そらる 10年間の歩みを歌に込め、届けたられた感謝と誓いーーツアーファイナル・幕張メッセ公演をレポート

2019/04/17
そらる

SORARU LIVE TOUR 2019-10th Anniversary Parade-
2019.4.14 幕張メッセ国際展示場4・5・6ホール

活動10周年を記念し、3月から全国ツアー『SORARU LIVE TOUR 2019-10th Anniversary Parade-』をスタートさせたそらるが、4月14日に千葉・幕張メッセ国際展示場4・5・6ホールにて最終公演を開催。この10年、時に悩みながらも自身の表現に向き合い続けてきた彼の変わらない真っ直ぐな歌声は、あまりにも純度が高く、美しかった。

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前日にも同会場でライブを行い、両日ともソールドアウト。期待が膨らむ中、『SORARU LIVE TOUR 2019-10th Anniversary Parade-』の文字が浮かぶスクリーンが2つに割れると、薄暗い中に人影が! 幕開けは「銀の祈誓」だ。ディレイギターにていねいに歌声を重ねていくそらるは、「銀の祈誓」のMVと同じ真っ白な衣装をまとい、頭には白の髪飾りをつけていた。感情を吐き出すかのようなサビ然り、どんな苛烈な運命にも抗うという凛とした強さをにじませる歌声は実にエモーショナルで、どうしたって心が動く。

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一転、そらるが「最高の日にしよう!」と笑顔を見せたのは、嫉妬や葛藤をテーマにしながらも爽やかでダンサブルなロックナンバー「セパレイト」。変則的なリズムや軽やかなギターリフに絡ませる歌声のよく伸びることといったら。一方、オープニングでは薄明かりの下で全貌が明らかになっていなかったステージセットを見渡せば、ヨーロッパ風の街並みにアジア的な提灯が下がる、なんとも不可思議で空想的な世界観。小さなことから大きなことまであれこれ悩みの尽きない日常から離れ、気づけばおとぎの国の歌と音楽の祭礼に誘われているのだ。

疾走感あふれるロックナンバー「群青のムジカ」では、ステージ左右に伸びた通路を端まで歩きながら歌い、間奏で「すごい景色だよ!」と感嘆の声を上げるそらる。「声を聴かせて!」と言えば、彼のイメージカラーである青を灯した無数のペンライトが揺れる客席から、大歓声が上がる。

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「1か月前、宮城から始まった10周年ツアー。とうとう最終日でございます。どの会場も思い出に残る最高のライブでした。今日のライブは、そのすべてを超えて、さらに最高の日にしていきたいと思います。よろしくお願いします!」
 
そう挨拶し、「Liekki」からはより深くファンタジックな音楽旅行へ。赤に染まるスクリーンを背にしたそらるが歌声に託す、火竜リエッキへの想い。そらるがサビで手を高く上げて歌う姿も印象的だった「シャルル」。スクリーンに月が浮かび、メンバーのソロパートではそらるの動きに衣装の裾がひらりとなびいた「月世界旅行」。マイクスタンドを抱き寄せるようにして、儚さをたたえた歌声、叫びのようなロングトーンを響かせた「文学少年の憂鬱」。さまざまな物語を色鮮やかに描く歌声は、受け手それぞれの胸の傷を癒し、空虚を満たしてくれる。

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インタールードの間にスクリーンに映る季節は移り変わり、やがて冬へ。『SORARU LIVE TOUR 2019-10th Anniversary Parade-』特設ページのイラストそのまま、北欧の民族衣装を思わせる出で立ちで現れたそらるが、雪がはらはらと舞う中で歌ったのは「ゆきどけ」だ。多くの楽曲を自ら生み出しているそらるだが、命のタイムリミットが決まっている大切な人との物語を一点の曇りもなく美しく切なく描き歌えるのは、彼自身の感性がいつまでも“鈍く”ならないから。感受性が一番豊かで、素直で、純粋だったころの自分に帰してくれる、それこそがそらるの比類なき歌の力だ。
気持ちを重ねすっかり没入していると、「嘘つき魔女と灰色の虹」ではステージ両サイドから客席中央部までコの字に伸びる花道を通って、笑顔で全方位に手を振りながら歌い、ゆっくりとセンターステージへ。光に当たるシャボン玉が宝石のようにキラキラと輝く中で歌う「ビー玉の中の宇宙」。センターステージ上部に施された電飾の飾り付けがパステルカラーに色づき、「さぁ、一緒に歌ってください!」とそらるが呼びかけた「愛言葉III」では、<“恋”をして> <“愛”にして>と歌うそらるに、オーディエンスが<バカ!>と続いて、一体感がますます高まっていく。

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「「銀の祈誓」がオリコンで2位、「ユーリカ」が3位という素晴らしい結果をいただきました。本当にみなさんのおかげで、アニメやドラマのタイアップっていう、これまで個人では挑戦できなかったことができています。今日も……マジでみんなの笑顔を浴びてる! おかげで今、最高の気分で歌えています。本当にありがとう」
 
心を込めた感謝の言葉から、そらるにとって初の映画主題歌となった「アイフェイクミー」へ。After the Rainで活動を共にするまふまふと共同で作詞・作曲した『映画 賭ケグルイ』のキャラクターたちの狂気を感じさせるナンバーは、突き抜けてアグレッシヴ。「もっと!」と煽るそらる、<真相>の突き刺すようなハイトーンも圧巻だ。

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「いやー、楽しいな! 横浜アリーナ(2017年11月開催)のときのことを思い出します。あのときも、ライブをやる前はめちゃめちゃ怖くてさ。でも、挑戦していこうという気持ちで、あの日も今日も、同じようにステージに立てているし、あのときの夢の続きが、昨日今日と見られている、そんな感覚です。この10年、いいことも嫌なこともたくさんあって、嫌になったらやめちまおうと思いながらやってきたけど、こうして続けてきて、今、最高の気持ちでステージに立てていて。やっぱりやってきてよかったな、こういう時間がもっと続いたらいいな、と思っています。これからも前に進んでいけるように頑張ります」

平坦ではない道のりを歩いて至った、前向きな境地。そこに立つ者が放つ言葉には、説得力がある。

また、10周年を記念したこのツアーでは“あなたが聴きたい”楽曲のリクエストを募っていたわけだが、この日歌われたのは「ジグソーパズル」。不適な笑い声、<僕に触ってほしくて>という囁きには悲鳴にも近い声が上がって、火がついた高揚はとどまるところを知らない。

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「夢のまた夢」「彗星ハネムーン」では、トロッコに乗り込んで客席後方の通路をぐるり。「彗星ハネムーン」では、<動かない>というフレーズに合わせてそらるが片足立ちをしたり、<片道切符でもいいですか?>と歌うそらるに、<いいですよ!>とオーディエンスが全力で応えたり。ライブならではの産物が笑顔の花を咲かせていく。
 
さらに「次は「Fire Pit」。驚いてもらえると思います!」とそらるが言うと……ステージ後方のスクリーンが上がり、そこにはオーケストラが! 壮大で贅沢な音の重なりやオーディエンスとの歌のかけ合いを楽しみ、「彗星列車のベルが鳴る」ではバンドとオーケストラが融合した華やかなサウンドを全身で浴びながら、ステージを右に左に動いて歌うそらる。耳も目も、本当に幸せだ。

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「楽しそうでしょ、オレ。昔はライブで失敗したらどうしよう、とかすごく怖くてエゴサーチなんかもしたけど(笑)、最近はしなくなりました。みんな楽しそうだったし大丈夫だろうなと思って。それくらいみんなの笑顔に励まされて歌えています、ありがとう。またやるからさ、そのときはまた来てください」
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最後に届けてくれたのは、そらるが「別れや出会い、いろいろなドラマがある季節のために書いた曲」である「長い坂道」。「合唱曲的な雰囲気を大事にした」というこの曲、オーケストラで彩られてみればまた格別の味わい。会場上部からはハート型&桜色の紙吹雪が舞い落ち、ライティングに合わせてオーディエンスが灯すペンライトのカラーもピンクに。その光景に、思わず「きれいだね」と声を漏らしたそらる。万感胸に迫ったのか、最後に涙を拭うように見えたのは気のせいではないように思う。

なおもそらるを求める声に応じたアンコール、1曲目に選んだのはノスタルジックな「夕溜まりのしおり」。夕暮れを思わせるアンバーなライトの下で客席を見渡しながら大きく左右に腕を振るそらるは、もちろんとてもいい笑顔だ。
 
「本当に今日は楽しかったです。軽い気持ちで動画投稿を始めて、最初は数十再生くらいで、コメントも全然つかなくて。でもね、すごく楽しかったんだよなぁ。何度も言うけど、本当に続けてきてよかったと思っています。ありがとう。自分らしいツアーがなにかとか、そういうことを考える余裕はなかったし、今も意識しているわけではないんだけど、今回のツアーは自分らしいツアーになったんじゃないかな、って自画自賛したいと思います(笑)。そしてそれは、みんなが声を聴かせてくれて、笑顔を見せてくれたおかげ。また、会おうな」

あらためて感謝と誓いの言葉を口にした上で、7月17日にアルバムをリリースすることを告げたそらる。まずはファンに直接伝えたかったのだろう、その気持ちもまた嬉しい。

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ラストの「ユーリカ」では、再びトロッコに乗り込んで客席通路をまわり、客席上部からはたくさんのライトブルー、ピンク、パープルの風船が。「持っていない人にまわしてあげてね」という彼の気遣う言葉に、風船が場内にまんべんなく広がっていく。最後の最後まで、そこはとても温かくて、優しい世界だった。
不透明な時代だからこそ、混じり気のない歌声は多くの人を照らし、鳥肌が立つほどのカタルシスをもたらす。ただただ自分に正直に、歌に生きるそらるとは、そういう存在だ。


文=杉江優花 撮影=小松陽祐 (ODD JOB)、加藤千絵 (CAPS)、堀卓朗 (ELENORE)

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