岡山『EIGHT BALL FESTIVAL』が「みんなの居場所になってほしい」ーーSaucy Dog、マカロニえんぴつ、Awichらがバトンを繋いだ2日目・全組レポート(写真83点)

2025/04/30

『EIGHT BALL FESTIVAL 2025』2025.3.30(SUN)CONVEX岡山

2025年3月29日(土)・30日(日)の2日間、岡山県岡山市にあるCONVEX岡山にて『EIGHT BALL FESTIVAL 2025 supported by GROP』が開催された。3回目の開催となる今回から、新たに屋外ステージが増設され、SOLID STAGE / STRIPED STAGE / CUE STAGEと名付けられた3ステージに、全34組のアーティストが出演。SPICEでは、岡山から音楽シーンを盛り上げるべく集まったアーティストとオーディエンスが作り上げた、岡山でのライブの模様を全組レポートする。

2日目は前日と比べ、ぐっと気温が下がるといわれていたけれど、快晴ということもあって昼間は過ごしやすい気候に。イベントの開場直後から会場外にあるフードエリアやグッズエリアも大いに賑わっていて、絶好の“フェス日和”だ。

室内エリアでも早くから人がたくさん集まっているエリアがあちこちにあった。2023年・2024年の『EIGHT BALL FESTIVAL』のライブ写真を一堂に集めた展示ブースでは、お気に入りのアーティストのサインや写真の前で記念撮影をしたり、当時の思い出を語り合ったり。岡山県の地元企業によるブースではこのフェス限定でのプレゼントが貰える企画が実施されていたり、アパレルブランドやクラフトビールの試飲ブースが展開されていたりと、余すことなくイベントを満喫できる仕掛けが展開されていた。前日に続いてイベントに参加している人も多く、気分は早々に高まっている様子。

プッシュプルポット【CUE STAGE】11:30〜

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

そこに唯一の野外ステージ・CUE STAGEのトップバッターで登場したのがプッシュプルポットだ。「ライブハウスから来ました!」、と威勢よくライブバンドぶりを宣言すると1曲目「こんな日々を終わらせて」で自然と体も心も吸い寄せられちゃうポジティブパワーでフロアを満たしていく。

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

「トップバッターから来てくれて、こっち(のステージ)に来てくれてありがとう! めちゃくちゃ良いライブするから! 移動しないで!」。“フェスあるある”な途中でステージを離脱する人を引き留めたいと、山口大貴(Vo.Gt)が熱く吠えると、有言実行すべく、「バカやろう」でドカドカうるさいロックンロールサウンドを鳴らし、観客のテンションをがっちりと掴んでいく。

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

「音楽を通してたくさんの人と通じ合えて、出会えたことがうれしい。また生きて、ライブハウスで出会いたい」。山口は音楽へ、ロックバンドへ、そして人と人との出会いや別れについて切々と語り、「13歳の夜」へ。山口の心から湧き出た言葉、それを桑原拓也(Gt.Cho)がより深層に沁み込ませるメロを描き、堀内一憲(Ba.Cho)がバンドの底力を高めるベースラインを、明神竜太郎(Dr.Cho)が昂る感情を押し上げていく。ステージはそのまま「笑って」「最終列車」でぐっと前にせり出すようなロックサウンドを打ち鳴らし、トッパーからしっかりとイベントの加速度を高めてくれた。

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

取材・文=黒田奈保子

アルステイク【STRIPED STAGE】11:35〜

撮影=センイチ

撮影=センイチ

3人の頼もしいシルエットが浮かび上がり、ひだかよしあき(Vo.Gt、以下同)の「ヤバイ日にしようぜ!」と言葉でスタートダッシュを切ったのはアルステイクだ。エモーションをそのまま歌に乗せた「嘘つきは勝手」に始まり、あむ(Dr.Cho)のエネルギッシュなドラミングが冴えわたる「他人事」、切ないボーカルが曲のドラマを際立たせる「ワガママ」と、満杯のSTRIPED STAGEを一気にライブハウス化させていく。

撮影=センイチ

撮影=センイチ

「僕ら、紛うことなき岡山の人間です。岡山ではフェスに行こうと思ったら、あの有名なバンドを見ようと思ったら、県外まで行かないと見られなかった。でもエイトボールはもう3回目。分かるかな? めちゃくちゃ最高なフェスに出会えてるってこと! あともう一つめちゃくちゃヤバいバンドに出会えてることにも気付いてください、俺たちがアルステイク!」(ひだか、以下同)

そう声高にブチ上げた「未完成のまま」ではたくさんの拳が上がったかと思えば、「走れ」「踊れ」「わんちゃん」とショートチューンを隙間なく連発していく。促さずとも無数のクラップやジャンプが生まれる光景に、改めてひだかは口を開いた。

撮影=センイチ

撮影=センイチ

「今見てるこの景色は、岡山のライブハウスでは日常茶飯事。俺たち、岡山のライブハウスのヤバさを教えに来ました!」と、「チェリーメリー」ではその言葉を具現化するかごとく、のん(Ba.Cho)が全身全霊で会場をあおり、切々と歌いかけた「生きている」「心」でエンディング……と思いきや「時間が余ったのでもう1曲!」とダメ押しの「光れ」でピリオドを打つ。最終日STRIPED STAGEのトップにふさわしい岡山の底力を見せつけたアルステイクだった。

撮影=センイチ

撮影=センイチ

取材・文=後藤愛

KANA-BOON【SOLID STAGE】12:10~

撮影=日吉“JP”純平

撮影=日吉“JP”純平

2日目のSOLID STAGEのトップバッターを務めるKANA-BOONは、谷口鮪(Vo.Gt)が「『EIGHT BALL FESTIVAL』開幕!」と開口一番、「フルドライブ」になだれ込むオープニングから鳥肌モノ。ロックバンドとしてのタフネスが宿る極太の音像をぶっ放す! その間も際限なく増え続けるオーディエンスを横目に「ソングオブザデッド」を投下すれば、促さずとも方々でタオルが回る。「さぁどこまでいけるかな? 踊ろう!」(谷口、以下同)と必殺の「ないものねだり」ではコール&レスポンスもバッチリ決めるなど、フェス仕様にチューンナップされたセットリストを惜しみなく披露していく。

撮影=日吉“JP”純平

撮影=日吉“JP”純平

撮影=日吉“JP”純平

撮影=日吉“JP”純平

ここで、「岡山に来たのは3年ぶりぐらいかな。KANA-BOONもあの頃とはすっかり様変わりしましたが(笑)、この季節にぴったりの歌を」と歌い出したのは「サクラノウタ」。会場のCONVEX岡山周辺にも桜がちらほら咲き始めていたこの日に打ってつけのメロウネスが、じんわり胸に染みわたっていく。続いても、きらめく「スターマーカー」に手を振り応える大観衆に、「楽しくない日も退屈な日も寂しい夜も、そりゃありますよ。でも、今日は全てのアーティストがあなたの気持ちを晴らしてくれるから。大切な歌です。あなたに届きますように」と「日々」を切々と歌い上げ、「ヒットソングがまだ残ってます!(笑)」とトドメは「シルエット」! 「最高の始まりでした!」と初エイトボールにしてKANA-BOONの真髄を見せつけた。

撮影=日吉“JP”純平

撮影=日吉“JP”純平

取材・文=奥“ボウイ”昌史

SHAKALABBITS【CUE STAGE】12:50〜

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

今年でデビュー25周年を迎えるSHAKALABBITSが『EIGHT BALL FESTIVAL』に初登場。Uqui(Vo)とMAH(Dr)、2人での新体制となり、2024年に7年ぶりの復活を果たした彼女たち。1曲目「MONSTER TREE」から、グッドミュージックはいつだって錆びることはないと、まざまざと体感できるステージ。エネルギッシュ&ハイな歌声を響かせていたUquiも、続く「THAT THING YOU DO!」ではご機嫌なスカサウンドに乗っかり、ルーディな歌声を響かせる。そこに拍車を懸けるようなMAHの豪快なビートがたまらなく気持ちいい。

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

「Yah!Yah!Yah!初めまして『EIGHT BALL FESTIVAL』! 寒くない? 一瞬でもみんなを温めてあげたいので、一緒に遊んでください。So,Excited~♪」とくれば、もちろん「SO EXCITED!」。機材のハプニングがありつつもさらりと軌道修正させ、次曲「CAN’T ESCAPE THE CHOCOLATE SYRUP」でさらに加速! ベース、ギターのサポートメンバーも2人に負けじと、さらなる高まりを生み出していく。

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

「明日も明後日も元気で過ごして。元気でいれば、良い気分でまた会えるはず」と、ステージ後半は「head-scissors」「Pivot」で“これぞシャカラビ!”なスカもメロコアも混ぜ込んだ、美味しいとこどりな楽曲で観客の心をひきつけた。

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

取材・文=黒田奈保子

Conton Candy【STRIPED STAGE】12:55〜

撮影=センイチ

撮影=センイチ

「カッコいいバンドからバトンをもらったんで、最後まで頑張ります!」と言う紬衣(Vo.Gt)の宣誓を皮切りに、STRIPED STAGEに吸い込まれていく人・人・人! 「102号室」からいきなりのフルスロットルで、Conton Candyの時間が始まる。「ロングスカートは靡いて」では高速クラップが自然発生し、「歌える!?」(紬衣)との問いにすぐさま応えるオーディエンスとのあうんの呼吸にはほれぼれするほどだ。楓華(Ba.Cho)が跳ねながらリズムを刻んだ「リップシンク」で、すっかりこの場はConton Candyのホームと化した。

撮影=センイチ

撮影=センイチ

「岡山でこういうイベントへの出演は初めてでうれしいです! イエー!とか声出ししてみます? (大きなレスポンスを受け)ヤバい、東京ドームか!」(紬衣)

「前日入りして、夜中の3時までメンバーと部屋飲みしてました(笑)、仲良すぎて修学旅行みたい。ヴァイブス高まってます!」(楓華)

そう等身大の表情をのぞかせるも、エイトボールへ立つ覚悟をにじませる3人。「誰に何と言われようと、いい音楽は生き続けると思う。音楽と言葉は色あせないと思う。それを全力で伝えられるように歌って帰ります!」(紬衣)と続けた「普通」のインパクトたるや!

撮影=センイチ

撮影=センイチ

紬衣の歌声は、どこまでも真っすぐに聴く者の心をとらえて離さない。彩楓(Dr.Cho)もパッション弾けるプレイで、ときめきあふれる「ファジーネーブル」に続いて、全てを出し尽くすように「好きなものは手のひらの中」で走り抜けたConton Candy。「またライブハウスで会えればと思っています!」(紬衣)とどこまでもライブバンドとしての姿勢を示し、さらなる飛躍を予感させるひとときとなった。

撮影=センイチ

撮影=センイチ

取材・文=後藤愛

imase【SOLID STAGE】13:35~

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

バンドメンバーが奏でる軽快なサウンドをバックに、「初めまして岡山『EIGHT BALL FESTIVAL』、素敵な一日にしましょう!」と華麗にSOLID STAGEに現れたimase。1曲目の「ユートピア」から「最高の景色をありがとう!」と感謝するほどのクラップを巻き起こし、続く「Nagisa」でも「飛び跳ねろ岡山!」とステージ上で躍動してみせる。

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

「今回が初『EIGHT BALL FESTIVAL』、ライブも岡山は初めてなんです」と切り出したMCでは、前日入りした岡山で今年初の桜を見たこと、アイスのピノを買ったらレアな星型が入っていたことにも触れ、「今日はいいライブになりそう!」と確信したと人懐っこく語ったimase。その後の「EGOIST」や「FRIENDS!!!」でもゴージャスで華やかな音像であっという間に見る者をロックオンしてしまう。

「最高過ぎますね、むちゃくちゃ楽しい! 今日はみんなとライブができて、岡山に来て良かった」と充実した表情を浮かべ、「まだまだ踊り足りないですよね? 騒ごうぜ岡山!」と、自らの名を知らしめたキラーチューン「NIGHT DANCER」に、ダメ押しの「Happy Order?」と続けて、ライブは終了。そのエンターテイナーとしての確かな資質と飾らない人柄に魅了された人も多かったことだろう。

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

取材・文=奥“ボウイ”昌史

SIX LOUNGE【CUE STAGE】14:15〜

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

1曲目「カナリア」の歌い出しから、開放感ある野外ステージの空気をぐっと掌握した彼ら。ヤマグチユウモリ(Gt.Vo)の少し気だるげで、でも艶のある歌声が野外ステージに気持ちよく響く。ナガマツシンタロウ(Dr.Cho)が生み出す、観る者の心の奥にある芯を的確に当てるビートは気持ちがいいし、イワオリク(Ba.Cho)の踊るようなベースラインも、とにかく今日もすべてがご機嫌で最高だ。

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

渋さのなかに色香を加味した歌声で歌う「言葉にせずとも」では、3人が打ち出す音に酔いしれるようにステージに視線を送る人の多さに驚かされたし、「リカ」のギターリフを聴くだけで恍惚とした表情を見せる人の姿もよく見える。名曲やアンセムだけに盛り上がるんじゃなく、SIX LOUNGEが打ち鳴らす楽曲それぞれに喜怒哀楽、いろんな思いを抱いている人が多いということ。フロム大分、土着的なライブハウスバンドとして着実に力を高めてきた彼らだからこそ生み出した景色だろう。

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

ど真ん中のロックンロールサウンドの中にも凛とした世界観を持つ「My Way」、ゴリゴリと硬派なサウンドで盛り立てる「ナイトタイマー」と、着実に熱を高めていく。MCで綴る言葉よりも、音でバンドの存在感、強さを証明せんと、次から次に楽曲を投下していく3人。ラストはいっぱいの愛を込めて「メリールー」を。「来年はでっかいメインステージでやらせてください!」。ヤマグチが叫んだ願いの通り、来年はぜひ!

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

取材・文=黒田奈保子

SAKANAMON【STRIPED STAGE】14:20〜

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

肩肘張らないリラクシンなムードと、特大のポップネスでエイトボールを揺らしたのはSAKANAMONの3人だ。明朗なアンサンブルでワクワク度を一気にブチ上げた「光の中へ」から始まり、言葉遊びも楽しい「幼気な少女」へとシームレスに突入。藤森元生(Vo.Gt)の朴訥とした歌声とギターリフ、STRIPED STAGEにいる全員で声を合わせる合いの手に、序盤からSAKANAMONのライブでしかチャージできない幸福を惜しげもなくもたらしていく。

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

「本日はお日柄もよく、ここまでよくぞたどり着きました。みんなに拍手! 母方の実家が岡山・井原市でして、そちらの病院で産声を上げました。親戚が映画『サマーウォーズ』くらいたくさんいます(笑)」(藤森)

知られざるレペゼン岡山なエピソードを交えながら、続いてはハートウォーミングな最新曲「voices」を。木村浩大(Dr)のエナジーみなぎるリズムが溶け合い客席も横揺れで音をかみしめるなか、一転してソリッドな音像とシニカルなリリックでの「ただそれだけ」で、楽曲のレンジの広さをこれでもかと見せつけていく。イントロから歓声が起こった「ミュージックプランクトン」では森野光晴(Ba)が舞台の端から端まで駆け、くまなくあおるさまにこちらもアガりっぱなしだ。

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

「今日はいろんなバンドが出ていて、朝のビュッフェみたいな。どれを食べようかな、アレにしようかなって(笑)。素敵なフェスをお持ちでございますね。うらやましいです、岡山! そこに我々も混ぜていただいて……」(藤森)

「しば漬けみたいな」(森野)

「お口直しにぜひ!」(藤森)

ユル〜いムードにすっかりクセになったところで、抒情的な「箱人間」でシメた彼ら。老若男女誰もが童心に返る!?今でも初期衝動たっぷりのSAKANAMONに、またこの地で会いたい!

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

取材・文=後藤愛

Omoinotake【SOLID STAGE】15:00~                       

撮影=センイチ

撮影=センイチ

サックスとパーカッションを加えた編成で、ハイクオリティなポップスを多数聴かせてくれたのが『EIGHT BALL FESTIVAL』初出演となるOmoinotakeだ。初っぱなの「アイオライト」からしなやかな歌声をSOLID STAGEに響かせ、「EVERBLUE」でもドラマチックな旋律と極彩色の照明でショーアップされた上質なパフォーマンスを展開。3人のみで演奏した「P.S.」でも同期も巧みに駆使したスリーピースとは思えないサウンドスケープで圧倒し、藤井怜央(Vo.Key)がハンドマイクで歌唱する見せ場も。

撮影=センイチ

撮影=センイチ

撮影=センイチ

撮影=センイチ

撮影=センイチ

撮影=センイチ

「こんなにたくさんの人に見てもらえると思ってませんでした、本当にありがとう! Omoinotakeは島根県出身の3人組ですので、今日は中国地方のヴァイブスで最高の思い出を作っていきましょう」(藤井、以下同)とあいさつ後は、「幸せ」や「蕾」、「ラストノート」とアニメやドラマのタイアップ曲を連発。その極めつけと言えるのが、「今からやる曲で僕たちのことを知ってくれた人も多いと思います。たくさんの人に出会うことができたこの曲を、初めてのエイトボールでもかき鳴らしていきたいと思います」との言葉通り、昨年大ヒットし彼らを最終的に『NHK紅白歌合戦』にまで導いた「幾億光年」だ。数え切れない手が挙がった光景に笑みを浮かべ、最後は「一緒に歌いましょう!」と皆でシンガロングした「トニカ」で、幸福感いっぱいのラストシーンを生み出した。

撮影=センイチ

撮影=センイチ

取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=センイチ


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超能力戦士ドリアン【CUE STAGE】15:00~  

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

「(メインステージではなく)『CUE STAGE』に選んだことを後悔させます!」の宣言や、スタート前にステージに掲げられた「リハから楽しすぎるから絶対に来た方が良い」というメッセージボードの通り、踊って笑って大騒ぎのステージとなった超能力戦士ドリアン。まずは恐竜と一緒に「恐竜博士は恐竜見たことないでしょ」でダンス♪ 着ぐるみの中はおーちくん(Vo)なんだけど、驚くほど器用にキレキレのダンスを歌うわ踊るわで観客を盛り立てる。やっさん(Gt.Vo)、けつぷり(Gt)のキャッチーなメロに、ママに抱っこされたチビっ子だって必死に踊ってしまう「ドラゴンの裁縫セット(笑)」など、初っ端から誰もが口角が上がりっぱなしだ。

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

この日のために作曲してきたという、イベント名まんまな『EIGHT BALL FESTIVAL 2025 supported by GROP』でイベントの概要をラップで歌い、イベント名をボディランゲージで表現するという、イベンターだけでなく、スポンサーにもゴリゴリの媚びを売る新曲も披露。観客も大いに巻き込んで楽しませるのが彼らのライブスタイル。「いきものがかりと同じ編成」で岡山県民大喜びのネタで盛り上げ、「カフェかと思ったら美容院だった」でラストスパートへ。やっさんが語っていたとおり、「曲を知らなくても、楽しかった! 曲を聴いて家に帰ろう!と思わせるライブを」という言葉の通り、ライブが終わった後には「めっちゃ楽しかった~♪」と口々に感動を語り合う観客の姿をあちこちで見かけた。

撮影=aoi / アオイ

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撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

取材・文=黒田奈保子

35.7【STRIPED STAGE】15:45〜

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

オンステージするや、ドラム前に全員集合し気合注入! そんな姿に観ている側もグッとくるオープニングとなったのは35.7だ。現役大学生バンドというフレッシュな触れ込みながら、そのサウンドはどこまでもエモーショナル。「うそうそほんと」から、たかはし(Vo)は伸びやかな声を会場の隅々まで満たし、破顔! この場を最も楽しんでいるのではないかと思えるほどで、一気にSTRIPED STAGEの視線を我がものにしていく。時折拳を突き上げて鼓舞するかみのはら(Gt)はみずみずしい音色を爪弾き、「最果て」では甘酸っぱいメロディが疾走。同世代はもちろん、それを過ぎた大人たちにも届く淀みのないサウンドには驚かされるばかりだ。

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

「特別な景色にしよう!」とたかはしが促した「Hurtful」では、たくさんの手が上がり、まさにその言葉通りの絶景が広がる。どっしりボトムを支えるこな(Dr)、躍動感たっぷりに牽引するさくや(Ba)とそれぞれの個性も強く、どのメンバーからも目が離せないほどだ。

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

「4月って何かしらみんな環境が変わると思うんだけど、周りの目とか気にしちゃって。でも音楽が好きな人は自分が呼吸できる場所を知ってるから強いと思う反面、繊細だよね。ちゃんと自分のために自分が生きていることを忘れないで」(たかはし)

そう紡いではひときわリリカルに「すももドロップ」を歌唱。4人からの応援歌に魅入られたように聴き入る人々の表情が何とも印象的だ。せり上がるような感動をもたらした「祝日天国」、喝采を呼んだ「eighteen candle」でフィニッシュ! 低体温なその名とは裏腹に、いつまでも冷めない熱をもたらした35.7の4人だった。

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

取材・文=後藤愛

Awich【SOLID STAGE】16:25~                         

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

今年のラインナップが発表された時点で、最もザワついたアクトなのは間違いない。『EIGHT BALL FESTIVAL』×Awich、いったい何が起きるのか!? 真っ暗闇のSOLID STAGEに刺す一筋の光の下、自伝的一曲の「Queendom」を高らかに歌い上げるヒップホップクイーンに一転、まばゆいフラッシュライトが注がれる強烈な幕開けから、彼女が「今日は一緒に遊んでくれますか? 飛び跳ねる準備はいいですか!? 行くぜ『EIGHT BALL FESTIVAL』!」と叫べば、一気に熱狂が始まる。「Remember」でうごめき出したフロアに息つく暇もなく「ALI BABA」でまくし立てるさまは、刺激以外の何物でもない。

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

壮絶なライブとは裏腹に沖縄出身らしさがにじみ出る親密なトークでも場を沸かせ、TVアニメ『シャングリラ・フロンティア』に起用された新曲「Frontiers」、メロウで美しい「かくれんぼ」を経た後は、再び「洗脳」「Bad Bitch 美学」「GILA GILA」と矢継ぎ早に畳み掛けるド迫力のゾーンが続く。

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

「最近は海外にいることが多くて……でも、日本のみんなの顔も絶対に見たいから今日は本当に来た甲斐があったし、見に来てくれてありがとう」と感謝を述べたAwichは、「次はアジアのスーパースターである4人のラッパーを、私の姉御肌で無理やり集めてできた曲(笑)」と「ASIAN STATE OF MIND」を届け、その後もルーツ感たっぷりに「RASEN in OKINAWA」「LONGINESS REMIX」とオリエンタルな魅力でも異彩を放つ。

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

クライマックスは、ヒップホップの生きる伝説ウータン・クランのRZAと作り上げた先日遂にリリースされた「Butcher Shop」に、SOLID STAGEが心地良く揺れた「Bad Bad」でフィニッシュ! 日本を代表するラッパーが、ジャンルもボーダーも飛び越えた時間が間違いなくそこにはあった。

取材・文=奥“ボウイ”昌史

NakamuraEmi【CUE STAGE】17:05〜

撮影=センイチ

撮影=センイチ

サウンドチェックからさらりとグッドボイスを響かせ、それに釣られるように続々と観客が集まってくる。SOLID STAGEのAwichからNakamuraEmiへ。歌で、声で魅せる素敵な時間が続いていく。期待値がぐっと高まるなかで本編1曲目にセレクトしたのは「Don't」。バンドが極上のグルーヴを打ち出し、NakamuraEmiの嬉々とした、生命力に満ちた歌声を全身に浴び、歓声を上げる観客。

撮影=センイチ

撮影=センイチ

「最高の日曜日になりますように♪」と、今度は「究極の休日」へ。CUE STAGEの最後を締めるのが彼女のステージで良かった。五感が喜ぶ声、曲、バンドサウンドで今日一日を終えられる幸せったらない。それはきっと集まった観客みんなも同じ気持ちだろう。彼女の“生きてる”声に観客の誰もが嬉しそうな表情を見せている。「寒いやろ? 寒いのに外出てきてくれてありがとう。初回ぶりに帰ってきて、仲間に入れてもらってうれしい」と、2023年以来、2度目の出演に感謝の気持ちを伝える彼女。大事な場所を思い出してもらえたらと、地元・厚木を想って描いたという、1月20日に配信した楽曲「MICHIKUSA」では人間力に溢れた詞世界で観客の心を鷲掴みに。

撮影=センイチ

撮影=センイチ

撮影=センイチ

撮影=センイチ

最終曲「YAMABIKO」では「ここからいろんなことを乗り越えていこうぜ!って曲」という彼女の言葉にもあったように、心のくすんだ部分を明るく照らし、そこに燃料を投下して心を滾らせる。唯一無二の熱を孕んだ彼女の歌声に、気温の下がった夕暮れ時でも心の奥底から温まったのは言うまでもない。

取材・文=黒田奈保子

Chevon【STRIPED STAGE】17:10〜

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

ブレイク前夜の注目度を考えると、STRIPED STAGEで観られるのは何と貴重なことか。続いては、あわや入場規制寸前だったChevonがお出ましだ。幕開けの「ノックブーツ」は軽快な耳心地ながら、谷絹茉優(Vo)のまるで幾人もの声のように魅せる非凡な才能でいきなりのカウンター! 

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

Ktjm(Gt)の貫禄たっぷりのソロも聴きどころの「サクラループ」では谷絹のロングトーンも飛び出し、3月26日にリリースしたばかりの新曲「さよならになりました」を投下。会場との馴染みっぷりは特筆モノで、最早新たなアンセムと言うにふさわしい仕上がりだ。

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

「あったまってるねぇ! 今までトッパーばっかりだったからこんな状態でやるのは初めてじゃない? 岡山イイね、声出ますね!」(谷絹、以下同)

と、お褒めの言葉に沸く観客へハイキックをかまして「大行侵」をブッ放す! 中毒性に満ちた谷絹のボーカルも相まって、ここからはよりカオティックな様相に。「暴れ散らかせ!」とシャウトしての「Banquet」では、オオノタツヤ(Ba)のグルーヴィーな極太リフにも焦燥をかき立てられていく。

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

「最後に体力を残しておかなくちゃね……そんな甘っちょろいこと考えてるんじゃねーよ!」

最早ワンマン並みの一体感で、STRIPED STAGEのボルテージをさらに引き上げる「冥冥」からの「ダンス・デカダンス」と、鉄板チューンの波状攻撃でよもや昇天……! 終盤には、混み合うフロアの中で体調を崩したオーディエンスを谷絹が気遣う一幕もあり、人間的魅力でも大観衆をほれさせたChevon。スケールを拡大し続ける過程に立ち会えた、貴重な瞬間だったと言えるだろう。

撮影=aoi / アオイ

撮影=aoi / アオイ

取材・文=後藤愛

マカロニえんぴつ【SOLID STAGE】17:50~                    

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

サウンドチェックの段階でバッチリ仕上がっていたのが伝わってきたマカロニえんぴつは、鉄板の「洗濯機と君とラヂオ」からキレキレの演奏で、「レモンパイ」でもそんな前のめりな勢いも難なく成立させるバンドの充実期を感じる。「また呼んでいただいて、岡山に来ることができました。会えてうれしいよ……って伝わってる?(笑)」とフレンドリーに観客とやり取りするはっとり(Vo.Gt)は、続けて「何とか喜んでもらいたくて、ここ岡山で初めてやる曲を持ってきました!」と、公開中の映画『山田くんとLv999の恋をする』主題歌の「NOW LOADING」をライブで本邦初公開。

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

エモーショナルなミドルナンバーが胸を貫くのは「リンジュー・ラヴ」もしかりで、切なさと優しさが入り混じるマカえんの音楽をこれでもかと味わわせる。他にも、最新EP「いま抱きしめる 足りないだけを」の収録曲「然らば」や、アクシデントにより二度中断したものの、同時に揺るがぬライブバンドぶりが何とも頼もしかった「なんでもないよ、」と魅せていく。

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

「まだまだ伝えられていないこと、見せられていない顔がたくさんあるから。また一緒に音楽ができたらうれしいです。もう一曲、絶望ばかりの僕らの正直な歌を一緒に歌いたい。あなたが選んだマカロニえんぴつという音楽でした」(はっとり)

イントロの時点でどよめきが上がったアンセム「ヤングアダルト」で、初年度以来となる『EIGHT BALL FESTIVAL』の大舞台を見事に完遂したマカロニえんぴつだった。

撮影=日吉”JP”純平

撮影=日吉”JP”純平

取材・文=奥“ボウイ”昌史

FOMARE【STRIPED STAGE】18:35〜

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

いよいよエンディングを迎えつつある『EIGHT BALL FESTIVAL 2025』。特にライブハウスシーンの中心的アクトが出演し、しのぎを削ったSTRIPED STAGEの幕引きはFOMAREが担う!

アマダシンスケ(Vo.Ba)の「ホームよろしく!」との言葉が現すように、リハから沸騰状態の空間を創出した彼ら。当然アゲアゲの曲を持ってくるかと思いきや、美しきロッカバラード「長い髪」から始動! ともすればクールダウンする懸念もありそうなところ、丁寧に言葉を紡ぐアマダのやさしい歌声にギュッと結んだ拳がいくつも伸び、改めてバンドの地力を見せつけていく。

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

と思いきや、「聴かせたい歌もたくさんあるんですけど、俺たちのライブ=全員が楽しめる一体感だと思うんです!」(アマダ、以下同)と、一転してスタッフまで(!)参加させるほどのコール&レスポンスを経て、この上なくブライトな「SONG」を放出! 大きなシンガロングを生んだ「Grey」では轟音のシャワーが全身に降り注ぎ、オグラユウタ(Dr.Cho)のパンキッシュなまでの猛追に心拍数は上がるばかりだ。カマタリョウガ(Gt.Cho)が清涼感いっぱいのギターソロで魅せた「Frozen」、センチメンタルに疾走する「Lani」と続けたあとは、何やらメンバー間で相談しているようで……。

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

「時間ないから詰め込んでいいですか!?」と宣戦布告し、ますます容赦なく攻め立てる! オレンジのライティングがよく映える「夕暮れ」にハートフルなサウンドメイクの「愛する人」と畳みかけ、全員で声を合わせるこの上ないハピネスを湧出。その場にいる一人として置いていくことのないグッドメロディの嵐を巻き起こし、フィナーレを飾った。音が鳴り止むや「(SOLID STAGEの)サウシーへ急げ!」と後押ししたアマダもバンドマンでありながら、紛れもないライブキッズだ。エイトボールという最上の遊び場を作り上げたFOMAREとオーディエンスに拍手!

撮影=AZUSA TAKADA

撮影=AZUSA TAKADA

取材・文=後藤愛

Saucy Dog【SOLID STAGE】19:15~

撮影=センイチ

撮影=センイチ

SOLID STAGE の、そして2日間にわたる『EIGHT BALL FESTIVAL』のクローザーは、2年ぶり2度目の出演となるSaucy Dog。つま弾くギターの音色に歓喜の声が広がった「シンデレラボーイ」はもとより、「よくできました」や「雀ノ欠伸」でも、その歌声を、メロディを、アンサンブルを磨き上げ、小細工抜きに鳴らせばそれが最強というSaucy Dogのセオリーが凝縮。バンドとしてのスケールがひと回りもふた回りも大きくなったのを感じさせる。

撮影=センイチ

撮影=センイチ

「こうやってみんなに会いに来れたことを今日はめちゃくちゃうれしく思ってます。トリまで待っていてくれてありがとうね。絶対に素敵な気持ちになってお家に帰ってもらいたいので、しっかり頑張りたいと思います」(せとゆいか・Dr.Cho)

撮影=センイチ

撮影=センイチ

撮影=センイチ

撮影=センイチ

中盤は、珠玉のバラード「結」を見る者の胸に染み渡らせたかと思えば、石原慎也(Vo.Gt)の「岡山~!」という雄たけびとともに突入した「現在を生きるのだ。」、秋澤和貴(Ba)のうねるベースラインがいざなった「雷に打たれて」、「ここにいる一人一人の手を直接つかんで助けてあげることはできないかもしれないけど、今日この時間だけはあなたのヒーローになりたい!」(石原、以下同)とささげた「夢みるスーパーマン」の3連発で駆け抜ける!

撮影=センイチ

撮影=センイチ

「岡山エイトボール、2年ぶりに出させてもらって、今年は外に会場ができたり、大きくなってるなと思います。何事も続けることは簡単じゃなくて、続けてくれるから俺らの居場所になってる。これからもエイトボールはずっと続いていってほしいし、俺らの、みんなの、居場所になってほしい。久しぶりに岡山に来たけど、みんなに会えて良かったです」(石原)

「怪物たちよ」、そして「優しさに溢れた世界で」が、2日間のフィナーレに温もりを添える。これからも『EIGHT BALL FESTIVAL』が、岡山のミュージックラバーの居場所でありますように。その場にいた全ての人が、きっとそう思ったに違いない。

撮影=センイチ

撮影=センイチ

取材・文=奥“ボウイ”昌史


■初日の記事はこちら!
>>岡山『EIGHT BALL FESTIVAL 2025』に10-FEET、ORANGE RANGE、ハンブレら豪華集結
ーー「今日だけは笑って帰ってくれ!」熱気爆発の初日を全組レポート(写真76点)

イベント情報

『EIGHT BALL FESTIVAL 2026』
開催日:2026年3月28日(土)、3月29日(日)
開場/開演:未定
代:未定
会場:コンベックス岡山(http://www.convex-okayama.co.jp
 
出演者:後日発表
 
主催・企画・制作:YUMEBANCHI
お問い合わせ
YUMEBANCHI(岡山) 086-231-3531<平日12:00〜18:00>

『EIGHT BALL FESTIVAL 2026』OFFICIAL HP&SNS

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