女王蜂アヴちゃんにインタビュー!「10年前から準備していた」ニューアルバム『十二次元』について、ライブ観について話を訊いた

2023/02/07

2022年11月6日から2023年2月19日まで全国ホールツアー中の女王蜂が、3月2日(木)に東京ガーデンシアター(有明)で単独公演『バイオレンス』を行う。で、そのツアーの途中の2月1日に、3年ぶりのニューアルバム『十二次元』をリリースする。コロナ禍前から明らかにバンドとして上昇気流に乗っていた、そしてコロナ禍になって以降も「変わらない」どころか「さらに上昇」して来た女王蜂の、決定打であり到達点になるだろう、このアルバムは。
ライブを観て魅せられてしまったら、ほかのものでは満足できなくなる。音源を聴いて虜になってしまったら、ほかの何かを聴いても薄く感じてしまう。そんなとんでもない濃さのままでここまで規模を拡大していた女王蜂の現在と『十二次元』という作品について、アヴちゃんに訊いた。

『十二次元』というアルバムは、10年前から準備していた

──前作と前々作は1年で2作出たけど、そこから3年インターバルが空きましたね。

3年前、コロナ禍になった時に、やっぱり、ここまでのことになるとはみんな思ってなかったと思うんですけど。私自身も、半年ぐらいで決着がつくのかなって思っていて、その後のZeppツアーとか、できるやろなと思ってたんですけど…。それも頓挫して。その時に、印象的だったのが、ソニーミュージックの社長が連絡をくれて。「コロナで今大変だと思うんだけど、忘れないでほしい。絶対にこのコロナ禍が明けた時に、女王蜂が必要とされると思うから」って。ほんとに非現実を……聴く人をちゃんと現実から引き離せて、徹底的に世界を見せられる人が求められるから、絶対に女王蜂が必要になる、準備していて、って言われて。それはとてもうれしい言葉だったんです。そのときから、次にアルバムを出すとしたら、なんてひとことで始めようかな、と思って。その時に決めたのが、「あのとき売ってた油はどこへ?」。嘘も本当もあって、清濁合わせて呑み込んだ、その油っていうのは、今、何になっているんでしょうか? 私たちが納得しようとして、理解しようとして、我慢したものは。というところで、自分の血潮と、何かもっと暗澹たるところに流れているマグマのようなものを、作品にしたいな、と思って。

──アルバムタイトルの『十二次元』というのは──。

この『十二次元』というアルバムは、10年前から準備していて。『十二次元』という言葉は、何もかもがかなう次元、神の領域とか……そういう、ちょっとスピリチュアルな言葉でもあるんだけれども。私は小さい頃から、もう生まれ変わりたくないと思っていて。仏教徒やったんやけど、輪廻転生マジでイヤ、もう今回でラスト!と思いながら生きてます。このスペックで生まれたことには、ほんとに意味があると思うし、この状況下で、この私で、この時代に生まれたことがすべてだと思うので。ただ、生まれ変わり自体は、私は信じているので、私の場合はこれが輪廻の最後!と思っていて、「次行きたいところは?」と訊かれると、十二次元。

──干支ともかかっていますよね、歌詞では。

十二っていう言葉が……十二次元と、十二支と、1年は十二ヵ月だったりとか、時計も十二時間で一周だったりとか。あと、私はクリスマスに生まれているから。十二月は年の終わりだから、十二月になったら考えよう、とか。でも、十二月って、いちばん死んじゃう人が多かったりとか。

──それを作品として実現させたのが、10年後になったというのは?

それは全部、アートワーク含めて、ここに辿り着くために、今までの作品を作ってきました。「ヴィーナス」は女神で、そのあと「桃源郷」を作って、「スリラ」を作って。アダムとイヴで分かれて「金星」とか、「催眠術」は忘我する状態とか、「HALF」は死んでいるけど生きている、みたいな。全部この十二次元、なんでもかなう場所に来るために、作ってきました。言わなかったけど、メンバー以外には。

供物を捧げるような気持ちで、ステージを作ってきた

──コロナ禍の途中から現在まで、いろんなバンドのライブを観に行っているんですね。そうすると、コロナで思うようにライブができなかった間に、お客さんが離れてしまった、作っている曲とかやっているライブは変わらず良いのに、そういう状況になっている。というケースを目の当たりにすることが多くて。

うん。

──でも同じように、思うようにライブ活動をできなかった間に、女王蜂は、お客さんが増えてるんですよね。大ヒット曲とか、大バズりとか、なかったのに。

そうですね。

──なんで?

あははは! でも、私たちのやっていることって、ほんとにおもしろいと思うし、かっこいいと思うし、かわいいと思うし。すばらしいことをやっている、という自信があって。でもそれが、たくさんの人に受け入れられるためにやってきたかっていうと、違くて。自分の中から出て来たものを、表に出そうとする時に、人の力を借りないといけなくて。その力を借りようとする人たちの手が、本当にあったかいっていうことだけが、ここまで続いて来た理由だと思っていて。私のアイデアがヤバくて、手をつないで来たメンバーが本当に強くてかっこよくて優しくて、力を貸してくれる人たちの手があったかくて。ということが、簡単に言うと、奇跡って言葉でまとめたがるんだけど、たぶん業ですよね。私たちはステージをやんなきゃ食べていけない、とかの前に、生きてゆかれないから。コロナ禍でステージに立てなかった時も、有観客、無観客とかそういうことじゃなくて……自分たちは、お客さんに対してだけやっているんじゃなくて、自分たちの生きてきた存在証明でしかない。それはもう、誰が観ていようといまいと。最初からそういうバンドだったので。人とつながりたいから音楽をやっているわけじゃないんですよね。認められたいから音楽をやっているわけではない。もっと、供物を捧げるような気持ちで、ステージを作ってきたし。それが根底にあるからこそ、お客さんは離れないでいてくれてるのかな。

──確かにお客さん、すごい熱心で、一過性の感じがしないんですよね。濃いままで増えている。

うん。でも、集客とか、会場のサイズとか、もちろんもっともっと上がっていきたいけど。ドームとかの公演で、私が豆粒くらいにしか見えなくても、みんな私のことを……LEDモニターとかがなくても、伝わるものがあると私は思う。そこはあきらめちゃダメだな、というのは、最近思う。

普通に、ビヨンセたちとかとタイマン張れるようなものを、って思ってやっているだけ

──フェスやイベントからよく声がかかるようになったのって、いつ頃から?

もともとフェス、けっこう呼ばれとったんよ。

──最初の頃って断ってなかったですか?

ふふふ、「夜しか無理」みたいな。

──あ、やっぱり。

外で真っ昼間とかヤだ、照明効かんやん!、みたいな。

──で、考え方が変わった?

うん。今は、お昼間でもやれちゃう。なんなんでしょうね?

──そうなったのって、活動休止が明けてからですよね。

だと思う。休止前は、続ける気がなかったから、女王蜂自体を……フェスのお客さんを総取り、って気持ちになれたのは、いつからなんだろうな……ここ5、6年ぐらいかな。

──まさにその5~6年前にフェスで観たら、ものすごい異端だったんですね。浮きまくっていて、オーディエンスも唖然としていた。で、この間、2022年の夏に観た時もそうだった。浮いているし、異端だった。でもフェスに呼ばれる数は増えているし、フェスの場で初めて女王蜂を観た人が、ワンマンに来るようになっていないと、この動員の増加は説明できない。

うん、うん。そう思う。なんなんでしょう?

──それを知りたいんです。

でも、異端って思われるのがとても不思議。えっ、普通じゃん? と思っているから、本当に異端なんやと思う(笑)。異端かしら? やっぱり、めっちゃくちゃ実直にめっちゃ練習して、めっちゃ準備して、めっちゃ身体作って顔作って、めっちゃ髪巻いて、ギャーッ!てやって……ステージで生まれるものしか見てないから。だからシーンとか、「これ好きならこれも好きっしょ?」とか、そういうものがわからなくて。さみしいな、と思った時期もあったけど、さみしいなって思っている同士で、一対一で会えたりとかもして。あ、こんな息の合う人がいるんだったら、やっていけるな、と思ったんだけど、気がついたら、その数がすごいことになっていて。うれしいけど、なんなんでしょうね?

──女王蜂、濃いまんまだから、カルト・スターになるならわかるんですけど、そうじゃないのがおもしろくて。これを最高と思う人が、こんなにいっぱいいるんだな、という喜びがあります。

だから、アンダーグラウンドの香りがするとか、いろんな言葉を贈ってもらうこともあったんだけれども、本人がまったくそれを思ってないってことが、おもしろいんだろうな、と思っていて。私としては普通に、ビヨンセたちとかとタイマン張れるようなものを、って思ってやっているだけだし。ただ、やるべきことが見えていて、それをどこまでやれるか、っていうだけのことなので。昔、小さなライブハウスに出た時に、当時10代で学生だったから、すごい傷ついた言葉があって。ライブ終わったあとに、うちらの次のバンドが、開口一番に「音楽で勝負します」って言って、ライブを始めて。こんなにいろんなものを聴いて、音楽が好きで、ステージが好きで、衣装もがんばって作ってやってるけど、「音楽で勝負します」っていうお高いまとまり方ってあるんだ、と思った時に、じゃあ私はステージで勝負します、って思って。

東京ドームになっても画面なしでやりたい

──今やっているツアーが終わったあと、3月2日に東京ガーデンシアター(有明)でワンマンがありますが。

「バイオレンス」をガーデンシアターでやるので、すごく大きな会場で、たくさんのお客さんたちと、ブチアガる、ってこともありながら、「バイオレンス」の血溜まりの世界を……『十二次元』のツアーはいつか絶対やりたいと思っているので、ガーデンシアターで『十二次元』の曲をすべてやるってことはないけれども、『十二次元』にあるものと、「バイオレンス」の血なまぐささを掛けたものにしたいと思っていて。みんなエグいところで踊ることになると思います。

──今回も画面なし?

なし。

──本当に東京ドームになっても画面なしでやりたい?

やりたい。怒られそう。花道作るから許して(笑)。ダメかなあ?

──でも確かに、日本武道館で画面がなかった時も、観ていて、ないことを意識しなかったんですよね。半分以上観た頃にやっと、「あれ、そういや画面ないわ」って気づきました。

凝視っていうことを初めてする人もいると思う、私たちのライブで。私もライブとか、表現を観ている時に、それがあるかないかで決めちゃうとこがあるから。凝視って、すごく大切だと思います。

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