セレーナ・ゴメスの日本初公演。彼女の熱狂的ファンを"Selenator"（セレネーター）と呼び、そのほとんどが私と異なる性別、年齢層の人たちであるため、今夜はいつにも増してアウェーな雰囲気を覚悟していたのですが、実際に会場である国際フォーラムに集まった方々を見て「やっぱりそうか」と。前を見ても、横を向いても、そして後ろを振り返っても女子、女子、女子と、まあ女子ばっか。それこそここ数日のTwitter、セレーナ関連の書き込みは「女子」に占領されてたしね。16時30分から並んだツアー・グッズの販売なんて、買えたのは開場後の18時30分だし、代理購入を頼まれていたＴシャツは、1種類のデザインを除いて全サイズが売り切れ。野郎ばっかのライブじゃありえない体験だよなぁ、こんなこと。 さて肝心のライブ、まず前座として口火を切ったのは、全米チャートを賑わしている DNCE。オリジナルから TLC や Prince などのカバー曲まで、終始トップ・ギアで会場をあおり、早くも嬌声であふれかえった場内では、鼓膜が揺れること揺れること。この盛り上がりに気をよくしたのか、ボーカルのジョー・ジョナスときたら、ラストの"Cake By The Ocean"では舞台から降り、1階の客席を最後列まで走り抜けるという大サービスも。そのステージングは軽々と前座の域を超越しておりました。 そして、ステージ・チェンジを終えて照明が落ちると、DNCE をはるかに凌ぐ、悲鳴にも似た歓声が場内を埋め尽くし、舞台背後の大型スクリーンに白色の光線が大きく渦を巻くと、その中心にセレーナが。ここからヒット・ソングを続けざまに浴びせかける展開に、すっかり興奮のゲージが振り切れてしまった私なのですが、今回のツアーはとにかくスケールがデカい。「これぞアメリカのショウビズ」って感じ。細部にまで行き届いた演出が素晴らしく、映像は前述のオープニングから曲間のつなぎまで、印象的な場面をいくつも創ってくれたし、バンドを左右両端に配置して、広く保たれた舞台上では、ダンサーたちのパフォーマンスがまあ映えること。低音を効かせた音響も秀逸で、全体のバランスは保ったまま、客席の盛り上がりを最大限に引き出せるように調整されて、どの部分を切り取っても超一流！ そしてそれらを集約して解き放つ、セレーナの圧倒的な存在感を目の当たりにしたら、客席の熱狂はもはや必然で、間違いなく観る者を非日常空間へと連れていってくれました。 それにしてもセレーナ、よくぞこんなに素晴らしいエンターテイナーへ登り詰めたもんだ。歌手としてのデビュー時は、大人の事情でバンドの一員として売り出され、特徴に乏しい楽曲を頼りなく歌っている姿が痛々しく見えて、「やめときゃいいのに」なんて思ったことも。それが今や、激戦区で知られたアメリカのショウビズ・シーンでビッグマネーを稼ぎだし、素晴らしいパフォーマンスを堂々と目の前で魅せてくれているんだから、これはもう感動モノですよ。最高の時間はあっという間に過ぎ、セレーナから受けるシンガロングのあおりにもすべて乗っかって完全燃焼。「1階14列目」という座席もステージまでは至近距離で、彼女の一挙手一投足をしっかりとこの目に焼き付けてまいりました。アウェーだなんだと書き出しつつ、結局は「いつも通りにライブを満喫した」ってお話でした。あー、楽しかった。