“7年目の原点回帰”掲げた『UKFC』、the telephones、[ALEXANDROS]らがライブハウスを揺るがす

2018/09/04
UKFC on the Road 2018 撮影=古溪一道

UKFC on the Road 2018 2018.8.22 新木場STUDIO COAST

東京・下北沢のレーベル/プロダクション・UK.PROJECT(以下、UKP)が主催する真夏のイベント『UKFC on the Road』。2011年にBIGMAMA、[Champagne](現:[ALEXANDROS])、POLYSICS、THE NOVEMBERS、the telephonesによるツアーとして始まったこのイベントは、以降、出演者や会場、形態を変化させながら毎年続いている。

今年の『UKFC on the Road』は久々に4会場をまわるツアー形式で開催された。この記事でレポートするのは最終日の新木場公演の模様であり、同公演のテーマは“7年目の原点回帰”。2011年当時に全国をまわった5バンドがFRONTIER STAGE(メインステージ)に揃うことが発表時から話題となっていた。特に、3年間の活動休止を経て復活したthe telephonesの登場(石毛 輝 (Vo/Gt/Syn)曰く今年は「一瞬だけ電波入れるイヤー」とのこと)、そして2013年にUKPから独立したTHE NOVEMBERSの帰還は大きなトピックスといえるだろう。

しかし、名古屋・大阪・下北沢公演に出演し、この新木場公演までバトンを繋いできた新鋭バンドを中心としたFUTURE STAGE(サブステージ)のラインナップも見逃せない。よって以下のテキストでは、駆け足にはなってしまうが、この日出演した全バンドのライブに触れていきたいと思う。

teto 撮影=河本悠貴

teto 撮影=河本悠貴

最初にFRONTIER STAGEに立ったのはteto。猛者たちが勢揃いのこのステージのトップバッターなんて大役に間違いないが、彼らのライブからは緊張のようなものを一切感じなかった。叫ぶようにして唄うボーカル。負けじと吠えるギター。爆裂リズム隊。フロアは拳を掲げる人多数だが、その気持ちめちゃくちゃ分かる。衝動を剥き出しにした爆音は何かへの苛立ちのようでもあり、悲痛な叫びのようでもあるため、目の前にすると胸が張り裂けそうな想いになるのだ。終盤には小池貞利(Vo/Gt)が「規制ばかりの世の中では本当に美しいものは見られない」としながら、UKP社長の遠藤氏について、「俺らには「奴隷の唄」とか「洗脳教育」って曲があるんですけど、そういうのを出してもいいですか?って聞いたらやりたいことをやりなよって言ってくれて。ハチャメチャな人だと思いました」と紹介。朝日みたいな照明を背負い「忘れた」を鳴らした。

postman  撮影=古溪一道

postman 撮影=古溪一道

FUTURE STAGEのトップバッター・postmanは、2016年にBIGMAMAが行った10代のバンドを対象とした対バン企画で発掘され、今年4月からUKPに仲間入りしたばかりのバンド。青さの残る正統派ギターロックは、自分たちの現在の姿を投影しているようだ。“今唄いたい歌”という紹介とともにラストに披露した新曲「夢と夢」は、「次はメインステージに」と意欲を燃やす彼らの新たな決意として響きわたった。

POLYSICS 撮影=AZUSA TAKADA

POLYSICS 撮影=AZUSA TAKADA

これもある意味では原点回帰だろうか。昨年ナカムラリョウ(Gt/Vo/Syn)が加入、結成21年目のタイミングで4人編成に“戻った”POLYSICSは、新体制で初めての『UKFC』に臨む。ギターが2本になりバンドサウンド特有の質感が際立つようになったことが主な要因だろうか、「シーラカンス イズ アンドロイド」「Let’s ダバダバ」のようなこれまで何度も聴いてきた曲まで新しく生まれ変わっていたのだから驚きだ。『UKFC』およびUKPの鉄板的存在になりつつあるPOLYSICSだが、常に革新的なことに挑み続けている彼らだからこそそれが可能なのだと思い知らされるようなライブだった。そうしてあっという間にラスト。関係者向けに用意されたセットリストで「新曲」と表記されていた最後の曲はなんと、the telephonesのカバー「Urban Disco」だったのだ! こういうところも彼らが愛される所以なのかもしれない。

polly 撮影=古溪一道

polly 撮影=古溪一道

照明は最低限。仄暗い空間のなか、シューゲイザー・サウンドで場内を満たしたのは、FUTURE STAGEのpollyだ。越雲龍馬(Vo/Gt)のファルセットボイスはその濃霧に溶けていくよう。『UKFC』初登場時の2015年には憂いのあるギターロックを鳴らしていた彼らだが、今はこのやり方に自分たちの道を見出したようだ。「25分間やりたいようにやらせていただきます」という飾らない一言も頼もしく映った。

THE NOVEMBERS 撮影=河本悠貴

THE NOVEMBERS 撮影=河本悠貴

そんなpollyからバトンを受け取ったのは、FRONTIER STAGEのTHE NOVEMBERS。UKPに所属する(もしくは、かつて所属していた)アーティストは、自分たちの色を極め独自のジャンルを確立していっている印象があるが、孤高同士の“縦”の繋がりが感じられるpollyからの並びは、非常に粋である。SEはなし。4人は登場すると、徐々に音を重ねながら「Hallelujah」を鳴らし始めた。轟音の嵐、幾重にも重なった音の層、それらをすごいスピードで貫いていくシャウト。その身を捧げるようなバンドの演奏を前に、オーディエンスはひたすらに立ち尽くしている。THE NOVEMBERSが『UKFC』に出演するのは5年ぶり。思い出話の一つや二つ出てきてもおかしくはないが、MCはほとんどなし。バンドの演奏そのものでこれまで歩んできた道について語り、自分たちの現在地を示すようなスタンスからは、彼らなりの美学を読み取ることができた。

aint  撮影=古溪一道

aint 撮影=古溪一道

昨年、UKPのオーディション『Evolution!Generation!Situation! vol.2 Supported by Eggs』で最優秀アーティストに選出されたaintは、「正式に家族としてここに立てています!」と喜びを露わにした。彼らはBIGMAMA・金井政人(Vo/Gt)プロデュースの「Moondrop」をはじめとした計5曲を披露。トリプルボーカル&トリプルギターという特殊な編成を武器に、今後どう進化していくのかが楽しみだ。

TOTALFAT 撮影=AZUSA TAKADA

TOTALFAT 撮影=AZUSA TAKADA

2階席のガラス窓があっという間に曇るほど、場内の温度を急上昇させたTOTALFAT。「夏のトカゲ」などアッパーチューンを連投し、新曲「Your Goddamn Song」まで披露。その後は“ガソリン補給タイム”と称しビールをグイッといってから「PARTY PARTY」へ突入だ。ハイテンションな展開から垣間見えるのは、求められる役割を真正面から全うしようという根性。最初にJose(Vo/Gt)は「お祭り隊長・TOTALFATです!」と挨拶していたが、そういえば昨年も彼らはそう言っていた。『UKFC』初出演から5年、初日トップバッター&最終日トリを任されたのは4年前。個性豊かな仲間に揉まれながら過ごす日々のなかで、彼らは、自分たちの色を再認識することになったのではないだろうか。終盤には「一言だけ、友達として。the telephonesおかえり!」と「Place to Try」を届ける場面もあった。

odol  撮影=河本悠貴

odol 撮影=河本悠貴

「UKFC、後半戦も楽しみましょう!」とodolが登場。ドリーミーなサウンドをゆったりと波打たせるビート。このバンドのアンサンブルに身を委ねていると、底の知れない宇宙の中を彷徨っているような、心地良く不思議な感覚に陥るものだ。「four eyes」ではボーカルとドラム以外は全員シンセとサンプラーに、「生活」ではトリプルギターに――というふうに曲に応じて編成を変えるバンドサウンドは、新しい発見を次々ともたらしてくれた。

BIGMAMA 撮影=AZUSA TAKADA

BIGMAMA 撮影=AZUSA TAKADA

ここで、今年3月にメジャーデビューしたBIGMAMAの登場。「荒狂曲“シンセカイ”」で始めると、高らかに鳴くギターを機に「Strawberry Feels」へ。“バイオリニストのいるロックバンド”という自らの本質をあぶり出すような2曲を終えると、「POPCORN STAR」に繋げ、間髪入れず「ヒーローインタビュー」を演奏した。ここ最近の彼らは、ショートセットの場合、MCを挟まずノンストップで畳み掛けるライブをすることが多いが、その点は今回も同様。誰かがファインプレーをする→それに触発されて他の人も燃える、という好循環によってバンドの熱量をストイックに上昇させていく様子は、さながら青い炎のようだ。ラストは、彼らがRX-RECORDSから初めてリリースした作品『short films』にも収録されている「CPX」で締め。去り際に一言だけ、金井が「おかえり」と残していったのが彼らしくて微笑ましかった。

ウソツキ 撮影=古溪一道

ウソツキ 撮影=古溪一道

サウンドチェックがてらディズニーのカバーを演奏し、ライブ本編開始前からオーディエンスを惹きつけたのはウソツキ。セットリストは、9月にリリースするアルバム『Diamond』の収録曲を中心とした意欲的な内容だった。「夏の亡霊」はコーラスワークが新鮮な曲で、「名もなき感情」はウソツキの新たなスタンダードになっていきそうな曲。新譜について告知する竹田昌和(Gt/Vo)の弾む声からも、バンドの前向きなテンションが伝わってきた。

[ALEXANDROS] 撮影=河本悠貴

[ALEXANDROS] 撮影=河本悠貴

前週にスタジアムワンマンを終えたばかりだった[ALEXANDROS]のライブでは、川上洋平(Vo/Gt)が「距離が近いですね」と笑顔を浮かべ、前方のオーディエンスとハイタッチしていた。フロアからは絶えず大歓声が上がっているにもかかわらず、「対バンは久しぶりですけど、やっぱり俺たちはケンカ売りに来てますので。こんなお祝いムード、マジでフ●ックだと思ってます」(川上)と告げてしまうのが[ALEXANDROS]。そしてこういう性格のバンドがいるからこそ、『UKFC』は顔馴染み同士の馴れ合いに終始することなく、火花散るライブイベントになりえるのだろう。コースト狭しと雄大に響かせた「Starrrrrrr」、剥き出しの音塊をオーディエンスにぶつけるような「Mosquito Bite」、大きなシンガロングを生み出した「Kick&Spin」――と、奔放なやり方で私たちの心身を揺さぶって、終了。

Helsinki Lambda Club 撮影=古溪一道

Helsinki Lambda Club 撮影=古溪一道

FUTURE STAGEのトリを務めたのはHelsinki Lambda Clubだ。歪かつ愉快に弾むリズムラインとポップセンス光るメロディラインが手を取り合うこのバンドの曲はとびきりチャーミング。橋本薫 (Vo/Gt)はオーディエンスに「自由に踊りましょう、よろしく!」と伝えていたが、そう言う彼らのサウンド自体が何にも縛られていないからこそ、オーディエンスは思い思いに身体を揺らすことができるのだろう。“一体感”とはまた異なる盛り上がりの光景は、FUTURE STAGEの締め括りに似つかわしいものだった。

the telephones 撮影=AZUSA TAKADA

the telephones 撮影=AZUSA TAKADA

そしてthe telephonesのライブへ。「UKFC on the Road、帰ってきたぞー!」と叫ぶ石毛の甲高い声を聞いて、彼らの復活をいよいよ多くの人が実感したようだ。1曲目の「D.A.N.C.E. to the telephones」からオーディエンスは大きく跳ね、2階席から見るとフロアは海みたいになっていた。「俺たちはみんなを踊らせることしかできないから、踊ってくれー!」(石毛)とステージから放たれるのは、長島涼平(Ba/Cho)と松本誠治(Dr)による強靭なグルーヴ、派手に動き回る岡本伸明(Syn/Cow/Shr)が鳴らす刺激的なリフ、そして石毛のハイトーンボイスである。3曲目には初期曲「DaDaDa」も披露。(アンコールを除けば)『VIVA LA ROCK 2018』出演時と被りのないセットリストも嬉しかった。終盤にかけては「A.B.C.DISCO」「Keep Your DISCO!!!」「Urban Disco」を連投。コール&レスポンスやお馴染みの振り付けをバッチリやってみせるオーディエンスの姿には、彼らの復活がどれほど待ち望まれていたのかが表れていた。曲数を重ねるにつれフロアの昂揚感がどんどん増していく様子には、彼らが如何に愛されているのかが表れていた。アンコールラストの「Love & DISCO」では、他出演者がFUTURE STAGEからフロアへ風船を投げ入れている。その時場内をぐるりと見渡してみたら、どの方角も笑顔でいっぱいだった。石毛は何度も「ありがとう」と伝えていた。

因みにthe telephonesは、メジャーデビュー10周年を迎えるにあたり、2019年は精力的に活動をするとのこと。そんな彼らのみならず、この日一堂に会した勢い盛んなバンドたちが、ここから先の1年を賑やかなものにしてくれることだろう。次の再会が早くも楽しみになってしまった。


取材・文=蜂須賀ちなみ

関連ライブ

関連アーティスト

レポート一覧に戻る

  • 新着ニュース
  • 新着ライブレポート
バナー