ReoNa 「まわり道」なツアー開幕 息を弾ませ届けるお歌に乗せた「歪んだ響き」 初日レポート

2022/10/06
ReoNa

2022.10.2(Sun)ReoNa ONE-MAN Live Tour 2022 "De:TOUR STANDING -歪-"@CLUB CITTA'
※本レポートには一部演奏楽曲に関する記載があります、ご了承ください。

ReoNaの「まわり道」が始まった。

6枚目となるシングル「シャル・ウィ・ダンス?」では初めて「踊る」事にチャレンジした彼女は来年に向けて止まることがない。10月28日より放送開始となるTVアニメ『アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】』のオープニングテーマにも新曲「Alive」が起用されることが発表されているし、何より来年3月には自身初の日本武道館でのソロコンサートも控えている。

そんな今、彼女が選んだのは武道館への「まわり道」だ。10月1日から始まった『ReoNa ONE-MAN Live Tour 2022 "De:TOUR』はSTANDING -歪-"、SEATING -響-"と2つのコンセプトで同時に全国を回ることになっている。

全席指定、座って音楽を楽しむ「響」と、オールスタンディングで楽しむ「歪」。正反対のコンセプトのツアーを交互に行うというのは本人、バンド、スタッフ全てにおいて負担が大きいものだと思う、だがそれを「まわり道」という一言でやりきろうというチームのモチベーションは恐ろしく高いのだろう、今回はオールスタンディングとなる「歪」初日となる10月2日のCLUB CITTA'公演レポートをお届けする。

久しぶりのオールスタンディング、記憶が確かならば2019年の『ReoNa ONE-MAN Live “Birth 2019”』以来のはずだ。絶望系アニソンシンガーを標榜するReoNaのライブは緩急ありつつも、どこか自分とReoNaの一対一の世界を噛みしめるように楽しむものだった気がする。本人が敬愛するエド・シーランの曲が客入れBGMと流れる中でも、会場に詰まりきったファンはどこかソワソワしているようだ。

距離が近い、隣の人の熱を感じる、この感覚はReoNaのライブではとことん新鮮だ。前日行われた「響」も拝見したが、始まる前の温度感から全く違うライブのように感じる。

「Shape of You」から「Castle On The Hill」に曲が切り替わった瞬間、ボリュームが上がる。手拍子が響き渡る中、バンドメンバーがステージに登場、暗転するでもなく、遅れてそのままReoNaが現れる、堂々と胸を張ってステージの中央に立つ姿を見て、圧倒的な頼もしさを身に着けたのを感じたが、感慨に耽るまもなく、キーボーディストでバンドマスターでもある荒幡亮平が不協和音を鍵盤から鳴らす、それをキッカケに舞台は蒼一色に、MCもなく一曲めにフロアに叩き込まれたのはReoNaの楽曲の中でも屈指の強力な一撃「Independence」だ。

オールスタンディングとは言え、声出しに関してはまだ出来ない状況。だが観客は両手を高く掲げ、思い切りクラップしながら激しいサウンドに身を任せていく、幾百の掲げられる拳の先は全てReoNaに向けられている。

ツアー初日となる1日、2日のライブを見て感じたのは、とにかくReoNaの成長だ。

歌が太くなった。声が低くなったのではない、歌の芯がとにかく安定しているのだ。儚げに揺らぐ声が彼女の魅力の一つでもあるのだが、一曲を歌いきる体力と折れない信念が全編通して感じられる。「お歌」に陶酔して、思いっきり身も心も預けても今のReoNaなら受け止めてくれるという信頼がある。

ツアーも始まったばかりなので、詳細なセットリストなどのレポートは避けるが、この「歪」はこれまでどこかReoNaに感じていた歯がゆさを払拭するものになりそうだという印象が強い。ReoNaの代表曲と言えば「ANIMA」などの心の闇を貫くような激しい曲と「虹の彼方に」などの悲しみに寄り添うようなバラード、両極のような楽曲たちが「ReoNa」という強い表現者からアウトプットされることで、「絶望系」という結束を見せている。

だが、惜しむらくは彼女のメインフィールドであるライブとしては激しい曲を伝えきれていなかったのではないか、という思いが僕にはある。

勿論これには昨今の感染症対策におけるライブ会場での声出し禁止、収容人数削減などによる影響も大いにあると思う。だが、デビューから今までの数多のライブは、ReoNa自身が「会場の後ろにいたり端っこでお歌を聴いてくれているどんな人とも、一対一でお歌を届けたい」と名言しているように、まずはReoNaというアーティストを理解してもらう、浸透させるターンだったのではないだろうか。

年に一度のアニソンの祭典『Animelo Summer Live』でも、彼女が初登場のパフォーマンスとして選んだうちの1曲は、ピアノ弾き語りのバラードだった。彼女の持つ世界観、寄り添いたい思いが楽曲とともに浸透するために必要な4年間。そして今、この「歪」から、ライブで出し切れていなかった「動」のReoNaが始まる、そんな感覚を覚えた。

「暑いね…」そんな事を言うReoNaは初めてだ。冷静に語り部のように思っていることをひとつひとつ丁寧に語る彼女のMCも数え切れないくらい見てきたが、少し息をはずませながら彼女は言った。初めてステージを見た時にはなかった目の光の強さを感じる、明らかにそこに生きている証を刻みながらReoNaは満員のフロアにお歌を奏でるように、叩きつけるように展開していく。

バンドメンバーも躍動していた。荒幡亮平、山口隆志、比田井 修、高慶”CO-K”卓史、二村 学、今のReoNaの音楽を支えるメンバーも温度の高いステージで汗をかきながら熱のこもった演奏を展開していく。「歪」というタイトルに相応しく、その場で生まれるグルーヴが曲自体の印象も変化させていくようだ。

「歪」というタイトルではあるが、ライブ自体には緩急がかなりあるのもお伝えしておきたい所のひとつ。逆側である「響」を感じさせるような叙情的なパートもある、ということは、「響」のほうにも……?それは両ライブを見て感じてもらいたい。少なくとも僕は初日「響」を見て、絶対に「歪」も見ないとならないと思ったのは本当のことだ。

前にReoNaに話を聞いた時に印象的だったことに「まだフルスペックのANIMAをライブでやったことがない」というものがあった。「ANIMA」がリリースされたのが2020年の7月、まさにステイホーム時期真っ最中だ。声を出すどころか、ライブ自体があまり行えない時期。そんなタイミングでリリースされた曲が彼女の代表曲となったのも面白いところだが、ReoNaはオールスタンディングで、思い切り声を出して、拳を突き上げてもらう「ANIMA」をまだ感じたことがないとぼそっとインタビューの隙間で語ってくれたのだ。

なので詳細なセットリストは避ける……と言ったが、「ANIMA」がライブの何処かで演奏されることだけは伝えておこうと思う。フロア全員が手を突き上げる姿は圧巻。勿論これはReoNaが想像しているフルスペックにはまだ届かないものなのかもしれない。だがこれまでだってReoNaはまわり道をしてきた。それならこのツアーと一緒にもう少しまわり道をしてみるのも、彼女のお歌を愛するものとしては必要な時間なのではないか。

終演後少しだけReoNaと話す機会があったが、「武道館も、その先もありますけど、今はこのまわり道で、ボス戦前にはぐれメタルを倒してレベル上げるように、経験値を積みたいと思っています」と言ってくれたその顔は自信に満ち溢れていた。この秋ReoNaが駆け抜けるこの「まわり道」。最後にはどんな歪んだ響きを僕らに体験させてくれるのか、楽しみでしかたがない。

レポート・文=加東岳史 Photo by 平野タカシ

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