それは夢を叶えた少女の物語 鈴木愛奈1stツアーで堂々の故郷凱旋 千歳公演レポート

2021/04/07
鈴木愛奈

2021.4.3『Aina Suzuki 1st Live Tour ring A ring ‒ Prologue to Light ‒』@北ガス文化ホール

 

2021年4月3日(土)に北海道千歳市の北ガス文化ホール(千歳市民文化センター)で開催された鈴木愛奈1stライブツアー『Aina Suzuki 1st Live Tour ring A ring ‒ Prologue to Light ‒』千歳公演のレポートをお届けする。

本公演は今年の2/11の横浜公演を皮切りに、大阪・名古屋、そして彼女の地元でもあるこの千歳の4都市を巡るライブツアーの千秋楽でもある。きっと昨今の情勢を鑑みて、北海道までは遠征しづらい……と苦渋の決断をしたファンも多かったことだろう。

しかし、アニソンシンガーを夢見て、北の大地ここ千歳を旅立った彼女が”アニソンシンガー”として凱旋した姿は、画面越しに見ても感慨深いものであったというのは言わずもがな。SPICEではツアー初日となった横浜公演の様子もお届けしているので、その点を踏まえた上でのレポートをお届けしたい。

ライブの始まりを告げるのは、ツアータイトルにもなっている彼女の1stアルバム『ring A ring』の1曲目である「The Start of Phoenix」。暗闇の中から、漆黒のドレスを身にまとった鈴木愛奈とバックバンドが映し出されたが、心なしか横浜公演の時よりも彼女の表情には、安堵のような笑顔のような、余裕があるように思えた。続いて「ヒカリイロの歌」、「Cocoon」そして「Butterfly Effect」とのびやかで力強い歌声を故郷のファンに披露した。

今日という日にたどり着いた彼女の口から弾むように出た「ただいまー!」のひと言で救われたような気分になれたファンも多かったことだろう。そんな地元だからこそ「これまでの公演で1番緊張しています」と本音を漏らす彼女を励ますような大きな拍手に包まれ、会場の雰囲気も一気に和やかになり、改めてここが彼女のホームであることを実感する。

横浜公演では「温かく迎えてくれたファンの皆さんとの”縁”を大切に繋いでいきたい」とこれからのツアーに対する決意を語ってくれた彼女だったが、その宣言通り、名古屋や大阪など各地のファンと”縁”を結んできたことを、まさに”土産話”として語ってくれた。あれもこれもと話したいことが溢れ出てくるMCパートだったが、続く「やさしさの名前」や「はつこい」といった優しく温かな楽曲では、そこで彼女が語り足りなかったことをまるで代弁するかのように歌い上げ、ツアー初日とはまた違った聞こえ方をしたのがとても印象深かった。

実を言うと、今回の会場である北ガス文化ホール(千歳市民文化センター)は彼女が幼い頃から親しんできた民謡の大会で何度か出演した経験がある舞台なのだという。本当の意味で十数年ぶりの”凱旋”となった訳だが、そんな思い出がたくさん詰まった会場だからこそ歌声に滲み出る何かがあったのかもしれない。

続くアコースティックコーナーでは純白の椅子に腰掛け「antique memory」、「繋がる縁 - ring -」を披露。 アコーディオンを中心としたアンサンブルには、相変わらずうっとりとしてしまう。また余談だが今回のライブではバックバンドの各メンバーにもしっかりとスポットが当てられていた部分も、このようなライブ演出を楽しむ一助になっていたことは付け加えておきたい。話によれば名古屋公演から今回のように、バンドメンバーにもマイクが付いて、コミュニケーションを楽しめる環境になったのだという。後日、彼女のTwitterの方でも改めて各メンバーの紹介がされていて、彼女自身のライブへの思い入れの深さを改めて感じたし、余韻に浸りたくなる気持ちが一緒なんだなと共感できた。

閑話休題、舞台は再び暗転すると和楽器のBGMが流れ始め、そんなバンドメンバーによるリレー方式のソロパートでライブは再び幕を開ける。そして着物のような真紅のドレスにお色直しした彼女が登場し「玉響」では彼女のルーツでもある民謡のような抑揚ある歌声を披露。続く「祭リズム」はまさに地元北海道のソーラン節をモチーフにしたナンバーで会場は大いに盛り上がり、「月夜見 moonlight」ではまるで夜空に浮かぶ星々のように揺れるペンライトの光で会場が包まれた。

ツアーも千秋楽となれば、もう既に勝手がわかっているファンも多く、彼女がお色直しした衣装へと話題を移す前にペンライトをグルグル回すジェスチャーで「回ってー!」と舞台の彼女へとアピール。思わず喋り出す前に笑ってしまった彼女だったが、まるでファンに急かされるかのようにその場を回るそのやりとりが微笑ましくも温かい。

続くアニソンカヴァーパートは『第7回全日本アニソングランプリ』ファイナリストの肩書きを持つ彼女ならではセクションだ。横浜公演では『劇場版 名探偵コナンから紅の恋歌』主題歌の「渡月橋~君 想ふ~ 」、TVアニメ『デジモンアドベンチャー02』主題歌の「Butter-fly」の2曲を披露してくれたが、今回まず歌ったのはTVアニメ『地獄少女』の主題歌「逆さまの蝶」。この曲は彼女がかつてアニソングランプリの札幌予選に出るために歌ったという思い出深い一曲だ。またこの時、彼女が着ていた真紅の衣装も地獄少女の世界観にピッタリの演出となっていた。

続いて披露したTVアニメ『バジリスク~甲賀忍法帖~』主題歌の「甲賀忍法帖」は、そんなアニソングランプリの札幌予選を勝ち抜き、駒を進めた決勝で「この曲でアニソンシンガーになるんだ!」という想いを込めて歌い上げた楽曲だ。この時は残念ながら優勝には及ばなかったが、あの時の夢を叶え、アニソンシンガーとして帰ってきた故郷の地で、再びこの歌を堂々と歌い上げた。そんな話を聞いて目頭が熱くならない方がおかしいと言ってもいい。

ライブも後半戦に突入。最新シングル「もっと高く」はアニソンシンガーを目指し上京し、夢を叶え、再び千歳へと帰ってきた彼女の故郷に対する新たな決意表明にも聞こえた。続く『遥かなる時空-そら-を翔ける 不死鳥-とり-のように』もカヴァーパートに負けないくらいアツく歌い上げた。

再び会場は暗転し、最後はアルバムの曲順同様に「Eternal Place 第一楽章」、ボーカルありの「Eternal Place 第二楽章」そして「Eternal Place 第三楽章」と続く。純白のドレスを身に纏い、再び舞台に現れた彼女はこれまでのツアーの軌跡をじっくりと振り返るように心を込めて歌い上げる。最後にはバンドメンバーも交えて「ラララ〜」の大合唱の中、舞台は幕を閉じた。

アンコールを求める拍手に応じて、今度はツアーグッズのTシャツへとお色直しをした彼女が再びステージへと上がると、この日のオープニングナンバーでもある「ヒカリイロの歌」を披露し、アニソンシンガーへの強いこだわりを口にした。

「もちろん、アニメやアニソンが大好きだったということが第一にあるのですが、それ以上にツライとき、苦しいときにアニメやアニソンに救われて、心の支えとして存在していたから今の私があると言っても過言ではありません。私もそんな悩みを抱える人に寄り添っていけるようなアニソンシンガーになりたいと思って、この道を目指しました。」と胸の内を明かした。また「どうしてもツアーファイナルは千歳でやりたかった」と、この凱旋ツアーまでの幾多の道のりとその想いを語ると会場は温かい拍手で包まれた。

以前、横浜公演のパフォーマンスを見て「これから”アニソンの歌姫”としてのステップを駆け上がっていくだろうと予感させる何かを感じずにはいられなかった」と記したが、本公演でそれが確信へと変わった。見る者を圧倒する歌唱力はもちろん、パワフルなステージングに加え、このようなアニソンシンガーに対するエピソードさえもが、彼女が今日、この場に居るために必要だったパズルのピースのように感じる。そして今後もっと大きな舞台へ羽ばたくためのお膳立ては揃ったはずだ。

結びの挨拶では「ライブの延期を経て、ツアーとしてパワーアップして帰ってきた本公演だったが、そんな苦難を乗り越えたからこそ、彼女が常日頃から大切にしている”縁”をより強く感じることができた」「決して会場に来られなかったとしても、SNSなどでコメントを見かけたり、応援してくれている人のメッセージに何度も救われてきた」と改めてファンに向けて感謝を表し、アンコール最後の1曲『今日のわたしをこえて』を披露。「今日、ここから見た景色は絶対に忘れません。ここが私が生まれた場所であり、アニソンシンガーを夢見て旅立った場所なので、また千歳に戻って来られるようにこれからも頑張ります。これからも応援よろしくお願いします!」と力強いメッセージを残して2時間にも及ぶ公演は幕を閉じた。

ツアー初日を見ての感想は「きっと何者にでもなれるからこそ、これからどんな道を歩んでいくのだろうか?」という考えに耽ったライブだったが、今日の公演は”そんな鈴木愛奈に至るまでのルーツ”を知る物語だったと言えよう。「アニソンが好きで、アニメが好きで……」なんて言葉は、この業界に関わっていればある意味当然で陳腐なようにも聞こえてしまうことだ。その想いを、態度や表情で、そして何より歌声で届けることが出来るからこそ、彼女は”アニソンの歌姫”足り得る素質の片鱗を感じたのだと、今なら言い切ることが出来る。

ツアー初日で感じた萌芽は、見事に千秋楽で蕾へと成長した。彼女のこれからに、一体どのような未来が待っているかは誰にも分からないが、ただいまと言えば暖かく迎えてくれる場所があるということ以上に心強いものはないだろう。初のワンマンライブツアーで「おかえり」が待っている場所にたどり着けたことは彼女にとっても幸運だったはずだ。

さらにライブの最後には彼女の誕生日でもある2021年7月23日(金・祝)に東京ガーデンシアターにて追加公演の決定が発表された。鈴木愛奈はまだ進化の途中にある。だからこそ、その始まりから過程を楽しめるチャンスは今しかないはずだ。

レポート・文=前田勇介 撮影:原田直樹


 

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