歌詞のテーマは統一されてますけど、曲調自体はすごくいろいろあるじゃないですか。そっちのインプットはどこから得てるんですか?

わたしもどこから来ているのかわからないんですよ。でも、「メトロ」は朝作ったんですけど、夢にテイラー・スウィフトが出てきて、起きてから顔を洗う暇もなく書いた曲なの。わたし、普段は全く洋楽を聴かないので、テイラー・スウィフトが助けに来てくれたのかな、きっと(笑)。だから「メトロ」は洋楽っぽいサウンドになったのかなと思います。

そういう曲ごとのイメージって、アレンジの古川さんに伝えた上で制作するんですか?

そうですね。でも古川さんが私がイメージしていたものよりもっと素晴らしいアレンジを加えてくださることもあって、「愛」とか「ふわふわ」はすごく良かったですね。

「愛」はすごいですね、ボサノヴァとかを思わせるコードかと思ったら歌謡曲調になるし。

そうそう、一番好きかも。あとは「愛別れ」も結構ビックリしたかもしれないですね。デモを送ったときはギターをすごく掻き鳴らしてアップテンポで歌っていたんですけど、(仕上がりは)わたしの中ですごく新鮮でした。

「愛別れ」はカウントから始まるところも1曲目にふさわしいですけど、曲順もご自身で?

はい、決めました。シャッフルとかで聴いていると、1曲終わってから次の曲にいくまでに、「次はこういう音が来てほしい」っていうイメージがあるじゃないですか。基本的にそこをすごく意識して、曲のお尻だけをずっと聴いてたんですよ。「メロンソーダ」のあとは「ピローケース」が絶対きてほしい!とか、そんな感じで。

そうやって並べていった最後は「東京」ですね。

「東京」に対する思いが強いんですよね。

東京がテーマの曲ってたくさんあって、いろんなパターンがあるじゃないですか。たとえば地方出身者からみた東京と、そこに住む者からみた東京とでは景色が全然違っていて、それによって言葉の意味合いも変わってきたりもしますよね? りんさんの東京ってどんなイメージなのか。

なんか……東京っていうよりかは、“2人が住んだ街”っていうイメージなんですよね。簡単に言うとわたしは東京にいて、東京にいない誰かを待つっていう歌です。2人がいたはずの東京だったのに、もういないねっていう。まあ、変わっていくじゃないですか、めまぐるしく。それがすごい寂しかったんですよね。

この曲や「メロンソーダ」は結構前の曲とのことですけど、比較的最近にできたという「夢裡」や「ふわふわ」がポップ路線であることを考えると、周りの環境や物事の感じ方がまた変わってきているんでしょうか。

そうですね。「メロンソーダ」とか「東京」を作っていた頃は、“愛の中”で生きていたと思うんですけど、それ以外の曲は“愛の後”の歌がすごく多かったなって思っていて。「ああ、もう愛しかない!」みたいなモードに入っていたときのアルバムなので。

作り終えた今は、またちょっと違う?

あ、もう一人になりたいモードに入りました(笑)。だから今後の曲はまた色合いが違うかもしれないですね。

そして、今作のリリースされる5月9日にはワンマンライブがありますね。

そうなんですよ! ワンマン自体初めてなので、もうヤバいな、大丈夫かなって(笑)。歌詞に重きを置くタイプなので、歌詞を間違えるのがすごい嫌なんですよ。とにかく歌詞だけは間違えないようにしたいです。

これまでやってきたライブや、観にいったライブの中で、印象に残っていたり影響を受けたものってありますか?

何かなぁ。……いま一人でやっているからかもしれないですけど、バンドを組んでる子はすごくいいなって思って観てしまいますね。

ライブだと全然違うねって言われたいですか?

会ってみて印象が変わった方がいいですね。歌っているときってお芝居に近いんですよ、自分の中で。ライブだと感情がブワっと来ちゃうから。

まさに生ならではで、全く同じ感情になることってないですからね。

そう。2回目くらいのライブで、もう途中で泣いちゃって、恥ずかしくて吐きそうでしたけど(苦笑)。だから、そこまで感情を重ねに来たわけじゃないんだからって気をつけてます。

これまで対バンしてきた相手も、幅広いじゃないですか。そこから得たものって何か実感はありますか?

みんな一人じゃないから、そこは羨ましいなって思ったけど、でもわたしは一人でやらないとねっていう、一人でいるフロントマンとしての強さ、覚悟というか、怖くなくなってきたかな。

共演者のパフォーマンスを観たことで、「もっとこういう風にしよう」とか、あまり影響されたりはしないタイプですか。

そういう風には観ていないんですよね。わたしは「この人ってどういう人なんだろう?」って観ちゃう。結果、弾き方とか叩き方、目配せとか。「誰を見てるんだろう?」とか。

人間観察に近いのかも。

そうですね! だから別に参考になるかもっていう目では観ていないですね。あと、自分の好きな曲が来たらステージじゃなくてお客さんを見ちゃうかもしれないです。わたしが好きな曲をみんなはどう思って聴いてるんですか?っていう感じで。

へえ! たしかに自分の好きな曲で周りも喜んでいたら嬉しいですけどね。

そうそう。「これ、わたしの好きな曲!」って(笑)。

ちなみに今後、共演してみたい存在とかは。

同い年くらいの若い子とやってみたいです。

ご自身のパフォーマンスに関しては、どこを観てほしいと思っていますか?

歌詞とわたしの見せ方を合わせて、わたしが作った曲でタイムトリップをしてほしいというか。昔の曲を歌うことによってお芝居をしている感覚なので、そこに共感してくれたら一番嬉しいし、そういう風に観てもらいたい。音楽を聴きに来ているというよりは、一緒に戻りに行っている感じ? きっと聴きに来ている誰かにとっても、昔の大事なところに行くのってすごくしんどいと思うんですけど、わたしの曲がその入り口になれたらなって思います。……劇的に病んでほしいね、ライブハウスで(笑)。

ボロ泣きして帰るっていう。

もうつらいー!って言って帰ってほしい(笑)。

それによって浄化されるものもありますからね。

そうそうそう! そうなんです。目を背けてたけど後から気づくことってあるじゃないですか。それがすごく好きなんですよね。若い女の子とかに、そうなってほしいなって思います。

りんさん自身が曲を作ることもきっと、そういうことなんでしょうね。

そうですね。もう浄化ですよ、わたしの。……もうどんどん良い子になっちゃうから、どうしよう?(笑)

取材・文=風間大洋

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