LUNA SEAとの深い絆でつながった、ジャンルやカテゴリーを超えたアーティストたちの共演『LUNATIC FEST. 2018』レポート（2日目）
2018/07/02
LUNATIC FEST. 2018
2018.6.24（DAY 2） 幕張メッセ
THE ORAL CIGARETTES『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
2日目の6月24日。トップバッターとしてLUNACYが昨日と同じようにフェスのホストとして暗闇と狂気を場内に充満させて登場し、オープニングを盛り上げた後、続いて現れたのは、SUGIZOに声をかけられてルナフェス初出演が叶ったTHE ORAL CIGARETTES。ダークファンタジーの世界観を巻き舌でシャウトして歌う山中拓也（Vo&Gt）は「やっとここに立てました。僕は小学校の頃からずっとこの界隈の音楽を聴いてきて」といって、涙ぐみながらこのシーンに対する思いを激白。フロアからそれを讃える拍手が沸き起こると、その観客たちを巻き込み「狂乱Hey kids!!」、「BLACK MEMORY」とシンガロングで大いに盛り上がった。
OLDCODEX『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
続いて登場したOLDCODEXは「俺たちはライブバンドとライブペインティングをドッキングさせた珍しいバンドです」とTA_2（Vo）が自己紹介。ヘヴィなサウンドとアートを同時に描いていく独創的なライブで見るものをを引きつけていき「俺たちがピンチのとき、一人の先輩が手を引っ張ってくれました」といってINORANを呼び込み、INORANが作曲＆プロデュースした「HEAVEN」を一緒にプレイ。曲が終わる頃には、上手のペイントボードに“THANK YOU INORAN”という文字を描きあげ、観客を驚かせた。
lynch.『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
葉月（Vo）の色っぽい歌声でLUNA SEAの「SLAVE」をカバーしたlynch.は、彼らがベース不在だったときにレコーディングに参加したJが明徳（Ba）と一緒に「TRIGGER」を弾き、法被を着て集結していたlynch.ファンを感涙させた。すると、葉月が「SLAVEのみなさん、年下の男は嫌いですか？ 僕たちと浮気しませんか？ やらせてくれませんか」と観客たちをたっぷり誘惑したあと「GALLOWS」で集まったSLAVEたちみんなを見事、虜にしていった。
MUCC『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
先日、3カ月間の“有期限活動休止”から復活したばかりのMUCCは、スポーティーな衣装、楽曲ともに復活後の最新のMUCCを準備して登場。スピードメタル「KILLER」でド迫力のサウンドを聴かせたと思ったら、次はMUCCのなかでも広大な大地に儚げなメロディが広がっていく「ハイデ」で、人々の心に花束を添えていった。
「こんな多幸感に満たされた空間で終わるわけねぇだろ。その首全部よこせ！」と逹瑯（Vo）が毒づき、キラーチューン「蘭鋳」が始まると、夢烏（ムッカー/MUCCファンの呼称）たちが一斉にヘドバン。ステージ前方に激しいダイブ、モッシュを巻き起こし、オーディエンスを熱狂させていった。サウンドは常に変わり続けながらも、ステージに立ったときの圧倒的存在感は変わらない、そんなMUCCを見せつけた後に、今回のルナフェスのラインアップで大注目を集めた大黒摩季がいよいよ登場!!
大黒摩季『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
大黒摩季『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
真矢を筆頭にしたバックバンド＆コーラスを従え、「SLAVE、カモーン!」と叫び、大黒は「熱くなれ」や「チョット」とヒット曲を連発。LUNA SEAの最新アルバム『LUV』の収録曲3曲でコーラスを担当したお陰で「カラオケでRYUちゃんそっくりに歌える自信があります」とトークでもSLAVEたちのハートをがっちりつかみ「今日はツイッターで集めたリクエスト曲しかやりません」と宣言。
後半も「夏が来る」などのヒット曲でメッセを夏ムードに染めていった。そして「大黒摩季、箸休めになりましたか？ 記念にこの曲をやりませんか？」といって最後はJ-POPを代表するヒット曲「ら・ら・ら」でオーディエンスを大合唱へと導いていった大黒。説得力ある歌声、ヒット曲、つかみのMC運びまで、すべてキャリアを裏付けするようなプロフェッショナルなステージングで、ルナフェスに一体感ある空間を作り上げてみせた。
AA=『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
そのあと、ベートーヴェンの「第九」で有名な「歓喜の歌」のリミックスのSEを大爆音で鳴らしながら姿を現したのは、上田剛士のソロプロジェクト、AA=。サンプラーを自ら操り、まずはこの日集まったオーディエンスとコンタクト。そこで観客の感触をつかんだあとは「大合唱楽しかった！ 俺も歌っちゃったし（笑）。ちょっとやかましいですけど、よかったら俺らも楽しんでって下さい」と挨拶。
そうして「2010 DIGitoTALism」が始まると、メッセの空気は一転。エレクトロ、ハードコア、パンク、ヘヴィネスが渦巻くカオスなサウンドが爆裂。緩んだ脳内を激しく刺激していく。そして「絡みづらいAA= に飛び入り参加してくれるヤツがいます。LUNA SEAってバンドやってます。J！」という紹介で、最後はJとともに「FREEDOM」をプレイすると猛者たちが勢いよくダイブしていった。
BRAHMAN『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
続いて登場したのはBRAHMAN。SUGIZOをフィーチャーした「初期衝動」でライブを始めると「大事なのはここ、ルナフェスだ」とTOSHI-LOW（Vo）が言い放ち、エスニックなフレーズを入れ込んだ独自のハードコアを連発。「警醒」でTOSHI-LOWがタフな猛者たちが激しくモッシュする場所めがけて飛び込み、観客にもみくちゃにされながらファンの上に仁王立ちして反原発のメッセージを伝える映像とともに「鼎の問」を熱唱。孤高のサウンド、パフォーマンスで観客の魂を激しく揺さぶっていった。
さらに観客の上に立ったまま「ざわざわするじゃん。俺たちの時代、“都市伝説”で存在しないっていわれてた大黒摩季がすげーパワフルに存在してて」とおどけながらも「ざわざわするじゃん。俺だって分かってるよ。今日のメンツのなかで異物感ぐらい感じてるよ。でも、出ろっていわれたんだもん」と続けた。そうしてTOSHI-LOWはこの日、SLAVEを踏みつけてもいいとLUNA SEAに事前に許可をとっていたことを告白。「でも、タイムテーブル見たら、俺が踏んづけたの、YOSHIKI待ちのファンだったかも」といって観客を笑わせた。
BRAHMAN『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
そのあと、いまから4～5年前にSUGIZOと福島で語り合ったこと、そこで酔った勢いで「東北にライブハウス（石巻BLUE RESISTANCE）を作ったので、あなたには小さすぎるかもしれないけど、いつか出てくれませんか？」と尋ねたら二つ返事でSUGIZOは「いいよ」といって、本当にX JAPANでライブに来てくれたエピソードを熱く語りかけていると、ステージではSUGIZOがバイオリンを奏で始めた。そうして「満月の夕」を情感たっぷりにTOSHI-LOWが歌い上げていったシーンは、この日の名演の一つ。集まった観客全員の心を震わせていった。
LOUDNESS『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
フェスもいよいよ終盤戦に突入。このあとは、X JAPANのTAIJI(Ba)も在籍し、日本のハードロック、ヘヴィメタルが海外進出する始まりとなった重鎮・LOUDNESSがルナフェスに降臨。「みんな元気ですか？ このなかには初めましての人もたくさんいるのかな。どうも、LOUDNESSです。このフェスに呼んでいただいて感謝しています」と二井原実（Vo）が挨拶をしたあとは、最新曲からその当時からのLOUDNESS代表曲「CRAZY NIGHT」、「IN THE MIRROR」、「CRAZY DOCTOR」を次々とパフォーマンス。最後にスピードチューン「S.D.I」が始まると、高崎晃（Gt）が両手を使ったタッピングでいまも変わらない超絶プレイを披露。強烈なインパクトを残してステージを後にした。
YOSHIKI『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
次に登場したYOSHIKI（X JAPAN）は、バンドでの出演が叶わず、クラシカルスタイルのソロでルナフェスに出演。弦楽四重奏団とともに、クリスタルピアノでLUNA SEAの登場SEとしてもおなじみのベートヴェンの「MOONLIGHT SONATA（月光）」を演奏。続いて、ビジョンには映画『WE ARE X』と、ドキュメンタリー映画hide 20th Memorial Project Film『HURRY GO ROUND』が流れだし、hideの映画製作時に発見された未発表のボーカル音源とYOSHIKIのピアノにより「HURRYGO ROUND」を生コラボ。
次いでX JAPANの「SAY ANYTHING」はSUGIZOがバイオリン、TERUがボーカルで共演をはたすと、YOSHIKIが「この3人の組み合わせは初だね」といいながら、TERUに向かって「昨日も今日も（ルナフェスに）出て。明日も来るの？」と尋ね、「そんなことぶっ込んでくる人、他にいないですよ（苦笑）」とYOSHIKIのボケにツッコミを入れ、みんなの笑いを誘った。
続けてゲストボーカルのアシュリー・ナイトが「ヨシキハムテキ」「マクハリアツイ」と片言の日本語で伝えたあと、壮厳な「MIRACLE」をプレイ。続いて、RYUICHIが登場して「KURENAI（紅）」を歌うと「さすがだね！ RYUは歌うまいね～」とYOSHIKIが讃えた。
YOSHIKI『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
そうして、このあとはRYUICHI、SUGIZO、TERUに加えてMUCCから逹瑯とミヤがステージに呼ばれる。すると、YOSHIKIが会場からその場でリクエストを募り、出てきたのがまさかの「X」で、「アコースティックだよ？」といいながらも「俺たち“無敵”だから」といってSUGIZOにキー決めなどを丸投げ（笑）。そうして「クラシックのはずだったのに～」とぶつぶついっていると、横にいたRYUICHIに耳打ちされ「そういえばお腹減ったな～」とYOSHIKI。すると、真矢がラーメン屋“天雷軒”の岡持ちをもって現れるというコントには、場内も大爆笑。みんなでアコースティック版の「X」を披露したあと「やっぱり仲間っていいね」とつぶやいたYOSHIKI。
このあと、いまでも大事な仲間であるTAIJIやhideの声に心のなかで励まされていると話し、「次はその親愛なるTAIJI とhideに捧げます」といって「WITHOUT YOU」を演奏しだすと、場内のあちこちからすすり泣く音が聞こえてきた。そこから壮大な「ART OF LIFE」で見るものを圧倒したあと、ミラーボールが回る中、最後は「ENDLESS RAIN」でオーディエンス一丸となって大合唱。「僕の大親友のLUNA SEAのステージが次に待っているので、そのエネルギーでLUNA SEAのステージを盛り上げようぜ！」といって「WE ARE！」「X！」のコール＆レスポンスで気合いを入れ、LUNA SEAに熱い気持ちを引き継いだ。
YOSHIKI、RYUICHI、TERU、逹瑯、SUGIZO、ミヤ『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
2日目、ルナフェスの最後を締めくくったのは、もちろんLUNA SEA。最初に出てくるはずのSUGIZOが姿を見せない。INORANはアコギを持って登場。RYUICHIがセンターに構え、両手を広げたところで上手でSUGIZOがトリプルネックのギターを構える。聴こえてきたのは、まさかの「LOVELESS」。彼らが重要なライブの1曲目にかならず演奏してきたLUNA SEA史上最強のオープニングナンバーに、SLAVEたちは悲鳴をあげて大興奮。
音を丁寧にレイヤーさせ、幻想的で美しい音空間を作り上げたあと、2曲目でその緊張感を解き放つように勢いよく「ROSIER」を投下。冒頭からキラーチューンをプレイするという珍しい攻めのパターンに、これまた場内が湧く。Jのマイクスタンド投げ、間奏でSUGIZOとRYUICHIがセンターで向き合うシーンなど気迫溢れるプレイで、オーディエンスのテンションは一気にマックスまでのぼりつめた。
LUNA SEA『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
RYUICHIはこの2日間を振り返り「みんなのお陰で刺激的な2日間になってます。みんなが馴れ合いじゃなく、本気でやってくれるから、めちゃくちゃ気持ちがキュンとする。いいね、フェスって」と感想を伝えた。そうして「幕張、まだやれんのかー！」と煽ったあと「Dejavu」へ。サビでは観客たちが息のあったジャンプを見せ、曲のエンディングでは「お前たちの声を聞かせてくれ！」とRYUICHIがシンガロングを求めると、オーディエンスが一丸となった大合唱が場内を満たす。
Jが真矢のドラム台に近づいていって始まった「誓い文」ではフロアにハンドクラップが広がり、勢いよく炎が吹き上がるなかで「Sweetest Coma Again」をプレイすると、間奏でJがベースソロを弾きだすと大歓声が起こり、観客たちは拳をつき上げ、フロアには自然とoiコールが広がっていった。
「LUNA SEAは来年30周年。もし次に生まれる作品があるとしたら、そこにはみんなの熱、声も入ってると思います」とRYUICHIが告げ、歓声が上がるなか、続いて天空の彼方までかけあがっていくギターが印象的な「IN SILENCE」のイントロが聞こえてくると、オーディエンスはさらに熱狂！ ここでは、RYUICHIがものすごいロングトーンで“ウォー”と連呼して歌の凄さを見せつけ、そのあとはSUGIZOのバイオリンから「Providence」を久々にパフォーマンス。
LUNA SEA『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
続いて、X JAPANの「Forever Love」を奏でるピアノが聞こえてきたと思ったら、舞台の下からピアノを弾くYOSHIKIがせり上がってきて、「I for You」をYOSHIKIの伴奏でRYUICHIが歌いだし、２番からバンドイン。ギターソロの間奏はYOSHIKIがピアノで担当するなど、この日しか見られないスペシャルアレンジバージョンで「I for You」をパフォーマンス。30年来の大親友であっても、YOSHIKIがLUNA SEAのステージで共演するのは「これが初です。だから、胸が熱くなりました」とRYUICHIが感想を伝えると、YOSHIKIが「X JAPANは僕の人生だけど、LUNA SEAも僕の人生の一部だから」といってメンバーを感激させた。
たまらずSUGIZOが「（東京ドームでYOSHIKIとGLAYが共演したときの）TAKUROの真似して抱きしめてもいいですか？」といってYOSHIKIとハグを交わすと、RYUICHIが「全員したいんですよ」といって真矢、RYUICHI、J、INORANが次々とYOSHIKIと熱い抱擁を交わしていった。YOSHIKIは「みんなとハグできてラッキー！ 俺、LUNA SEAに入ろうかな」と笑顔でジョークを飛ばしながらも、最後は観客に向かって「みんな、LUNA SEAを頼むね」と伝えて舞台を後にした。
LUNA SEA『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
そんな心温まる光景の後に始まった「BLACK AND BLUE」から、そこにはいままでのLUNA SEA単独公演でも味わったことがない天国のような空間が広がった。「PRECIOS...」、「TONIGHT」、「WISH」と向かっていったフィナーレで、メッセのなかはどんどんきらめきを増し、この上ない多幸感が溢れていった。そうして、これこそが、彼らがこの2日間のルナフェスを通して全出演者たち、集まった観客たちにもらった愛に本気で応えたからこそたどりつけた、まだ誰も見たことがなかった新しい『LUV』のエンディングなのだと思った。
『LUNATIC FEST. 2018』2018.6.24 幕張メッセ
アンコールでは、LUNA SEAに続いてSIAM SHADEの栄喜（Vo）、DIR EN GREYの薫（Gt）とShinya（Dr）が登場。そこにYOSHIKIやTERUを筆頭にこの日の出演者たちも加わって、LUNA SEAの「STORM」をセッションしながら大暴れ。最後に「ありがとう！」と感謝の言葉をRYUICHIが伝え『LUNATIC FEST.2018』は閉幕した。
なおこの日、RYUICHIの口からサプライズで、LUNA SEAが12月22日、23日にさいたまスーパーアリーナで恒例のクリスマスライブを開催することも伝えられた。2019年には結成30周年を迎えるLUNA SEA。このLUNATIC FEST.2018が、彼らがさらに新しい扉を開けてくそのスタート地点となることは間違いないだろう。
取材・文＝東條祥恵
