10月12日、ゴダイゴ35年ぶりの日比谷野音は、ファンとメンバー、関係者全員の不安(期待?)を裏切って、ピーカン。
ビルの狭間に半月が顔を出し、これ以上ない野音日和に恵まれた。
スモークと共に登場したゴダイゴ、イントロダクション「MOR」から「Mirage」「Salad Girl」のメドレー。
客席を埋めたファンは、やはり30・40代中心ではあるが、総立ちで、歌っている。
若いぞ!

タケカワの最初のMCはやはり「雨降らなかったよー!」だった。
そう、先にも書いたが、ゴダイゴのメンバーのみならずファン、関係者のほとんどが、今日の天候を心配していた。
35年前の野音は、伝説となった暴風雨のコンサートだったのである。
以来、ゴダイゴの野外コンサートは、不思議と悪天候にたたられることが多かった。
35年越し、鬱憤を晴らすかのような素晴らしい夜空に、ファンもメンバーも最高のテンションだ。

続くトミーのコーナーでは、当時イギリスで Monkey Magic 以上に売れたという幻の名曲 「Water Margin」 が披露された。
続けて「HAVOC IN HEAVEN」、トミーの歌唱力も健在である。

バンドに戻って、「WE'RE HEADING OUT WEST TO INDIA」、そして 「Holy and Bright」。
ここで今日初めて、タケカワの歌詞の中に日本語が出てくるのだから、ゴダイゴは不思議なバンドだ。

振り返れば70年代中期、ネットやPCどころか、CDもウォークマンさえも世に現れていない頃だ。
「歌謡曲」という王国は繁栄を極め、生みの親の「演歌」や、優秀な跡継ぎであった「ニューミュージック」らと共に、この世の春を謳歌していた。
ごく少数の例外を除けば、強大な王国「歌謡曲」にとって、日本人の「ロックバンド」など、辺境の少数民族にすぎなかったのだ。

そこにゴダイゴの登場である。

メンバーの中に二人も外国人がいる、でもボーカルは日本人、でも歌詞はほとんど英語。
ヒット曲は日本語詞も多いが、それぞれちゃんと英語詞バージョンがある。
派手なギターソロや絶叫ボーカルとは程遠い、だがとことん練られたバンドサウンド。
そして、英語詞とともに、全世界で、いや、全宇宙で通用するパスポートである、極上のメロディ。

王国を揺るがし、後進に道を開き、自らは中国・チベット公演など未踏の世界に打って出た、本当の意味でプログレッシブなバンドだったと思う。

と、ここで中休み、ステージ上にパイプ椅子を置いて、またずいぶんとユルイトークコーナー。
ステージの緊張感・完成度との落差も、ファンのお楽しみなのだろう。

ほぐれきったところで、サポートメンバー竹越ボーカルによる野音90周年記念ソング「Today, Tomorrow & Forever 今日から未来へ」ミッキーと二人でじっくり聞かせる。
続いてアコースティックな編成で2曲、ボーカルはタケカワ&スティーブ、トミー。

名曲「DEAD END」 以降の後半は、「Beautiful Name」の歌合戦コーナー(ファンにはおなじみ)を挟んで「The Galaxy Express 999」「Gandhara」 まで、これぞゴダイゴという王道セットリスト。

アンコールを待ちながら、もう一つ別の、不思議な感覚に襲われた。
その感覚はライブの初頭、(失礼な言い方かもしれないが)古参のファン達が、大声で英語詞を歌いだしたときからあった。
トミーの熱唱、竹越のバラード、そして「Beautiful Name」で、タケカワに煽られて自分の擦れ声を絞り出した時に、その感覚ははっきり形をとった。

次は、自分が歌う番だ。

ゴダイゴの音楽は、その完成度とうらはらに、信じられない包容力と柔軟性を持っている。
誰がボーカルをとろうが、ゆるぎない統一感で観客を楽しませ、訴えかける。
そう、歌うのが、貴方であろうが私であろうが。

音楽が持つ大きなパワーの源、自分も歌いたい、音楽に参加したい、という欲求。
タケカワユキヒデという稀有なボーカリストを擁して、なおかつ、いや、だからこそ、だろうか。
我々の、音楽の一部になりたいという欲求を、渇きを、満たしてくれる。

さあ、メンバーが出てきたぞ。
ガンダーラのサビは覚えてた、MONKEY MAGIC、うん、きっと歌える。
知らない曲でもいいや、さっきみたいに、ウーラララでも。
タケカワが握るマイクを通して、貴方の歌が、私の声が、この上ない野音のこの上ない星空に、どこまでも広がっていくのだ。

(文:ケニー土田)

セットリスト

1 MOR
2 Mirage
3 Salad Girl
4 Water Margin
5 HAVOC IN HEAVEN
6 WE'RE HEADING OUT WEST TO INDIA
7 Holy and Bright
8 Today, Tomorrow & Forever 今日から未来へ
9 It's Good To Be Home Again
10 Yes, I Thank You
11 DEAD END
12 Where'll We Go From Now
13 Try To Wake Up To A Morning
14 Beautiful Name
15 Cherries were made for eating
16 Taking Off!
17 The Galaxy Express 999
18 Gandhara

アンコール

1 The Birth of Odyssey ~ MONKEY MAGIC
2 CELEBRATION
3 Wave Good-bye