メジャーデビューから10年、メモリアルな舞台でSHE’Sが躍動&圧倒したクアトロワンマン『She’ll be fine』
2026/06/15
SHE’S 15th Anniversary “She’ll be fine” 2026.6.1 渋谷CLUB QUATTRO
SHE’Sが6月1日(月)、渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブを開催した。普段の動員からすれば小規模公演ということで、会場はもちろんSOLD OUTで立錐の余地もないが仕方ない。この日は、この会場でなければいけない、この会場だからこそのライブなのである。
タイトルの『She’ll be fine』とは10年前に彼らがインディーズバンドとして最後にリリースしたミニアルバムのタイトルであり、それ以前からライブタイトルとして用いていた言葉でもあり、そしてここ渋谷CLUB QUATTROでメジャーデビューを発表したメモリアルな公演でもその名がついていた。結成から15年、デビューから10年という節目の年、思い出の会場、懐かしいタイトル。普段はなかなかお目にかかれない、レアな選曲が約束されたようなものだ。
SHE'S
「『She’ll be fine』へようこそ、大阪SHE’Sです! よろしく!」
井上竜馬(Vo/Pf/Gt)が高らかに告げ、木村雅人(Dr)のキックがたくましくダンサブルなビートを刻み出す。『She’ll be fine』の1曲目に収録され、以降も長きにわたりライブの重要なポジションを担い続けた「Un-science」からライブは始まった。瑞々しく爽快な手触りは10年経っても変わらないが、漂う風格はさすがに当時の比じゃない。間奏で勢いよく最前へとカットインしながらの服部栞汰(Gt)のソロなんて、ある種の名人芸のような味わいがある。2曲目は、広瀬臣吾(Ba)のベースが担う低音域を前に押し出したアンサンブルに、煌めくようなピアノの音色とメロディライン、勇壮なコーラスを乗せた“Change”。ここまでは10年前のクアトロワンマンと全く同じ流れだ。気づいていたファンも少なくなかったのだろう、驚くほどリニアなレスポンスを返していく。
井上竜馬(Vo/Pf/Gt)
広瀬臣吾(Ba)
再現ライブ的な内容もあり得るか?と思ったところで一気に時計の針を進め、一昨年リリースのアルバム『Memories』収録の「Cloud 9」、その一つ前の『Shepherd』から「Blue Thermal」を投下。打ち込みのビートにパーカッシヴな生ドラムを組み合わせたり、シンセベースを用いたりと、この10年で果たした進化と音楽性の広がりを提示するとともに、時代は流れても清冽な疾走感は彼らのメインウェポンであり続けていることを知らしめる……と感嘆する間もなく、今度は“Back To Kid”が来た。淡々とした8ビートと抑え気味の歌唱から、エモ色の強いサビへと至るカタルシス。『She’ll be fine』よりもっと初期からある曲だが完成度はすこぶる高いし、何よりシンプルに良い曲である。
木村雅人(Dr)
服部栞汰(Gt)
その後もライブは「10年前にもやった曲」「それ以降に生まれた曲」を大体イーブンで混ぜ合わせながら進行していく。振り子のように過去と現在を行き来しながら、あの曲の立ち位置は今で言うとこれなのか、この曲の雰囲気は当時のあの曲にも感じるな、と色々な発見があるのが楽しい。シンセやホーンを取り入れて洒脱に、ちょっと黒いノリも交えた「No Gravity」があったかと思えば、インディーズ1st作に収録されたエモを通り越してパンキッシュですらある「Just Find What You'd Carry Out」が牙を剥き、マッドでクールな「Ugly」へというとんでもない落差で脳内を掻き乱したあと、唐突に繰り出した「ワンシーン」でもフロアは即座に反応。「歌える人、一緒に歌おうぜ!」との呼びかけに応えてどデカいシンガロングが巻き起こると、触発されたようにアンサンブルも一層アグレッシヴに変貌する。
「Un-science」同様にインディーズ期の楽曲内では今でも比較的セットリスト入りの頻度が高い「Night Owl」以降は、みるみるうちにライブの深度が深まっていく。ピアノ弾き語りで始まり、安らぎとメランコリーを併せ持った音世界を示した「幸せ」に続いては、バラードサイドの代表曲である「Letter」を満を持してドロップ。しっとりとした空気に浸りきったところで放った「信じた光」が再びライブを加速させる。シンプルなパワーコードに8ビート。今のSHE’Sではほとんどお目にかかれない青いアレンジが、かえってメロディの輝度と強度を浮き彫りにしている。
SHE'S
木村が口火を切るフリーダムなMCでは、15年間を振り返ってみたら自身のビジュアルがコロコロ変わっていた事実やその理由、唯一バンド内がピリピリしていた時期のことなど、今となれば笑えるエピソードも色々披露。その中で井上は、バンドを始めた時の理由よりも辞めたくない理由が増えたんだと語っていた。それはまさに眼前に広がる幸福感に満ちた光景に他ならない。終始熱のこもったリアクションを送り続けるオーディエンスと一体となり、ライブはラストスパートへ。あの頃ならではの愚直に前を、上を目指そうとする意志を掲げた「遠くまで」で特大のシンガロングを呼びこみ、服部と広瀬は両翼のお立ち台に上がってアグレッシヴにプレイ。「Grow Old With Me」「Dance With Me」のピースフルなポップチューンの連発で沸かせたあと、最後は10年前にはアンコールの締めを担った「Voice」で大団円の本編終了となった。
SHE'S
アンコールでは9月にニューアルバム『Who am I?』をリリースすることとメジャーデビュー記念日・6月8日に新曲「葡萄」をリリースすることが解禁された。そこから10年前に新曲として披露した楽曲「Morning Glow」を演奏。そして「Curtain Call」で終了予定であったところ、ダブルアンコールに応えて「Over You」を追加してライブを終えた。
振り返れば選曲面はやはり特別ではあったものの、周年だからといって過度な演出もなければ、「とにかくついてこい!」みたいなことを言うでもない、つまりいつも通りのSHE’Sであった。井上もMCで言っていたとおり、彼らは会いたくなった時に会いに来れるようにひたすら音楽を生み出し続け、ツアーやライブを止めることなく15年間を進んできた。そんな当たり前を続ける中で導かれた出会いやドラマの一つひとつが、時代ごとの空気を纏う歴戦の楽曲たちに特別な輝きをもたらしたんだ。この日のセットリストに、僕はそんなことを思った。周年イヤーはまだ前半戦。アルバムもあるし、まだ発表されてないこともきっとあるだろう。会いに行きたくなったなら、いつでも足を運んでいい。彼らはそこで待っている。
取材・文=風間大洋 撮影=タマイシンゴ
SHE'S
セットリスト
1. Un-science
2. Change
3. Cloud 9
4. Blue Thermal
5. Back to Kid
6. No Gravity
7. Masquerade
8. Just Find What You'd Carry Out
9. Ugly
10. ワンシーン
11. Night Owl
12. Set a Fire
13. 幸せ
14. Letter
15. 信じた光
16. Getting Mad
17. 遠くまで
18. Grow Old With Me
19. Dance With Me
20. Voice
[Encore]
21. Morning Glow
22. Curtain Call
[ENCORE 2]
23. Over You
ライブ情報
6月14日(日)大阪城音楽堂
開場 16:30 / 開演17:30
料金:全席指定¥5,500(税込)※ドリンク代別途



















