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富澤一誠のライブ・カルテ! 第24回 : 「「なんの思想もなくて、快適に聴ける」のが井上陽水の独特のポップスである!」

第24回

「なんの思想もなくて、快適に聴ける」のが井上陽水の独特のポップスである!

2016/03/24

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井上陽水は去年7月29日にカバー・アルバム第2弾「UNITED COVER2」をリリースして、それを引っ提げて〈井上陽水コンサート2015「UNITED COVER2」〉というツアーを行なった。9月17日・埼玉大宮ソニックシティを皮切りに12月5日・東京国際フォーラム・ホールAまで全21公演は大成功だった。
私もぜひ行きたいと思ったが、年末はレコード大賞の審査委員会などがあったので物理的に不可能だった。それで追加公演に行くことになった。

 追加公演は3月19日(土)、NHKホールで行なわれた。もちろんソールドアウトだった。

 注目すべき1曲目は「ミスコンテスト」だった。バック・バンドの演奏のサウンドと陽水の歌が絶妙のバランスだった。歌がサウンドにこれほど溶けこんでいるのはなかなかあるものではない。のっけからフル回転とはさすが陽水と思っているうちに、2曲目「カナリア」、さらに3曲目「Make-up Shadow」と盛り上がっていく。このあたりは陽水ならではのポップ・センスと言っていい。

 一段落ついたところで、陽水の挨拶、今回は「徳を積む」のがテーマだと言う。一日、何でもいいから善行をして“徳を積む”といいことがあるという、陽水ならではの禅問答にお客さんは大喜び。

 そして次は、これにはびっくりした。デビュー・アルバム「断絶」から、なんと「断絶」を昔のように生ギターの弾き語りで歌ったのだ。しかも、オリジナルに近い形でボーカルにメリハリをつけて、これぞ“フォークの神様”という雰囲気で、時は一気に40年以上も前の1972年あたりにフラッシュバックした。と同時に44年という時間差を意識せざるをえなくなり、“あの頃”と“今”を瞬時にして思い出し比較した人は多かったと思う。

 歌はこのように一瞬にして時空を超えてしまう力がある。陽水の歌う「断絶」1曲によって時空を超えて自由に行き来できるのだからこんなに幸せなことはない。もうこのあたりから陽水ワールドに引き込まれてしまった、と言ってもいい。

 「断絶」の後はどんな展開になるのか予想もできないでいると、話題はカバー・アルバム「UNITED COVER2」の話になり、その中から両極端な2曲が選ばれた。1曲はユーミンの「リフレインが叫んでる」、もう1曲は吉田拓郎の「リンゴ」。陽水がユーミンの曲を歌うとどうなるのか? 共にポップ・センスをベースに持っているだけにしっくりとくるポップスに仕上がっていた。

一方「リンゴ」の方は、盟友でありライバルでもあり、音楽的には水と油の両者だが、陽水が拓郎の曲を歌うと、上手い具合に化学反応が起きるのか、まったく新しいJポップが生まれたようだ。このあたりが陽水のすごいところか? そんな想いを持って、改めて「UNITED COVER2」を聴いてみると、このアルバム、単なるカバー・アルバムを超えて陽水のオリジナル・アルバムになっているようだ。

 15分の休憩の後、第2部がスタート。出だしは「ジェラシー」だった。叙情派フォークの旗手・陽水が、新しい“ポップス”を創造しての初めてのヒット曲だった。この後は「とまどうペリカン」「バレリーナ」などときて、このあたりは陽水のポップス・ワールドの真骨頂だった。

 そして終盤は「最後のニュース」から「氷の世界」などへとつないで、見事な着地。

 アンコールはパフィーに書いた「渚にまつわるエトセトラ」、さらに「夢の中へ」「夏の終りのハーモニー」で幕。
 見終わっての感想は、生ギターの弾き語りから、カバーを交えて、ポップスまでバラエティーに富んでいて、聴きごたえがあり、なおかつ楽しかった。まさしく、これぞ大人が楽しめる“良質な音楽”〈Age Free Music〉だった。

 コンサートが終わって帰る道すがら、私は30年程前にインタビューしたときに、陽水がぽつりともらした言葉を思い出していた。

 「デビュー曲があって、結果的に『氷の世界』(140万枚を売りつくした日本で初めてのミリオンセラー・アルバム)があったわけじゃないか。あのとき俺は確かに青春を歌っていた。でも、あれは自分なりにもうやってしまったという気がしている。だから、デビューのときがそうだったように、今度は別の角度でまた始めようと思ったわけさ。今の俺には昔の歌のように青春のたわごとが少しでもあるのは臭くて嫌なわけよ。歌の中に、人生とは、青春とは……なんてあるだけでシロくなる。なんの思想もなくて、快適に聴けるのがいいね」

 それからしばらく経って、陽水は1984年暮れから85年初頭にかけて「いっそセレナーデ」という曲を久しぶりにヒットさせて再浮上した。

 それからさらに30年程が経って今、陽水は〈フォークの帝王〉から脱皮して、より大きなエンタテインメントを表現できるアーティストに成長したようだ。

(文/富澤一誠)

【関連リンク】

  • 井上陽水 『コンサート2016「UNITED COVER 2」』@ NHKホール (東京都) 2016/03/19 (土)

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プロフィール

COLUMNIST
富澤一誠
富澤一誠

わかりやすいキャッチコピーを駆使して音楽を語る音楽評論家。
1951年、長野県須坂市生まれ。東京大学中退。71年、音楽雑誌への投稿を機に音楽評論活動を始め、以降、44年間に及ぶ評論・執筆活動において、一貫して追い求めているテーマは<音楽を熱く語る>こと。
音楽に対する理念は「いい曲は売れてあたりまえ」「いい曲、いいアーティストにチャンスを与えたい」。現在、レコード大賞常任実行委員、尚美ミュージックカレッジ専門学校客員教授も務めている。
著書に、ベストセラーになった「俺の井上陽水」「松山千春・さすらいの青春」「さだまさし・終りなき夢」を始めとして「あの素晴しい曲をもう一度」(新潮新書)「フォーク名曲事典300曲」「J-POP名曲事典300曲」「Age Free Music・大人の音楽」(共にヤマハミュージックメディア)「『大人の歌謡曲』公式ガイドブック」(言視舎)「ユーミン・陽水からみゆきまで」(廣済堂新書)など全62冊。現在<Age Free Music!>(FM NACK5)、<Age Free Music~大人の音楽>(TOKYO FM系列JFN36局ネット)、<昭和ちゃんねる・富澤一誠の青春のバイブル>(USEN I-51)、<あの年この歌>(BSジャパン)などのパーソナリティーとしても活躍中。レコード会社15社合同キャンペーン<Age Free Music~大人の音楽>総合プロデューサーとして、良質な<大人の音楽>を推奨している。

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