ステージとフロアでバチバチの肉弾戦を繰り広げつつも、それだけに終始しないところにHYDEの真骨頂がある。それはヘヴィネスをとことん極めたロックに特化しながらも豊かなバリエーションを有した音楽性や、どんなにこだわりを詰め込もうとポピュラリティをないがしろにしないアーティストとしての彼の姿勢にも通じる特性だろう。徹頭徹尾、アグレッシヴなアティテュードを保ったうえでエンターテインメント性をも寄り添わせるのがHYDEのHYDEたる所以。彼のサービス精神と言い換えてもいいかもしれない。それが存分に発揮されたのは後半戦もたけなわとなった「ANOTHER MOMENT」になだれ込んでのこと。やにわにステージから姿を消したと思いきや、2階のキャットウォークに出現。1階のスタンディングフロアを見下ろしつつ、全員をその場に座らせ「3、2、1!」の合図で一斉にジャンプするという恒例のムーブをキメさせたあと、なんとそのまま指定席となっている2階席に現れたのだ。通路をゆっくりと往復しながらエモーショナルな世界観を艶やかに歌い上げるHYDE、思わぬ至近距離のサプライズにファンの絶叫がやまない。

再びステージに戻ってからもスリップノットのカヴァー「DUALITY」でスチールのバレル(樽)を金属バットでめったうちにするパフォーマンスでオーディエンスを沸かせ、また、HYDEがヴォーカリストを務める大型新人バンド・THE LAST ROCKSTARSのライヴでも演奏したことで話題を呼んだ「6or9」では本人手ずからの指導で客席との見事なコール&レスポンスを成功させるなど誰ひとり置いてきぼりにすることなく極上の一体感をZepp Haneda(TOKYO)に築き上げてゆくその手腕に舌を巻かずにはいられなかった。

「ホント帰ってきた感じがするよ。ヤバいね、アガる! その調子で全力でかかってきてください。俺も明日のことなんか気にしてないから、おまえらも日和るんじゃねーぞ! よし、新しい曲、いってみようか」

残すところ2曲と迫ったところでまっさらな未発表の新曲を叩きつけてくるとは、なんという豪胆か。「I GOT 666(仮)」とタイトルコールされたその曲はしかも攻めの楽曲揃いだったこの日のセットリストのなかでも指折りのヘヴィな1曲だ。きっとツアーを通して鍛え上げられ、さらに殺傷力を増した文字通りのキラーチューンに育っていくのだろう。ラストはもはやカオスの極みとしか言いようがなかった。シンバルをスタンドごと振り回しただけでは飽き足らずドラムセットまで破壊しにかかり、メンバーも一緒になって猛りに猛った。最後の最後はドラム台に上がり、“えいやっ”とばかりに高々とジャンプ。いくつもの投げキスを残して揚々とHYDEはそのステージを降りた。初日にしてクライマックスにも匹敵する昂揚、この先に待つ“それ以上”を想像するだにそら恐ろしくなる。

8月まで全国6都市18公演に及ぶ“HYDE LIVE 2023”、加えて9月9日、10日には千葉県・幕張メッセイベントホールにて追加公演“HYDE LIVE 2023 Presented by Rakuten NFT”も発表された。まだHYDEの熱に触れたことのないあなたにこそぜひ、その真髄を味わってほしい。なお、今回のツアーでは2階席に限りスマートフォンおよびタブレットでの撮影が許可されており、現在SNSでは続々と投稿がなされている。まずは熱狂の一端を覗いてみてはいかがだろうか。

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