第66回
人生を深く考えさせられる永井龍雲40周年記念LIVE
2017/12/28
龍雲は現在、還暦を迎えたキャリア40年のアーティストとして独自の存在感を持っているが、このコンサートはキャリア・アーティストでなければ出せない、人生を深く考えさせる素晴らしいライブだった。
「ニュー・アルバム『オイビト』は人生作品集!」
12月13日にリリースした龍雲のニュー・アルバム「オイビト」は大人が聴ける内容の濃いアルバムだ。「夢を追い求めるうちにいつしか年老いてそれでも夢を追い続ける人をオイビトと定義する」と龍雲は定義づけしているが、このコンセプトをもとに作られているので、このアルバムはさながら“人生作品集”のように仕上がっている。
収録曲は「胡桃」「オイビト」「献杯」「顧みて」「めぐりあわせ」「親友への手紙」「クロスポイント」「夕映え空から」「ルリカケス」「愛はまだ輝きの中」の全10曲。
このアルバムを聴くと深く人生を考えさせられる。というのは、つづれ織りのように曲がつながっているからだ。
人は誰も還暦を迎えるとそれまでの人生は?と気になり「顧みて」感慨にふけるものだ。そして思い浮かべるのは故郷の山や川、友だちのこと。たまには連絡を取ってみようと「親友への手紙」を書こうとするが仕事に追われて忘れてしまう。すると突然に悲しい訃報が届きお前に「献杯」となる。献杯しているうちにこれまでにやり残した心残りが浮かんでくる。
もしもあのときあの女と別れなかったら自分の人生はどうなっていたのか? と。男と女の「めぐりあわせ」ほど運命的なことはない。しかしながら、もしも運命に逆らえるとしたならば別の人生があったのかも? ふと人生を考えさせる好アルバムである。
「聴き手が歌の主人公と同化して自分の人生を追体験できる希有なコンサート!」
龍雲はコンサートの選曲において、「顧みて」「親友への手紙」「献杯」「めぐりあわせ」というキー曲を見事なまでに適材適所に散りばめていた。だからこそ、コンサート全体が龍雲の人生のつづれ織りのようにつながっていて、聴き手が自分の人生を追体験できるのだ。
3時間を超える長丁場のコンサートだったが、長いと感じさせない龍雲の魅力が凝縮された素晴らしいコンサートだった。2017年度の〈年間ベスト・ライブ〉と言っても過言ではない。
(文/富澤一誠)