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LIVE MASTERS

黒木 渚

2017.11 GUEST黒木 渚

テーマ黒木渚の転機となったLIVE

菅野:菅野結以が@FMからお送りしています『LiveFans』11月のマンスリーゲストは、この方です!

黒木:黒木渚です。よろしくお願いします。

菅野:よろしくお願いします。もちろん歌っている方なんですけど、黒木さんは。それだけじゃなく、小説家の顔もあると…。

黒木:そうなんです。

菅野:今年の4月に初の単行本『本性』と、文庫本『壁の鹿』を発売されたということで…前からCDに付いていたりはしたけど、ついに単行本としても出したりして、本格的に小説家として歩き始めている感じがあるんですけど、小説書くのと曲作るのって全然脳みそ違いますか?使うところ…。

黒木:そうですね。違うところも結構あります。元々感じてたのは、小説は足し算だし、歌詞作りは引き算だなと思っていて。

菅野:へぇー。

黒木:努力の方向性も違うし、小説を書くときは根気が要るけど、曲書くときは集中力みたいな、ベクトルの違いみたいなのってすごい感じてたんですよ。単行本『本性』を書いて要るときは、喉の調子が良くなくて、苛立ちというかフラストレーションみたいなものがすごくあって、それを推進力にしていたせいか、そこで気付いたのは、曲作ってるときって美味しいご飯を誰かにごちそうしてあげたいって思ってるみたいな気持ちなんですよ。美味しいものを作って「誰かを幸せにできますように」みたいな気持ちで曲書いてるのに、小説書いてるときは、「この臭い靴下を嗅がせてやろう」みたいな気持ちなんですよ(笑)。嫌がる顔を何度も何度も見たいみたいな、お父さんの心境というか…(笑)。

菅野:例えが分かりやすい、すごく(笑)。

黒木:それに気付いちゃうと楽しくなってくるんですよね。

菅野:へぇー。そう聞くと意外と音楽を作っているときよりも、小説のほうがより自分のドロっとした部分が出るというか、そういうことだったりするんですか?

黒木:そうですね。発散具合で言ったらめちゃめちゃ発散できるかなと思うんですけどね。あと、取り繕わないほうが面白いものが書けたりするんで、カッコイイ自分を小説に書いてても意味ないし、意味ないというか面白くないんですよね、そういうのって。というよりも、今まで私が育ててきた本当は人様に見せたくないんですけどねっていう部分を克明に書いたほうがやっぱり面白いような気がするんですよね。曲の場合はリリースした後も一生その曲を歌いながら生きていくじゃないですか。で、自分自身がその歌を歌うってなるとやっぱりカッコイイやつを作りたいなってなるんですけど、小説だとその場で吐き出しちゃうっていう感じなんで…。

菅野:たしかに朗読することもないですよね。あとは各自でどうぞみたいな感じですもんね。

黒木:そうそう。お食べくださいみたいな(笑)。

菅野:面白い。そういう違いがあるんだ。たしかに音楽のときからやっぱり黒木さんは<言葉の人>だなっていう感じはすごくして、人が使わない言葉を見つけてきたりとか、発明みたいな言葉の組み合わせとかをされる人で、小説のときもそれに加えてすごいユーモアがあるというか、そんな感じがしたのはその部分なのかな。カッコつけない。

黒木:そうですね。ほんと「臭い靴下嗅がせてやろう」って(笑)。

菅野:(笑)。どういう気持ちなの?そんなに思うことあるかな、それ(笑)。

黒木:いや、そういうことをしてこなかったんですよね。そもそも私生活で。私、わりと優等生タイプで若い頃は生きてきて、なかなか人に向けてちょっとしたいじわるをしたりとかいう機会もなかったんで。堂々とこうやってできることがちょっと嬉しいというか(笑)。

菅野:今までの溜まってきた私のきたない部分を見てよ、みたいなとこもある?

黒木:そう、どうよ?みたいな(笑)。

菅野:日頃からこまめに書くタイプなんですか?それとも集中してガッツリ執筆モードに入る?

黒木:どちらかというとそっちかもしれないです…集中型。締め切りをきちんと守るタイプなんですよね。締め切りがないと逆にうまくいかないことが多いので、担当さんにはとにかく締め切りをバチッと決めてもらって、自分の決めた段取りというか、プロットを書いてから小説を書き始めるんですけど、プロットどおりに進行させたいみたいなのはありますね。

菅野:すごいきっちりしてますねぇ。そこは真面目がやっぱり出てる。

黒木:そうそう、体に染み付いた(笑)。

菅野:すごいなぁ。黒木さんの小説『壁の鹿』を読んだうちのプロデューサーがですね、これを読んだ後長い間トラウマになったとかで…。すごいっ、読めっ!て言われて私は渡されたんですけど、たしかにって思いましたね。

黒木:ということは私の靴下作戦は大成功だったっていうことですよね?

菅野:たしかに!靴下嗅がされてトラウマになったってことですね(笑)。壁の鹿が喋るっていう話…。

黒木:私、命のないものが喋ったり、発想したりみたいなのがすごい好きなテーマなんですよね。あと10回くらい書きたいですね、そういうテーマで。

菅野:へぇー。たしかに命なきものに命を吹き込んでいくようなものですもんね、音楽を作るっていうのも。小説を書いたことでファン層とか変わったりしました?

黒木:本屋さんに並ぶと音楽家としての私を知らずに、たとえばジャケ買いとかで本を買ってる好きな人とかは増えましたね。なので結構頭良さそうだな、みたいなお手紙をもらったりとか、あと、ちょうどこの本のサイン会をやったときに療養中で声を出せなかったんですよ。それで、サンプラーに自分の声を16種類くらい入れていって、会いにきてくれた人にサンプラーで「ありがとう」とか「ひさしぶり」とかやってたんですよね(笑)。

菅野:(笑)。新しい!

黒木:どうしても無言では難しかったんでサンプラーあるじゃん!と思って。だから握手会で私のサイドのスピーカーから私の声が出てるっていう状態だったんですよ。でも本から入ってきた人ってそういう状況を知らなかったりとか、あと、すごいおじいさんとかが並んでくれたりしてて、おじいさんと初対面でサンプラーで会話してて、私の口は動いてないのにどこかから声が聞こえるっていうのでひどく慌てているおじいさんとかいて。

菅野:動揺しますね、それは(笑)。

黒木:新たなファン層というか、驚かせてしまいました(笑)。

菅野:何の世界に迷いこんだんろうって思いますよね。

黒木:めちゃくちゃキョロキョロしてましたからね(笑)。

菅野:面白い。やっぱり音楽の人だからサンプラーっていう発想になるんですね。なかなか声出ないからサンプラー使おうって思わない。

黒木:助かりました(笑)。

菅野:小説も書いている黒木さんですけど、本職はやっぱり音楽ということで、毎週違った角度からLIVEをテーマにお話していますが、今週のテーマは「黒木渚の転機となったLIVE」。転機となったLIVE、ありますか?

黒木:これはもうつい最近の9月24日、渋谷で行った復活ワンマンLIVE「音楽の乱」。

菅野:本当に最近の…。私たちは、うち(番組)のチームが公開収録を遠くでやっていて、残念ながら行けなかったんですけど、ステージに立つ前はどんな思いだったんですか?

黒木:1年以上ぶりに人前で歌うというか、ワンマンをやるってなったときに、ずっと願っていたことなのに、1年間絶対戻ってきたいと思っていた場所なのに、直前になると足がすくむ感覚というか、怖かったんですよね。あと、本当に待ってるのかな?っていう、ファンのみんなは…ていう気持ちがあって。開演するまでは怖かったんですけれども、幕がバッて開いて、もう満員のお客さんが待っていて、私より先にめちゃくちゃ泣いてるじゃんみたいな(笑)。

菅野:もう開いた瞬間泣いてるんだ!

黒木:そう、泣いてて…。そういうのとか見ちゃうと本当にこの人たちの感性は信用できるというか、この人たちと年をとっていこうとそのときにすごく思って。休んでいる間、結構頻繁にサポートメンバーのみんなとも会ったりしてて、みんなは復活を急かしたりとか、音楽の話をやたら持ち出して熱く語るみたいなことはなくって、ただの友達として遊びにさそってくれたり、バーベキューやったりとかしていて、それがすごく良かったな思って。周りからステージ降りるなってその時期に急かされると余計焦ってたと思うんですよ。自分が一番望んでいることだったし。それなしで支えてもらったというか…で、そのメンバーと共にステージに立って復活できたっていうときに、LIVE中に何度も振り返って見ちゃって、メンバーのことを。メンバーも緊張してたんでしょうね。でもさすがステージマンだなというか、ギンギンに宇宙みたいな目をして、渚が本番でどんなことをやってきても全部打ち返してやるみたいな顔をしてて、素晴らしかったなと思ってます。

菅野:へぇー。めちゃめちゃいい空間だったんですね。このLIVEのなかで特に印象的だった出来事とかあります?

黒木:そうですね、いっぱい印象的な場面が…第一声の歓声もすごい良かったですし、とにかくすごい声が大きくて、ファンのみんなの。私、イヤモニを入れて歌っていて、イヤモニからカウントが聞こえるときがあるんですよ。入りをミスらないように。次から歌い出しですみたいな私の耳のなかだけに返ってくるはずだったのに、お客さんの歓声が大きすぎてカウントが聞こえなくなっちゃって(笑)。その瞬間はちょっと焦りましたけど、でも、そんなもんどうでもいい!LIVEしようぜ!って言われた気がして。どうでもいいや、間違ったってって思いましたね。その時は。

菅野:すごい!イヤモニを凌駕する歓声…。すごいなぁ。そんなきれいにやんなくていいからかかってこいや!みたいなお客さんの感じだったんですね。

黒木:そうですね。

菅野:素晴らしい。じゃあその復活ワンマンLIVE「音楽の乱」のセットリストの中から1曲お届けしたいと思いますが、どの曲にしますか?

黒木:運命に復讐するつもりで書いた1曲があって、“火の鳥”という曲なので、その曲にします。

菅野:曲紹介をお願いします。

黒木:はい。聞いてください。黒木渚で“火の鳥”。

黒木渚の転機となったLIVE

ONEMAN LIVE「音楽の乱」

ONEMAN LIVE「音楽の乱」

2017/09/24 (日) 17:00 開演 @ TSUTAYA O-EAST (東京都)
[出演者]黒木渚

詳細をみる

Setlist

  1. 1.金魚姫
  2. 2.テーマ
  3. 3.アーモンド
  4. 4.大予言
  5. 5.解放区への旅
  6. 6.うすはりの少女
  1. 7.クマリ
  2. 8.おんな・おとこ・おんな
  3. 9.ふざけんな世界、ふざけろよ
  4. 10.革命
  5. 11.フラフープ
  6. 12.火の鳥

Encore 1

ARTIST INFORMATION

黒木 渚

独特の文学的歌詞で、女性の強さや心理を生々しく歌い上げる、孤高のミュージシャン。
2012年12月に1st Single「あたしの心臓あげる」でデビュー。

2015年10月にリリースした2nd Full Album「自由律」がオリコンチャート初登場10位にランクイン。翌月には初の連作小説「壁の鹿」で小説家として文壇デビューも果たす。

同月から6大都市で開催された「ONEMAN TOUR『自由律』2015」はSOLD OUTが続出。
演劇的、文学的、音楽的、そして1人の女の生き方を見せるドキュメンタリー、様々な要素をミクスチャーしたライブスタイルで多くの人を魅了した。

2016年4月、5th Single「ふざけんな世界、ふざけろよ」をリリース。
同年7月には、配信シングル「灯台」をリリース。
iTunesのトップソングで過去最高の4位にチャートインした。

2016年8月、咽頭ジストニアにより喉の治療のため音楽活動を休止。

2017年4月、講談社より初の小説単行本「本性」を発売。
同年9月に復帰シングル「解放区への旅」をリリースし、現在は4大都市ワンマンツアー「音楽の乱」を開催中。

さらに2018年2月24日には昭和女子大学 人見記念講堂にてワンマンライブ「〜幻想童話〜砂の城」の開催が決定している。

RELEASE

CD解放区への旅 初回限定盤B Limited Edition, Maxi

解放区への旅 初回限定盤B Limited Edition, Maxi

2017.09.20 Release
Lastrum

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ABOUTLiveFans Radio

近年、ライブ動員数は増加傾向にあり2016年は過去最高の4,768万人を記録。ライブやフェスといったリアルの場での音楽体験を求めるユーザーが増えています。本番組では、そんなライブに徹底的にこだわり、あらゆる角度からライブの魅力を紹介していきます。