ファンを想う辛島美登里が
ファンクラブをデジタル化した背景。
ライブの秘話や、夏の恒例コンサートの見所も。

1990年の大ヒット曲『サイレント・イヴ』でお馴染みの辛島美登里は、2019年にデビュー30周年を迎え、2021年6月1日(火)には、30年以上続いたファンクラブをデジタルサイトへ大移動、公式ファンクラブ『Green Fields つぶあん』という、時代に即した活動スタイルを確立しつつある。全150号にも上るファンクラブ会報誌『Midori Press』から発展させる形で、Bitfanを活用してデジタルに移行し、よりファンにとって身近な存在へと生まれ変わらせるべくリスタートしたのだ。

この記事では、辛島美登里がデジタルファンクラブの開設に至るまでの背景や、先日行われたオンラインライブ『僕らのポプコンエイジ・オンライン2021〜Forever Friends, Forever Cocky Pop〜』、そして、2021年8月7日(土)に鎌倉にて開催予定の夏の恒例イベント『夕涼みコンサート2021〜夏だ!浴衣(気分)でGO!!』の見所を伺った。


これまで紙だったファンクラブをデジタルにしようと思ったきっかけはありますか。

デビュー直後に発足したファンクラブは、ファンクラブ会社に委託して会報誌を作るという当時にふさわしい形で運営していました。アーティストとファンとの間にまだまだ大きな距離があり、それを縮めるものがファンクラブだったかもしれません。

平成の半ばくらいまでは、レコード会社の宣伝の方が撮ってくださった写真を、会報誌や、CD、プロフィール写真に使わせてもらったりと、当時はレコード会社のスタッフの力も大きかったですね。

その後、「デジタルカメラ」が普及して大きく変わりました。自分で何枚でも写真が撮れ、失敗してもOKなデジカメ。自分の意図や視点で撮った写真も会報誌に載せられるようになりました。

すると、ファンの方が「辛島さん、そういう視点でものを見てたんだね!」とか、旅先で「こういう場所が好きだったんだ!」とか「私も、その虹見た!」とか、私とファンとのコミュニケーションが増え、キャラクターも伝わりやすくなり、そこからファンクラブの会報誌の作り方が少しずつ変わっていったのかなと思います。

変化は加速し、今度はブログやツイッター。自撮りの写真と自分のデイリーな内容を載せるようになると、ファンとの距離はさらに身近に。どちらが良い悪いという話ではなく、情報発信の方法がアナログとデジタルの2つに分かれていって、「ファンクラブ」というものがその間を行ったり来たり、バランスをとり辛い媒体になっていったのが平成の最後の頃でした。

私自身も発信の仕方をいろいろ工夫してみたのですが、やはりSNSの情報の速さには勝てませんでした。ファンクラブが会報誌だけだった頃には、今すぐにお伝えしたい情報でも、せっかく年会費を払って会報を待ってくださっている方のために「まだ出さずに我慢しましょう」となっていました(苦笑)。

さらに平成の終わりから令和にかけて、写真はデジカメやスマホの画質がどんどん綺麗になっていくし、会報誌は掲載スペースが限られ、編集作業をしているうちに1〜2週間が経ってしまったり、スタッフの労力も大変でした。「このままでいいのかな?」という疑問が少しずつ蓄積する中、追い討ちをかけたのがコロナ禍だったんですよね。

そしてコロナ禍、苦肉の策で「オンラインライブ」に踏み切った時。「オンラインライブを配信するなら、メールアドレスを登録していない会員さんにはハガキで知らせなければならないですよね」とスタッフに言われ、「ハガキ!?それはないな…」と。衝撃的でしたね。

それまではコンサートの優先予約受付のためチケット発売日の2、3ヶ月前に郵送でお知らせをするのが当たり前でした。けれど、来月生配信のオンラインライブにあたって、案内のハガキを作り郵送し、リモートワークのスタッフが週1回の出社の時に電話での申し込みを受け付ける、その状況はどうみても不自然で、大きな違和感だったんです。

「ハガキを送るのは止めよう」と私が決めました。「そんな切り捨てるようなこと、なぜ」「辛島さん、冷たいな…」と傷ついたファンの方、ごめんなさい。

皆さんにとってデジタルファンクラブへの移行は、ネガティブなイメージでしたか?

応援してくださる方、沈黙されるかた(笑)、半々でした。このままアナログのままでいいと思っている方も多かったのかな? Wi-Fiの接続がわからなかったり、ガラケーなので配信ライブが観られない、という方もいらっしゃいました。それは本当に心苦しかったですね。

コンサートやファンクラブイベントなど、コロナ禍でできないことを、デジタルが可能にしてくれた。もちろん有観客で行うことが一番ですが、なかなか通常に戻れない現在、デジタルは貴重なツール。

もしあなたが、デジタルファンクラブに馴染んでくださったら、マイナンバーやいろんなことがデジタル化していく時代を、私たちでも楽しめるよ、と思うんです。「辛島さんのところで登録できたから次はこれもできる!」「自分たちの生活が開けていく!」と思ってもらえたらと。私も苦手だからこそ、同年代の方々と手をとりあってデジタルの波に乗っていこう、と呼びかけたいんです。

コロナ禍でコンサートが中止になったりできなくなったことがたくさんありましたが、今このタイミングでファンクラブをデジタル化できたのは、良い決断だったと思っています。コロナの収束を待っていたら、もしかしたらその間に私は消えてしまうかもしれないし、いやそれは寂しいし(汗)、できることを少しずつ積み重ねていこうと思ったのです。

スタッフと話しながら「まずはネットショップを作って、公演用に制作したベストアルバムや、ツアーTシャツを販売しよう」という話になりました。そこから私たち自身も少しずつデジタルに向き合い、今も学んでいる途中で、スタート地点は皆さんと一緒なんですよね。

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