須藤晃プロデューサーとの会話

プロデューサーの須藤晃さん(浜田省吾、尾崎豊、玉置浩二らを担当)から何かアドバイスはありましたか?

「話せ!」って言われました。これまで、須藤さんはMCするなってタイプだったんです。でも、さっきもラジオ番組で話してたんですけど、弾き語りとなると無口で淡々とやられても困るじゃないですか? ライブの雰囲気、会場の雰囲気を変えるのがMCなんですよね。

どんなお話をされてるんですか。

たとえばその県の、おっぱいの大きさについて話すとか(苦笑)。そういう他愛もないことですね。全国的なデータがあって、それを事前に調べて……っていうMCとか。そのMCが1番手ごたえありました。

その土地土地の美味しいものも食べられたり?

そうなんですよ。でも以前のツアーの時、エンゲル係数が高いということになって。今回のツアーはエンゲル係数を下げようとしたんですけど、ふたを開けたらめちゃめちゃ食ってましたね。無理ですね(苦笑)。神戸で食べたモンゴルよりの中華のラムの串焼きとか。岡山に吉田類大先生(酒場ライター)が通っている居酒屋があったりして。おでんとか美味しくて。基本的に僕が決めるんですよ。サイトをチェックして。ライブが終わってお腹が空きますからね。

お客さんとの距離感ってどんな感じなんですか?

弾き語りって生々しいものだと思うんですけど、それはこっちが緊張感を作ると、一気に会場も緊張感で包まれるんです。僕はその緊張感に負けて一気にダメになることがあるので、それに負けないようにしたいなと。それくらい、気持ちが伝染するのが早いんです。MCとかもね。だから雰囲気は、ちゃんとこう意識してないといけないなって。雰囲気を人任せにしちゃいけないなって思いましたね。

この曲をやると雰囲気が変わるって曲はありますか?

そうですね。楽し気な曲よりも「ナイトミルク」って曲だったり。すごい集中して歌うような曲をやるとかなり空気が変わる気がしますね。

誰も言えないような表現で、ポピュラーになれ

バンド・スタイルとなる12月の『鬼退治』ツアーは、どんなライブになりそうですか?

いまが弾き語りの集大成的なライブなので、『鬼退治』はそのバンド・ヴァージョンって感じで考えてます。まだセットリストは考えてないんですけど、弾き語りでけっこう歌を聞かせに行ってるので、身体を動かしたり感情を開放したいっていうお客さんもいるかもなって。なんていうか、あまりお客さんが集中力を使わないでも楽しめるようなライブにしたいですね。

『鬼退治』のステージ・セットなどのイメージは?

これからですね。『鬼退治』が終わっても次があるので、続けていくことができたらいいなと。

3rdアルバム『アタラズモトオカラズ』はターニング・ポイントとなる作品だったと思います。そこからいま手探りで探してる感じなんですかね。

そう、けっこうそうです。ライブを通じて、次が見えてきたらいいなって。

『アタラズモトオカラズ』は、最初に聴いた時はけっこうインパクトがあって。でも、何度も聴いているとひゅーいさんらしいなって思えてきて。今ってJ-POP感っていうか、お客さんに伝わりやすくするためのフォーマットが成熟している音楽業界だと思うんですけど、そういう枠組みからちょっとだけ外れた作品なのかなって。

須藤さんがプロデューサーとしてがっつり入ったっていうのがわりと大きいんです。誰も言えないような表現で、ポピュラーになれってことなんですね。確かに大切な考えだなって思って。それなので、僕の中の感覚と須藤さんの感覚を混ぜたような作品になったと思いますね。

過去のアルバム2作は須藤さんは、あまり関わられていないんですか?

エグゼクティヴ・プロデューサーですね。がっつり参加していただいたのは『アタラズモトオカラズ』から。

刺激を受けましたか?

めちゃめちゃありましたね。決断が速いので。そのスピード感にしがみつくのも大変だったし、それを修行と思いながら楽しめながらできたと思ったし、もうちょっとこうできたかなっていうのもあったし。

バンドastrcoast時代のナンバー「サヨナラワンダー」が、アレンジが変わって収録されているのも驚きました。

僕は最初はしぶったんですけどね。やだって。恥ずかしいから。でも、須藤さんがいい曲だからって(笑)。須藤さんとのやりとりは面白いですね。誰よりもアーティストな人なので。

ひゅーいさんもめちゃめちゃアーティストな方じゃないですか?

と、見せかけてる(笑)。いや、けっこう僕は、どっちかっていうとバランスをとるタイプなんですよ。人間ってみんなバランスをとって生きていると思うんですけど、でも、それだけではいかんなぁとも思っています。

ああ、そういうところが作品にもあらわれてますよね。ぶっとんでるところと親しみが感じられるところ。ファンタジーとリアル。サウンド・プロデューサーであるTOMI YOさんのトラックもどんどん面白くなってるなぁと思うんですけど、その辺はお話されたり?

そうですね。基本、最初にこんな感じって話をしたら、TOMI YOさんが間違いない感じで仕上げてくれるんです。

ツアー『鬼退治』にはTOMI YOさんも?

やってくれると思います。音作りも楽しみですね。『アタラズモトオカラズ』がけっこうフォークよりなので、バンド・サウンドってなると、どうなるのかなって。

2017年の日本の“いま”

なるほど、ツアー『鬼退治』をとても楽しみにしてます。ちなみに、最後に世間話ですが2017年の日本の“いま”をどのように見てますか?

う〜ん、なんか閉鎖的ですよね。どんどん閉鎖的になってる感じがします。だから、みんなエンターテインメントに求めるものが簡単なものになりがちで。でも、みんな疲れているからしょうがない。僕もわかるんですよ。いろいろ考えるのが嫌になるっていうか。そういう時代なんだろうなって……。でも、そんな時代に自分だけの言葉で何をぶち込めばいいかっていうことをいつも考えています。

『アタラズモトオカラズ』という作品の存在意義へと通じていますね。

そうだったらいいんですけどね。

2017年9月21日@祐天寺にて

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