第56回
超一流のサポート・ミュージシャン+豪華ゲスト=尾崎亜美ブランド!
2017/07/27
「尾崎亜美・還暦祝いコンサート」
7月22日(土)、東京・渋谷区文化総合センター大和田さくらホールで〈尾崎亜美コンサート〜Life Begins at 60〜〉と題されたコンサートが行なわれた。まさにキャリア・アーティストならではの〈尾崎亜美ワールド〉が確立されていた。むろんここに到達するには一朝一夕というわけにはいかなかった。その年輪があったからこそ現在の彼女が存在しているのだ。
レコーディングにあたって、武藤敏史プロデューサーはアレンジャーに松任谷正隆を起用した。松任谷の音楽センスが彼女に合っていると判断したからだ。こうして彼女のデビュー・シングル「瞑想」は発売され、5万枚のスマッシュ・ヒットになった。これによって彼女は有望な新人と注目され、マスコミで“ポスト・ユーミン”の一番手にランクされた。当然ながら各方面から注目され、資生堂のキャンペーン・テーマに抜擢されることになった。
その頃、資生堂もしくはカネボウのキャンペーン・テーマに起用されるということは“ヒット”が約束されたも同然だった。武藤プロデューサーは述懐する。
「曲ができあがって初めて聴いたとき、“あっ気持ちが動いている”というフレーズがあったんですが、“あっ”がうまくメロディーに乗っていたので、これはいけると確信しました。ここに彼女のポップス・センスが凝縮されていると思ったからです」
“あっ気持ちが動いている、たった今恋をしそう”と彼女は恋にときめく“瞬間”を見事に歌にした。これがたくさんの人々の共感を得たのか、この「マイ・ピュア・レディ」(77年2月5日発売)は30万枚を超えるヒットとなり、彼女は一躍トップ・シンガーへと成長したのだ。と同時に、そのポップ・センスが高く評価されて“作家”としても注目を浴び、杏里「オリビアを聴きながら」、南沙織「春の予感―I've been mellow―」、松田聖子「天使のウィンク」、高橋真梨子「あなたの空を翔びたい」、松本伊代「時に愛は」、観月ありさ「伝説の少女」など“作家”としてもたくさんのヒット曲を生み出し〈尾崎亜美ブランド〉を確立することになる。
シンガー・ソングライターとしてだけではなく、作詞作曲家として、加えて料理、ワインなどのプロフェッショナルとして、彼女は彼女ならではの独自の世界を作り上げてきた。その成果が出たのが今回の〈還暦祝いコンサート〉と言っていい。
「超一流のサポート・ミュージシャン+豪華ゲスト=尾崎亜美ブランド」
ステージ上に所狭しと楽器やPAが置かれているのを見て、「すごすぎる」と思ったのは私だけではないだろう。それもそのはずでとにかくサポート・メンバーが豪華すぎるのだ。亜美のパートナーである小原礼(B)をはじめとして、鈴木茂(G)、屋敷豪太(Dr)、是永巧一(G)、Dr.kyOn(Key)、Aisa(Cho&A.G)など日本を代表するミュージシャンやレジェンドたちばかりだ。こんなにすごいメンバーは〈実力派アーティスト〉でなければ集まるはずはないし、また、コラボレーションなどできるわけがない。それを見事にこなしてしまう彼女はまさにキャリア・アーティストである。
ゲストが登場して彼女の代表曲をトリビュートするという構成が貴重だった。しかも、彼女自身はサポート・メンバーとして参加して、なおかつオリジナルとはまったく違うアレンジでチャレンジだ。正直言って、これは貴重な体験だった。
La Dillが「匂い立つ風」、真心ブラザーズが「時に愛は」、浜崎貴司が「My Song For You」、小坂忠が「風のライオン」、観月ありさが「伝説の少女」など、これらはこの日にしか見ることができない〈コラボレーション・ライブ〉だった。
そしてアンコールはゲスト全員で「Smile」の大合唱。この大合唱の中に身をおきながら私はしみじみと実感していた。キャリア40年を積み重ねないと、また還暦を迎えないと、この高みにまではとうてい到達できないだろうと……。と同時に、尾崎亜美ワールドはどこまで行くのだろう、と期待がさらに高まってきた。還暦から始まる彼女の音楽人生を見届けたいと思う。
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