ほのかりん
ロングインタビュー

『LOVE ME TENDER』を一聴してまず感じたのは、引き出しの多さと振り幅の広さでした。

えー、ありがとうございます!

これまで配信で4曲、立て続けにリリースされてきて、ついにアルバムが世に出るわけですが、これまでどんなことを感じながら過ごしてきましたか。

やっとアルバムが完成して、もうすごい量のアウトプットをしたなって。今まではずっと溜まっていたものがあったから、それが頭の中に文字で浮かんだのに、「あ、全然浮かばない」っていうモードになっちゃって、ひたすらにインプットをしてました。本を読んだり動画を観たり、出かけたことのないところに行ったりとか、カフェで人間観察をしたりとか。……アルバムに特典でショートストーリーみたいなものを付けたんですよ、10曲とひとつ、オリジナルストーリーを。そのアウトプットが恐ろしいくらい大変だったんです。

今までの人生においても、そこまでいろいろと吸収しようとしたことはなかったですか。

普段は勝手に吸収していくじゃないですか、ちょっとずつ。それを全部出してしまったので(笑)、どうしましょう?っていう感じでしたね。

自分が吸収したものをなんらかの形でアウトプットしたいっていう欲は、こういう活動をする前からもともとあったんですか?

ありました。わたし、ずーっとブログをやっていて、12歳からやってたんですよ。だからアウトプットの形が少し変わっただけですね。もともと歌は好きだし、3歳のときにピアノを始めて、中学からはギターを始めました。

そこからバンドをやりたいと?

いや、それが全然思わなくて。なんでかわからないんですけど。なんか、持て余してましたね(笑)。ひとりで練習するっていう。ただ弾き語っていたいっていうだけだったんですよ。今思うと「バンドやりたい」って思考もあったなって思いますけど。

でも歌は歌っていたんですね。

歌ってました。以前一緒にやっていたガールズバンド(コムシコムサ)ではギターだったんですけど、企画で集まったバンドだったので、6人中6人が全員歌いたいって言い出したんですよ。で、とりあえずできる楽器を持とうよってなったんですけど、コーラスが無駄に多いっていう(笑)。

そこから歌以外の活動もされてきて、今回こうやって本格的にシンガー・ソングライターとしてデビューするというのは、どんな感覚なんですか?

バンドを辞めて「じゃあ一人でやってみたら?」って言われたときに初めて「あ、一人でやる手がありましたね!」ってなったんですよ。それまでは本当になぜかわからないんですけど、一人でやるっていう方法が思い浮かばなくて。

「やってみよう」ってなってからはすんなり行ったんですか?

不思議なことに。ここまで1年くらい経つけど、パッと押されただけでここまで転がってきちゃったみたいな期間でした。前のバンドのときは作詞しかしてなかったし、曲は元から作ってたんですけど、恥ずかしくて聴かせられなくて、誰にも聴かせることなく終わるんだろうと思ってました。

「メロンソーダ」を初めて世に出したのが、だいたい半年前。そのときはどんな感想を持ちました?

めっちゃ恥ずかしかったです、本当に。音楽関係の友達が多いから、「音楽始めたんだよね」ってワッと言ってきてくれたんですけど、「もう聴かないで! 恥ずかしすぎる!」みたいな(笑)。

歌詞も結構赤裸々ですからねぇ。

(笑)。そうなんですよね。でもこれ、今でもたまに聴くと良い曲だなって思います。感情がすごい前に出てるなって思う。

そこを出発点に今回のアルバムに至るんですけど、収録曲自体は昔からあった曲も含まれてますか?

「メロンソーダ」が一番古くて、「東京」とかもそうですね。最近作ったものでいったら、「夢裡」か「ふわふわ」かな。

──作品として振り幅が本当に大きくて。一言でシンガー・ソングライターといっても、たとえばほのぼのしたタイプとか、内面と向き合って心情を吐き出すタイプの人とか、いろいろなタイプがいますけど、りんさんは良い意味でカテゴライズしにくいというか。

自分でも思いました。演歌からアイドルまで好きな曲があって、まずわたしの好きなカテゴリがないのかもしれないですね。昭和歌謡も好きだし、ギターをジャカジャカやるのも好きだし。今回のアルバムはすごくワガママなアルバムで、好きなことをやらせてもらいました!(笑)。

そのバリエーション豊かな楽曲を一つにまとめるにあたっては、どういう芯を置くか、どんな作品にしたいとか、構想はあったんですか?

曲ができればできるほど、歌詞に“愛”が入ってない歌が一つもなかったんですよ。じゃあこれはもう、愛をテーマのアルバムにしようかなって思ったら、“LOVE ME TENDER”っていう言葉を思いついて、これはしっかり愛で固めていこうと。

愛といっても、いろいろな愛があるじゃないですか。友情みたいなものとか親子愛とか。その中でも今作は恋愛が多いですよね。

そうですね。「夏好きの君」は友達に書いた曲だから、この子だけ過去形じゃない愛っていうか。あとは全部、“愛してた系”なんだけど。

そこに女子のリアルを感じました。世代的なものも含め。

本当ですか!

曲ごとに主人公というか、色んなキャラクターも感じるんですけど、基本的にはご自身が投影されていたりします?

えっと、自分から見た愛の方が多いですけど、逆側になりきって書くこともあって。「Envy」とかはそうですね。相手目線からわたしを見る方の曲。第3者が主人公の曲はまだなくて、全部自分の対人関係の中からっていう感じかもしれないですね。

そこからこれほどの愛が描けるのは、たしかにすごいアウトプットしましたねえ。

本当ですか、うれしい!

逆に、愛以外のテーマを曲にしてみたいという気持ちはあります?

作りたい気持ちはありますけど、どちらにせよ愛を絡めてしまうんじゃないかなって思う。違うことを歌っていても、表面的には愛を歌っているように聞こえる曲が好きなので。もう、物心がついたときから、それしかテーマがないんですよね。友情にも嫉妬するタイプなので、もうズブズブなんです(笑)。

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