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hirosato fukasaさんのレビュー
角松敏生さんの「お前らと俺」。桶川ほか2か所の公演を聴いてきました。私は彼のライブから遠ざかっていた時期があるので2015年ごろから始まったというこのスタイルの企画で聴くのは初めてでした。
来年6月の45周年記念アリーナに向けて、そのアナウンスを兼ねて、少人数編成+コンピュータで、普段のフルスペックのバンドツアーでは行ききれない地域会場をまわるという位置づけの企画でもあります。
・・・ちなみに、男気を感じさせつつもちょっと気になるこのツアータイトルは、誤解のないように説明しておくと、「お前ら」は舞台上の参加ミュージシャン(角松さん側の仲間・ほか3名、、ベース山内薫さん、キーボード中川就登さん、ギター鈴木英俊さん)のことだそうです。前回はキーボード奏者1人が付いて回ったので、「お前(1人)と俺」だったわけですね。
開演するとさっそく「すこし特殊なコンセプトのライブなので、」と角松さん御本人からの前口上がありました。まあ20分くらい、とっくり(^^)。このボリュームは音楽録音技術史のミニ講義ですが、今回ここが、なかなか重要なポイントなのです。
(あくまでも わたしの復習のためにまとめると 念を入れて複数個所を聴き、確認しましたが・・・あと、コンセプト説明的には、以下、内容に言及しますので、知りたくないかたは、くれぐれも読むのをここで自制してください)
このお話の時間は、
「こういうの知っておくと、このライブも、より楽しく聴けるよ!」という角松さんのご意向があって、
あえて音楽の普及がレコード(録音著作物)主導であった時代に立ち返って、多重録音(マルチトラックレコーディング)のしくみや意味を説明します、というものです。
録音技術の進歩がアーティストの表現の幅を広げてきたという味わい深さも含みます。
・・こういうことが技術的に可能なら、こういう作品も作ってみたいな、というような創作上、芸術表現上の刺激ですね。
楽器ごと、あるいはそれ以上に細かく分けられたマルチトラックデータの実際的な説明もあります。チャンネルごとに音質を調整したり、位置的な響きを調整したりといった作業が可能になっていること、そのために全体のバランスをとる総合的な編集作業が必要となったという制作工程の意味も説明がありました。数分の説明ながら、思わず通常レコーディングの様子を想像させられ、垣間見るような気分になります。
記録技術が発展を遂げた今の時代だからこそ、アルバムを創ってきた最上の演奏(ベストテイク)の記録データが、要素ごとに分けられたかたちで豊富に残されて(それは要素ごとの組み合わせが将来的に無限に創れる状態だということです)、やっと実現される今回の企画ライブだということが懇切丁寧にわかりました。
もちろん故人となった名うてのミュージシャンの演奏データが残っていてくれて、今も輝きを失わずに聴ける、というのも今回のステージの魅力のひとつです。
、、、といったお楽しみポイントを頭に入れたところで、あと2時間半ほどはデータと対峙し続ける名人たちの生演奏(これが演奏者側にとっては気を遣う大変な時間のようですが)が始まります。旧作の別バージョンが豊富に聴けるようで、楽しみかたはいろいろ、、なかなか聞けない曲をたっぷり含んだ今回の選曲も往年のファンにとっては嬉しいところ。今回も充実感で満たされることでしょう。
行くかどうか迷っていらっしゃる方には、チケットが手に入るようでしたら、一聴をおすすめします。
角松さんの音楽が、録音技術の歴史とともに歩んできたことを実感できるライブでした。懐かしさと新鮮さが同居する時間に、改めて音楽の力を感じました。
まだツアー中盤ですので、これからも楽しみにしています。
p.s. 客席側小道具(笑)持参状況について。
今回の選曲のなかには紙飛行機を飛ばすのはありません。
ライトは、ところどころで皆さまご自由に灯して、楽しくやっている感じです。
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- 2025/10/01 (水) 13:51
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公演時間 約20分+二時間半で合計3時間くらいです
ゲスト
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