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オンラインならではの演出を交えて世界観を見せた ライブツアー『降幡 愛 1st Live Tour APOLLO』最終公演レポート

2021/05/10
ライブツアー『降幡 愛 1st Live Tour APOLLO』最終公演より

2021.4.29(THU)降幡 愛 1st Live Tour APOLLO@Zepp DiverCity for Streaming+

4月29日、降幡 愛のライブツアー『降幡 愛 1st Live Tour APOLLO』の最終公演が東京・Zepp DiverCity(TOKYO)で開催された。

降幡は先月18日からソロとしては初めてのライブツアーをスタート。これまで横浜、名古屋、大阪の3都市のライブハウス・Zeppを巡り、盛況のうちにパフォーマンスを繰り広げていた。ところが、ツアーファイナルとなる東京公演の直前、東京、京都、大阪、兵庫で新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が発出される事態に。ライブは急きょ、無観客配信への変更を余儀なくされてしまった。

しかし降幡と、ギター、ベース、キーボード、ドラム、コーラスからなるバンドメンバーは3都市での公演で得たテクニックや確信のもと、このライブでは堂々たるプレイを披露。また制作チームは、おそらく時間がなかっただろう中、配信=映像ならでは、およそ実際のステージでは実現し得ない演出の数々を施していた。


■「AXIOM」MVに出演の宇宙人が煽り映像に

ツアー会場限定で7インチシングルレコードが販売され、また各音楽配信サイトで配信中の新曲「AXIOM」のMVにも登場した宇宙人キャラクターが登場する煽り映像と、その「AXIOM」をアンビエント仕立てにリアレンジしたオープニングSEを切り裂くように、印象的なピッキングハーモニクスが鳴り響いたところからライブはスタート。MV同様、ピンクブロンドのボブヘアにメタリックなミニワンピースに身を包んだ降幡が、ツアーのロゴがプリントされた巨大なフラッグを片手に、ツアーのテーマソングでもある同曲をパフォーマンスする。


過日のインタビューで、降幡は「AXIOM」について、シティポップ・昭和歌謡をベースにしたこれまでの自身の楽曲群にDaft Punkの2013年のアルバム『Random Access Memories』のテイストを散りばめたと評していた。そしてライブではこのフューチャーポップナンバーを軽やかなステップを踏みながら歌い上げ、その後は往時のテクノポップライクな楽曲群でセットリストの前半戦を構成する。

デビューミニアルバム『Moonrise』リリース当時、降幡は、音源の中での自作詞曲はすべてその歌詞の中のキャラクターを演じるように歌っていると語っていたが、収録曲の「プールサイドカクテル」ではそのイメージを一新。“ライブバージョンの降幡 愛”とでも言うべき、より生身に近いエモーショナルな歌声を響かせ、続く「ラブソングをかけて」でも音源にはない魅力を存分に見せつける。頭サビの〈今夜はラブソングをかけて〉や、エンディングの〈かけて〉ではカメラ目線でラブリーな声を聴かせていた。


「AXIOMは公理……仮定以前の説明できないなにか、という意味」「世界はそういう運命的なものでできあがっていると思う」「今回ライブが配信になったのもきっとAXIOM」と語った降幡は、続いて「パープルアイシャドウ」をドロップ。オリジナルバージョンよりもナマ感・バンド感の強いアレンジが施されたこの曲でライブクルーは、〈今日だけは雨のせいにさせてちょうだい〉と歌う降幡の姿に雨の伝うガラス窓のCGを合成するという、まさに配信ライブならではの演出を施していた。また「RUMIKO」では、降幡の胸元にグリーンのストラトキャスターが。この曲の原曲よりもパーカッシブにお色直しするバンドをバックにギターソロを披露した。


■NAOTO登場で二胡とヴァイオリンがライブを盛り上げる

さらにチャイニーズスケールをベースにした楽曲「桃源郷白書」では二胡奏者にしてヴァイオリニストのNAOTOが登場。印象的なイントロや2コーラス目明けのソロのフレーズで魅せると、その後のMCタイムでは一転。降幡から「今日のライブで生二胡、初めて見ました」と振られると「初めて“生二胡”って呼ばれました」と返し、ふたりして「“ニコ生”みたいですよね」と笑い合うノンキなトークを繰り広げる。しかし、その後はさらに一転。NAOTOは得物をヴァイオリンに切り替えると「ルバートには気をつけて!」や「シンデレラタイム」ではメロウで流麗なソロを響かせていた。


そしてライブ本編最終盤はエモーショナルな構成に。「支えてくれているみなさんへの曲です」と、バラードナンバー「OUT OF BLUE」を優しく歌い上げたのちには、アッパーなナンバーのつるべ打ち。「SIDE B」では冒頭にサビのワンフレーズを朗々と歌い上げる、いわゆる頭サビの構成にリアレンジしつつも、その後にはNAOTOの熱いヴァイオリンをバックに、降幡は拳を振り上げつつ、高らかにシャウト。さらにスカビートが印象的な「Yの悲劇」では「近所迷惑でもいいじゃないか!」「出し切れよ!」とディスプレイの前のオーディエンスを煽ってみせた上に、「カモン!」とコーラスの会原実希を呼び込みつつ、彼女のサックスソロを大フィーチャーさせてみせていた。


弱冠20歳の女性ドラマー・たにおの刻む軽快な8ビートに乗せてバンドメンバーを紹介した降幡は「そしてボーカルは私、降幡 愛です!」「みんな愛してまーす!」のシャウトとともにデビュー曲「CITY」をパフォーマンス。さらに最新シングル『AXIOM』のカップリング曲「うしろ髪引かれて」をタフに歌い上げて「みなさん、本日は本当にありがとうございました」の言葉とともに、ステージをあとにした。


■オンライン配信ならではの演出、そしてネクストステージへ

しかし、配信サイトのチャット欄やTwitterでは視聴者たちのアンコールが鳴り止まない。これに応えた降幡は、客席フロアの入り口から再びZepp DiverCity(TOKYO)に登場。花束を片手に新曲にして、ハッピーなウェディングソング「シークレット・シュガー」を初披露する。これにオーディエンスが驚くのもどこ吹く風とばかりに、ハンドクラップを煽りつつ、粉雪舞うCGの中「真冬のシアーマインド」を歌うと、それまで度肝を抜かれていたチャット欄、Twitterもハンドクラップの絵文字の嵐に。


そして「私にその予定はないんですけど、レーベルスタッフの女の子が結婚するのをお祝いするためにこの曲を書いた」と、いたずらっぽく笑いつつ「シークレット・シュガー」の正体を明かした彼女は、再びグリーンのストラトキャスターを肩に掛ける。そして、彼女がライブ冒頭でも会場に鳴り響いていたピッキングハーモニクスを奏でたところで、この日の本当のラストナンバー「AXIOM」がスタート。クールなイメージの原曲とは違い〈ビッグバンを起こそう〉と力強くシャウトした彼女は「みなさん、最後まで楽しんでくれて、そして『APOLLO』の乗組員として一緒に月旅行をしてくれてありがとう」と、自身初のツアーの最終公演を締めくくった。


7インチシングル『AXIOM』リリース時のインタビューで降幡は、ライブはレコーディング音源から派生した、また別種のエンタテインメントだ、と語っていた。そして今回の配信ライブはまさに彼女の言葉のとおりのものに。彼女自身は、実演しているという事実から生まれるエモーションゆえなのか、音源とはまた違う、そして力強いボーカルを響かせ、バンドも楽曲に対して生演奏ならではの大胆な解釈を加えて、リスナーを楽しませていた。さらにライブクルーもそれは同様。無観客配信ライブという、ある種の苦境を逆手に取り、ステージの生中継に大胆にCGを混ぜてみたり、客席中央最下方から煽りでステージ全体を捉える、実際の人間の目では感知し得ないアングルでライブを切り取ったり、ギターソロやドラムのフィルの手元をフィーチャーしたりと「ライブ映像だからできること」を徹底的に模索していた。


これまでトレンディドラマ的な悲恋を戯画的に描く作詞家として鳴らしていた降幡。そんな彼女が、本当にブライトな「シークレット・シュガー」を初めて披露したことも証左となっているが、今回の配信ライブは降幡 愛と彼女を支える楽曲制作陣、プレイヤー陣、レコーディングスタッフ、ライブクルーのネクストステージを提示する公演となったと言えるだろう。


取材・文=成松 哲 撮影=江藤はんな ( SHERPA+ )

 

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