Eve 東名阪ツアー・ファイナル公演で見せた姿と“音”で伝えたメッセージ

2019/05/10
Eve 東京公演

Eve 2019 春Tour[おとぎ]
2019.4.29 Zepp DiverCity

会場に到着すると、エントランスにはうさぎの頭を持つ紳士と淑女がお客さんを出迎えてくれた。そこから始まるのは私たちが住む現実とは隔離された、もうひとつの世界だ。Eveが2月6日にリリースしたアルバム『おとぎ』を携えて開催した東名阪ツアー『Eve 2019 春Tour[おとぎ]』のファイナル公演。ライブ全編にわたり、ハイクオリティなスクリーン映像を駆使しながら作り上げたライブは、「ここではないどこか」のようでありながら、限りなく私たちが住む現実に近い物語の世界だった。

Eve 東京公演  撮影=山川哲矢

Eve 東京公演  撮影=山川哲矢

開演時間、『おとぎ』のオープニングを飾るインスト曲「slumber」が流れ出し、スクリーンに映し出されたテレビ画面がズームアップされると、テレビの中を覗き込むような演出とともにEveがステージに現れた。ダンサブルなリズムにのせた「トーキョーゲットー」からライブはスタート。Eveが全身を大きく使い、ハンドマイクで歌いはじめると、序盤から会場は熱狂的な歓声に包まれていく。デビュー当時からEveのミュージックビデオの多くを手がけるMahらによる退廃的な映像とシンクロして、拡声器で声を歪ませながら歌った「デーモンダンストーキョー」、Okamotoが手がけたキュートな映像とともに弾ける恋の甘酸っぱさを描いた「あの娘シークレット」へ。激しいロックナンバーから軽やかなポップナンバーへと曲調が次々と変わっていくなかで、ステージ前面には透過性の紗幕が張られ、ステージ上に立つEveを挟んで、バックスクリーンにも映像が映る。二重構造のスクリーンを駆使して、二次元とリアルが交錯する立体的な景色を見せながらライブは進んだ。

Eve 東京公演  撮影=山川哲矢

Eve 東京公演  撮影=山川哲矢

Eve 東京公演  撮影=山川哲矢

Eve 東京公演  撮影=山川哲矢

この日のバンドメンバーは、中村昌史(Ba)、沼能友樹(Gt)、堀正輝(Dr)という3人。そのセンターに立つEveのワンマンライブの経験で言えば、まだまだ数えるほどだが、昨年の『メリエンダ』ツアーと比べると、ボーカリストとして存在感は格段に増していた。約2,500人を収容する大きなライブハウスを即日完売させる期待値の高さに全力で応えようとするショーマンシップ。それはEveという若きシンガーソングライターが持つ、クリエイターとしての才気だけでなく、表現者としての気概も感じさせるものだった。ステージ前面のスクリーンがひび割れるような映像と共に、紗幕が一気に上がった「アウトサイダー」では、Eveの姿をはっきりと捉えることができた。エッジの効いたロックサウンドに身を委ねて、「いけるか、東京ー!」と叫び、ぐいぐいとお客さんを巻き込んでいくEve。あるときは絶対的なカリスマ性を持つシンガーとしての存在感を放ったかと思えば、またあるときは物語の登場人物のひとりのように曲の中に溶け込んでいた。

Eve 東京公演  撮影=山川哲矢

Eve 東京公演  撮影=山川哲矢

再び紗幕が下りると、それまでハンドマイクで歌っていたEveがエレキギターを持ち、「迷い子」「ホームシック」という、Eveの楽曲の中でも抒情的な表現を浮き彫りにしたミディアムナンバーを続けて披露した。空想的なアニメーション映像が主軸だった『メリエンダ』ツアーと比べると、今回はリアルな質感の映像が多い。さらに、もうひとつ印象的だったのは、スクリーンで映し出されるストーリーに没頭していると、実はそれが額縁のなかの箱庭世界を覗き込んでいるだけだった、という演出だ。たとえば、少年少女の物語を学校の黒板にチョークで描いた「sister」、ブクブクと水泡が浮かぶ水中に沈んだような錯覚がする「楓」がそうだった。あたかも現実だと思い込んでいたことが、朝目覚めたらすべて夢だったと暴かれるような感覚。そうやってライブはいくつもの物語を俯瞰するように進んでいったが、それは決して他人事のファンタジーなんかではなく、「あなたへの歌」として聴き手と共鳴し合っていた。なかでも、<帰る場所ならここにあるから> <あなたは弱くないから>と語りかけるように歌う「楓」の包容力が素晴らしかった。物語の音楽をとおして、他者とのコミュニケーションを図ってゆくEveの表現が際立った瞬間だったと思う。

Eve 東京公演  撮影=山川哲矢

Eve 東京公演  撮影=山川哲矢

ダークなインスト曲「fanfare」で一度ステージ袖に捌けたEveが再びステージに現れると、白を基調とした衣装から、黒い衣装へと変わっていた。そこから「ナンセンス文学」「ドラマツルギー」という、前作アルバム『文化』のオープニングを飾るダンサブルなナンバーを立て続けて披露した。リズミカルに躍動するその楽曲たちに、一聴して踊らずにはいられない衝動が湧きおこるが、歌詞で歌われるのは、決して他人には理解できない孤独感、あるいは見栄と虚栄を共喰いし合い、見知らぬ誰かの価値観を引き受けては自分不在のまま迷走するような虚しい心情だ。スクリーンには、その虚無感を象徴するように、顔のない人物や、化け物のように変形していく実態のない人物が軽やかにダンスをし続けていた。この日のライブ前半で表現したものが「僕と君」を主体にしたふたりの物語だとしたら、後半のタームで描いたのは「僕個人」のなかに蠢く闇の物語だった。

Eve 東京公演  撮影=山川哲矢

Eve 東京公演  撮影=山川哲矢

一切MCを挟まずに「ラストダンス」まで14曲を歌いきったところで、「楽しい瞬間は早いもので、次で最後の曲になります。みんなと盛り上がっていきたのですが、いけますか?」と問いかけると、本編のラストソングは「僕らまだアンダーグラウンド」で締めくくった。開放的なバンドサウンドにのせて、<ちょっと先の未来を 君と話がしたいんだ> <最低な夜を越えようぜ>、そんなふうに伝える迷いのないメッセージは、まだまだ幕を開けたばかりのEve自身の物語とも重なる、決意の歌のようにも聞こえた。
アンコールでは、沼能が弾くギターのイントロで大きな歓声が湧いた「お気に召すまま」のあと、「こんな規模でライブをやるのは初めてのことで、夢を見ているような不思議な感覚です。こういう日を大事にして、また一つひとつ進んでいきたいと思います」と語りかけたEve。「次の曲をやったら終わっちゃうから……」とライブの終わりを惜しむようにしながら、「令和も仲良くしてやってください」と伝えると、アルバム『おとぎ』でも(歌詞のある曲としては)最後を飾る「君に世界」でライブは幕を閉じた。アコースティックギターにのせて紡いだ、人生の終わりを想像させる悲しい物語には、だからこそ「いかにいまを生きるか」という想いを託されていたように思う。ライブ中にEveが言葉で何かを伝えることは少なかった。だが、彼が伝えるべきことはすべて音楽のなかにあったと思う。


文=秦理絵

大阪公演&名古屋公演の模様

Eve 大阪公演  撮影=ヤオタケシ

Eve 大阪公演  撮影=ヤオタケシ

Eve 大阪公演  撮影=ヤオタケシ

Eve 大阪公演  撮影=ヤオタケシ

Eve 大阪公演  撮影=ヤオタケシ

Eve 大阪公演  撮影=ヤオタケシ

Eve 名古屋公演  撮影=ヤオタケシ

Eve 名古屋公演  撮影=ヤオタケシ

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