広がりを見せていく。それは木漏れ日のようでもあり、あるいは水平線の向こうへと続いていく遠い海へ、広い場所へと解き放たれるような開放感ある展開でした。 第一部の締めくくりは、「Midnight in Tokyo」。 力強い音から感じるうねりの中で、私はあることに気づかされました。 これは、ここから人生が二倍にも三倍にも広がっていく、若いひとの放つ音なのだと。 その瑞々しいエネルギーに、これからの希望を感じました。 休憩を終え、第二部の幕開けは「Bourbon Street Parade」。 マーチ調のドラムが鳴り響くなか、中川就登さんのお祖父様であり、日本ジャズ界の重鎮であるトランペッター・中川善弘氏が登場。トランペットの勇壮な響きのみならず、その身の引き締まるような歌声は会場の空気を一気に引きつけ、続くスキャットへの鮮やかな切り替えもお見事でした。 その熱量のまま「When the Saints Go Marching In(聖者の行進)」へ。 スウィングするリズムに乗って、会場は古き良きアメリカ・ジャズの黄金期を彷彿とさせる悦びに満たされていきます。 しかし、音楽の旅は次の「Pursuit」で一転。都会的で洗練された旋律が走り出し、本田さんが再登場。スリリングで冴えわたるセッションが繰り広げられました。 そして、アレンジが何とも秀逸な「Akatombo(赤とんぼ)」。 ここでふっと本田さんが手にしたのは、リコーダーでした。だが、そのシンプルな楽器からひとたび音が放たれれば、その切れ味は一般の「リコーダー」のイメージを根底から覆すもので……。同じ楽器とは思えないほどの曲芸的な技巧、そして箇所によってはフルートを思わせるような柔らかな音色の幅。 本田さんの圧倒的な演奏技術が、一段と際立っていました。 色彩ゆたかな夕焼けのイメージ、日没の味わい深い時間を、これ以上ないほど豊かに魅せてもらう響きでした。 続いては、うねるようなグルーヴが心地よい「Megalith(メガリス)」。 この曲を演奏している時の就登さんは、本当に楽しそうでした。この曲の作り手でもある本田さんのほうを向いて深く頷き、のびのびと、自らの内に秘めた様々な「手札」を次々と出していく。共演を通じ、この楽曲に対する深い愛が客席まで真っ直ぐに伝わってきました。 本編最後は、デキシースタイルの「On the Sunny Side of the Street」。 ボーカルに寄り添うサックスの音色を聴きながら、管楽器というものはこれほどまでに「歌」に近く、まるで会話をしているかのような親密さを持っているのだと改めて感じ入りました。 鳴り止まない拍手に応えたアンコールは、再びの「Midnight in Tokyo」。 第一部での熱量とはまた違う、しっとりとした、どこか心地よい響きでした。 全編を通して、音の一つひとつに深く集中して耳を傾けることで、いつの間にか私の心は、日常の耳障りな雑音から清らかに洗い流されていて。会場を後にする私の内側には、豊かな余韻が残りました。 大変すばらしい演奏を、ありがとうございました。 中川就登さんのこれからのご活動、続きが楽しみです。

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